最近の記事
マガジン
記事
- 再生
もう一段新しい音楽への招待 ――芳川よしの「Yumematsu Glider feat. Yuzusa」(2014)
芳川よしのの音楽を最初に聴いたのは2010年の秋で、ネットレーベルのMaltine recorsが最初に出したコンピCD(だったと思う)に収録されていた「Night Stars Dance」だった。この曲を大学のある講義(ひたすら実験的な電子音楽を流して解説するという授業だった)で聴き、そもそもマルチネの存在をここでようやく知って今に至るわけだが、芳川よしのはこの3年半もの間に新しい試みを常に試みている。そして彼がUltrapopと名付けて送り出した楽曲の一つがこの曲だ。Ultrapopとはそもそも何なのかはとりあえず脇に置くとして、少なくとも「Night Stars Dance」やその後にマルチネから発表したいくつかの曲のように、クラブでガンガン流れているような曲ではなさそうだということがこの曲を聴いて感じたことの一つだ。芳川よしのはこういう曲を作る人だったっけと思ったが、逆にいまの芳川よしのはこういう曲を作れるようになったのだと肯定的に解すほうがきっといい。もう一段、音楽の幅を広げたのは確かだ。しっとりとかわいらしく、だが力強くもあるYuzusaの歌声は語りかけるように歌う。透明な声は、だが儚くはない。
- 再生
透き通る美声と、ピアノのものかなしさ ――Akira Kosemura「虹の彼方 feat. lasah」(2013)
2013年11月にシングルとしてリリースした楽曲のMV。 http://schole.shop-pro.jp/?pid=65328231 lasahというニコニコ出身の歌い手のことは知っていて、なんとなく聴いてみようかと思い聴いてみたらドカンとやられた感じの一曲。ニコニコの歌い手らしいかわいらしさとかうまく似せようとした声ではなく、はじめからわたしの声はこうであると個性を明確にしているところがそのクオリティの高さと相まって一線を画している。そのゆえんについては、この動画を見たあとでlashaのbiographyを調べて納得した。 曲を作ったAkira KosemuraはSCHOLEというレーベルを主宰するピアニストであり、作曲家、演奏家とでも言えばいいのかな。85年生まれとまだ若いがゼロ年代後半から方々で活躍しているらしい。あとで気づいたがやなぎなぎのファーストアルバムに入っている「トランスルーセント」の作曲は彼だったようだ。彼のインストの曲をようつべでいくつか聴いてみたが、歌ものは歌ものとしてきちんと整えて作ってきているところがらしさだろうと思う。歌がない場合の自由度とは違う音楽の自由を教えてくれるような、そんな感じ。鳴っている音は多彩で、lasahの高くささやくような声を後ろからしっかりと支えているのが心強い。間奏で鳴り響くピアノがものかなしさは、「虹の彼方」が彩る世界のはかなさの象徴でもあるのだろう。 終止幻想的に進行していくMVはどこかにあるかもしれない「彼方」まで本当に連れていってくれそうだ。7分を超える長尺だが、最後までじっくりと聴き入ることができる。
-
-