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事例によるわかりやすさってすごいスピードで変化しているのかも!?『世界一わかりやすいマーケティングの本』を読んで

たまたま縁があって、2月末くらいまでに「マーケティングの入門書」を読む必要が出てきた。せっかくだから、メモ程度に感想を書き溜めておこうと思う。今回は1冊目。

大学では、一応マーケティングの授業を受けたことはあり、社会人になってからもマーケティングの現場で仕事をしてきた。だから「マーケティングの入門書」というと新人の頃は先輩にお薦めの本を聞き、今は後輩に聞かれることも多くなった。だけど今回はそんな自分の中で定番の本ではなく、新しい本を見つけるため、安直にもAmazonで"マーケティング 入門"と検索してみた。そうしたら一番最初に出てきた本が今回の「世界一わかりやすいマーケティングの本」である。タイトルからして「マーケティングの入門書」にはピッタリだと思ったので、この本から読んでみることにした。kindleunlimitedに契約していたため、選びやすかったということもある。

読んだ本

タイトル:世界一わかりやすいマーケティングの本
著者:山下貴史
読書時間:150分

感想

全体的に「マーケティングに興味を持たせる」というよりは、「マーケティングとは何たるかを理解してもらう」という目的で作られた本であるように感じた。いい意味で読書にすり寄るのではなく、この内容で学ぶべきという考えに基づいて書かれている。それぞれのテーマについて短く簡潔に書かれているので読みやすい。
目次は下記である。

第1章 マーケティングの基本を知っておこう
第2章 人はなぜ、モノ・サービスをほしがるのか
第3章 モノを売り、サービスを提供するための環境作り
第4章 販売のための技術向上テクニック

例えば、教科書のような学術的なマーケティングの入り口として位置付けられた本では、「マーケティングの概念」「歴史・戦略」「環境分析(PESTとか)」「STP」「4P」…のようにある程度順番が決まっている感じがするが、この本の目次はそういった順番を無視して、著者の考えで初心者にわかる安いような順番で書かれているように感じた。紹介されているマーケティング理論も多くない。しかし、一応マーケティング業界の端くれで働いている私からしても、確かに現場でよく使われる概念を1-3章では選んで記載されているように感じた。
また、本書の冒頭でも言及されているが例を挙げる場合には極力「自動車業界」を例に書かれているために一貫性が合って分かりやすくなっている。
4章はなかなかお目にかかれないような内容で、営業トークやコピー、クリエイティブを作る際に使えそうなテクニックがとても具体的に書いてある。わかりやすいマーケティングの本として、知識をつけてもらうだけではなく、「こんなことをするのがマーケティングだよ」「こういう風に考えるんだよ」と実践を念頭に本が作られているのがわかる。

個人的に気になった点

あれ?ニーズとかウォンツってなんだっけ?
大学でマーケティングを学んだ時にはどちらも出てきた言葉のような気がすするが、働くようになってからは「ニーズ」ばかりで「ウォンツ」という言葉を使う機会は少ない気がする。英単語から想像すると、「ニーズ=必要としていること」「ウォンツ=ほしいと思っていること」ってなるが…ん?この違いってどういうことだっけ?

ニーズというのは、消費者が「必要性を感じ、求めているもの」を指すのです。

ふむふむ。この本では、交通の便が悪い地域に住んでいる人は、通勤やちょっとした買い物も車がないと不便なので、車を持ちたいというニーズがあり、都心部に住んでいる人には同じような交通手段としてのニーズはない。ただ、モテたいとか気持ちを高めたいというニーズはあると説明がある。ここまではわかる。
つぎにウォンツだが、ハイブリットカーを例にして「環境に配慮した車」というニーズ(潜在的なニーズ)をもって説明している。

このような潜在的なニーズのことを「ウォンツ」と呼びます。
必要性を感じているのではなく、欲求を持っている状態です。その欲求を実現してくれるものがなんであるのかまだわからない、そんな状態のことなのです。

んーなんとなく違和感を感じる。順番が逆って教わった気がするのだが。
気になったので、ネットで調べてみると・・・

ニーズ:消費者が持つ課題の解決や目的を達成する必要性
ウォンツ:課題や目的を解決するための具体的な手段に対する欲求

ビジネスの教科書「ニーズとウォンツの違いとは?具体例をわかりやすく図解で説明」より

なんとなく、教わったのはこっちな気がする。ウォンツはこの記事にあるように「具体的な手段に対する欲求」と思っていた。この辺りはもうちょっと勉強しなくてはいけないようだ。マーケティングの大家の考えも理解しつつ、自分なりにも考えていった方がいいのかもしれない。

事例によるわかりやすさってすごいスピードで変化しているのかも!?
この本が発売されたのは2006年6月。14年前だ。当たり前だけど、14年前と今では世の中の状況が変化していて、この本で取り上げられている事例も今の世の中からみると違和感がある。
例えば「イノベーター理論」を説明する章では

最近、駅のホームや電車内で携帯電話の画面をのぞき込み、一生懸命ボタンを押している人をよく見かける。インターネットで情報を集めたり、メールのやり取りをしている人たちだ。
ほんの数年前まではあまり見られなかった光景だが、あっという間に広がった。

という記載がある。iPhoneの日本最初の発売が2008年らしいので、この例はどうやらスマホではなく、ガラケーを指しているようだ。今じゃ、携帯電話でインターネットやメールをする人が「イノベーター」だなんて、さすがに無理がある。この14年で一気に利用が広がったことがよくわかる。現在30歳の私は、14年前のことも覚えているし、自らもガラケーを使っていた。だから、「当時革新的なことだった」として思い出してこの本も読み続けられるが、例えば今の大学1年生(19歳)がこの本を読んだら、ついていけなくなってしまうかもしれない。マーケティングの書籍、特に「マーケティングの入門書」において、事例の載せ方の難しさを感じる部分だ。長く読み続けられるためには、長生きする事例を使いたいところだが、そんなこと予想できるのだろうか。
また、広告・宣伝の基本「メッセージ」のところでは、

「お菓子のホームラン王」「いつかはクラウン」「恋は、遠い日の花火ではない」等々、誰もが知っているテレビCFのフレーズがあります。

という記載がある。やばい…知らない。
「いつかはクラウン」はギリギリ知っている!それこそマーケティングの授業で勉強した記憶がある。
「お菓子のホームラン王」は、ホームランバー?
「恋は、遠い日の花火ではない」は、アニメの『打ち上げ花火下から見るか横から見るか』のサブタイトルかなんかかな?

全然違った…。
ってか俳優・女優さんが皆、若いっ!!映像の記憶は、全くない!多分初めて見た。14年前は「誰もが知っている」ものが、今ではマーケティングに関わっている人でも知らないという事実だ。(私が勉強不足ということもあるかもしれないけど…)

小説とか映画であれば、時代背景もくみ取って「このころはスマホがなかったから」とか「こんなファッションが流行っていたから」と自分の中で変換してみることができるけど、マーケティングの本だとなかなかそうはいかなそう。「マーケティングの入門書」では、事例がなくちゃ理解が進ないけど、長持ちするものを判断するのは相当難しいなー。

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