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ボロボロの平家を買ったら最高だった話

初めまして、株式会社青春代表取締役の田村ヒロシと申します。

公私ともにパートナーのビア子さん(仮名)、2匹の猫である馬超とムー大陸と、奈良で暮らしています。記念すべき最初の記事は、わたしたちが住む家の話。

家プロジェクトをはじめたのは2019年。
コロナ禍に突入し、店内飲食型の事業が主力だった私たちにとって、
精神的にもちょっとしんどい時期でした。
そんな中で進めた家づくりは、一筋の希望であり安らぎでした。

800万円で平家を買う

当時のわたしは単身赴任中、ある日ビア子さんからLINEが届いた。
ボロ家の画像が添付されていた。

ビア子「やばい。買う。」
ひろし「めっちゃいいと思う、買いますか」

その後いくつかのLINEのやりとりで、ほぼ購入の意思が決定。

不動産屋の物件情報には「古家つき」とあり、家は取り壊す前提で土地として販売されていた物件だった。このLINEから数日後には、ビア子さんと父トミオの迷コンビが購入の申し込みを入れる。
わたしが物件の実物を見たのはその後でした。(笑)

当時の写真をご覧ください。外観は今(after)と大差ありませんが、なかなかの廃墟感です。約二十年間空き家だったそう。下の画像にもあるように、残置物が大量にある状態で販売されていました。

家を買うのって入念に準備するものと思ってたけど、
実にあっさりと購入を決めた。
わたしたちには確信があった。

この土地には、私たちが大切にしている「風景」と「物語」があったから。
どれも素朴で美しく、そして身の丈にあっていた。

・葛城山〜生駒山まで見渡せる「the奈良」な眺望
・家の前を走るローカル電車は夜になるとほぼ銀河鉄道
・前面の農道はのどかな犬の散歩コース、夜から貸切状態
・周囲に家はなく畑と田んぼ、カエルの合唱つき
・ヤギが飼えそうな広い庭
・近所に小さな神社がある
・駅やスーパー(コンビニ)病院など生活に必要なものが徒歩圏内

ただ、これらはあくまでもわたしたちの主観と想像力で捉えてる世界なので、興味がない人から見ると、
ほぼ廃墟の朽ちた家(なんか幽霊でそう)、電車とカエルの音はまじ騒音、夜は真っ暗だしぽつんと一軒家は怖いし不安。あと虫が多そう、、、
といった感じでしょうか(笑)

そうして、ボロボロの平家を800万円で購入。
この金額はほぼ、200坪弱の土地の値段です。市街化調整区域(後述します)だし、周辺の相場からするとやや高いと思う。地価や一般評価額ではなく、私たちはこの土地の「じぶん評価額」を1000万-1200万と算出した(笑)他の人に買われたくなかったので過剰な価格交渉はしなかった。

解体処分費用、フルリノベーション費用総額700万円あわせて、
合計1500万円。お金が借りにくい零細企業の経営者である私には、これが精一杯の借入額だったと思う。

【家の前と隣は一面菊畑、家の裏はいちご農園】

この物件の3大デメリットとリスク

この物件には一般的なデメリットが大きく3つある。

①とにかくボロい+大量の残置物
②耐震性能や断熱性能はほぼなし
③市街化調整区域(原則再建築不可とリセールバリュー問題)

①については何の問題もなかった。仕事柄、ポテンシャルのある物件とどうにもならない物件の見分けはつくようになっていた。「建て直しせず、この家に住みます」と不動産屋さんに伝えた時、担当者の方は心配していたし、ローン担当の銀行員さんは会話の中で、「田村さん、あのボロ家の件ですけど」と失言したのを忘れない(笑)

②の断熱は最初から諦めた。気持ち程度の断熱は入れましたが、そもそも家やサッシが隙間だらけなのでほとんど効果なし。でも、真夏でも何とかクーラーはきくし、寒い日は石油ファンヒーターを追加稼働すれば過ごせる。

耐震についてのリスクは承知している。地震などの災害に備えたり、先の不安に対しての安心を最優先にする場合、最新の耐震性能を備えた断熱性能の高い住宅が絶対いいと思う。
わたしたちにとってはベストだった。予算がないくせに素敵な家に住みたい、というわがままを叶えるにはこの選択肢しかなかったとも言えますが。

問題は③。市街化調整区域とは市街化を抑制する地域のことで、原則として家を建てられない。ここに家が建っているのは、ルール適用前の1970年に建築された建物だから。そのため救済措置があり、この物件は1回限定で再建築が可能だった。「じゃあ、何の問題もないやん!」とあっさり解決。

あとはリセールバリューの問題。将来的なリセールを考えると調整区域は手が出しづらいが、リセールなどどうでもいい私たちにとっては一切関係なかった。

阻むものは何もなくなった。
多少の不便はウェルカム。
とにかくここに住みたい!!

解体&残置物ショー

ということで、あれよあれよの間に契約が完了。

リノベーションや解体は専門の業者にお願いしたけど、コスト削減のため残置物※は自分たちでゴミ処理場に捨てに行く。

15往復以上はしたように思う。大量のゴミ、大型家具、畳やカーペット、洋服、本、思い出グッズの数々、動物の死骸や農業用品、、、あとは昭和のミニカー、大量のキン消し、王貞治の記念メダル、一眼レフカメラ、毛皮のコート、戦時中の出征旗やアルバムまで(これはさすがに処分できなかった)、途中からお宝探しの雰囲気に。

本棚の引き出しからロレックスを発見した時は盛り上がった。
質屋に持って行ったら3秒で「偽物です」と言われたときは大爆笑した。

※売主が残置物の所有権を放棄したので買主に所有権が移った

ということでいざ解体!アンド残置物ショー!

【大量のキン消しが出土】

いよいよリノベーションスタート

解体と残置物処理が終わり、家はスケルトンに。
天井の軽量鉄骨が姿を現した。天井を剥ぐまで見えなかったけど、イメージ通りの鉄骨デザインで「いける」と確信した。

間取りや内装の設計担当はビア子さん。

施工は、基本設計と意匠のパートを分け2社の工務店にお願いした。
(作り付け本棚や洗面所など重要な箇所は意匠が得意な工務店さんに依頼)トイレやユニットバスの選定、タイルや壁の素材や床材、照明器具、スイッチやコンセント、キッチンなど、すべて自分たちで手配し現物支給した。

頻繁に現場に行き、電気の配線のしまい方や、幅木の素材の指定など図面に現れない細かい部分も指定した。

【天井と床をすべて剥がしたスケルトン状態】
【入念に計画を練る】

キッチンは、わたしの謎のこだわりで業務用のオーブンつきの3口ガステーブルを導入しました。素材選定をする上で大活躍したのが、みなさんご存知、R不動産が手掛けるtoolboxというサービス。
内装建材やパーツ、住宅設備をオンラインで販売されてます。
セレクト(編集)がしっかりされているので、信頼して使っていました。
個人的な反省は、toolboxに頼りすぎたことくらい(笑)
一般の人も購入できますのでぜひサイトをご覧ください。

完成!!

建築を進める過程では、大工さんとのやりとりに苦戦したりと、本当にいろいろとありましたが無事に完成。

屋根の総張り替え、床の施工、キッチンや洗面台、お風呂トイレなど、ほぼ全てやり直しました。予算が足りなかったので、窓やドアなどの建具、外壁素材は以前のままボロボロです(笑)
写真左の壁面と建具は色を塗っただけ。

【ベッドルームの壁はポリカの波板を採用】

テラスの追加工事と庭づくり

家が完成してから約1年後、庭スペースにテラスをつくる2期工事に着手。

テラスを作ったことで、ボロボロの外観がすこしだけ目立たなくなりました。セカンドリビングとして、お肉焼いたりお酒を楽しんだり、植物の世話をしたりと試行錯誤しながら使っています。

テラス施工後は、庭を作ってもらいました。(植物は自分たちで選びました)
オーストラリア系のドライ植物を多く入れたので、ちょっとカリフォルニア風になっちゃいました。でもお気に入りの庭です。


運命的な出会いをしたら迷わず買う

これから、中古物件や土地を探す方にひとつだけアドバイス。

「運命の物件に出会ったら迷わず買いましょう」

ネガティブ要素を探せばいくらでもある。唯一無二の最高ポイントがあるならできるだけ早く決断すること。いい物件は悩んでいる間に、あっという間に決まるもの。じっくり考えてからじゃ遅い遅い。うだうだ価格交渉してる間に他の人が決めちゃう…物件探しあるあるです。

意思決定のスピードと精度を、普段から磨いておきましょう。

あれから4年が経ち

2024年現在の田村家。

当時1匹だった猫(馬超)はもう1匹増えて(ムー)が加わり、毎日トムとジェリーみたいなどたばたげきが繰り広げられています。夏前はムカデとの戦い、相変わらず冬は寒いがそろそろ薪ストーブを導入を検討中。庭の手入れが行き届かず雑草がボーボー生え、ついにグランドカバーのイワダレソウが雑草に支配されそう。

でもそんなの関係ない。

春は風が心地良く、テラスでご飯が食べられるし、一坪農園をはじめて自家製ハーブや野菜で料理を作ることができるように。
地元の花火大会が特等席で見れて、2年前から蛍ポイントを見つけた。
冬は焚き火をして、空が大きくて月がよく見える。

大好きなビンテージ家具を一つずつ買い揃えるのも楽しみの一つ。

【まだ体が白かった時代のムー】
【一番庭の状態が良かった時の庭写真(笑)】
【ハーブや大葉など薬味は庭に採りに行く】
【一坪農園の師匠は前の畑のKさん】

青春の社員さんとの食事会や、写真教室の生徒さんを招いてイベントを開催したり。時には撮影スタジオ、会社の事務所、と自宅だけどフレキシブルに。

私たちにとって「家は一生住むもの」という感覚はなくて、
せいぜい10年先までしか想像できなかった。その先はわからない。

その時々の気持ちやライフステージが変わったとしても柔軟に使い方を変えればいい。だからこそ、無理のない価格であることが重要だった。
変化し続けることが好きな自分にあっていたと思います。
本当にこの場所を選んでよかった。

【平家フェス】

ボロ家を万人に勧めているわけではありませんし、
ましてや再建築不可物件を積極的にすすめているわけでもありません。

ネガ要素を一旦机に並べ、解決&許容ができないか?検討してみると、
案外なんとかなるかもしれないよ、と1つの考え方を示してみました。

いいとこを見つけ、尖らせるデザインを考える。
そんな風におもしろおかしく、家を捉える人がもっと増えるといいなと
個人的には思ってます。そういう選択肢もあっていい。

「暮らし」や「生き方」を大切に、今を生きる人のための不動産会社があったらいいよね、と長年ビア子さんと話していました。
まだ奈良にそれがないから作っちゃおう、と2022年に不動産会社「トキワ舎」を設立しました。

実際はまだ稼働してないので、何のご案内もできないのですが、
タイミングを見てゆるーーーく楽しい不動産屋さんをやれたらいいなと夢を描いてます。いつかリリースできた暁にはお知らせさせてください。

とっても長い記事になってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました。

私の好きが詰まったもの、仕事や経営に関することなど思いつくまま書いていきますので、noteでもどうぞよろしくお願いいたします。






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