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閑話休題(10)ーー情報リテラシーの大切さ

皆さん、情報リテラシーと言う言葉をご存知ですか。ウィキペディアから「暫定的に」意味を拝借すると、「情報を自己の目的に適合するように使用できる能力のこと」だそうです。

私自身は、「得られた情報を」「自分なりに咀嚼し」「アウトプットする」能力だと理解しています。

つまり①「情報を得て整理し」→②「自分なりに咀嚼・理解」→③「これをSNSや他人との会話で話す」という3つの段階で要求される能力と言えますね。情報リテラシーを上げるにはこれら①②③の3つの段階でそれぞれ、意識してトレーニングする必要があると私は思います。これはニュースにおける情報リテラシーも同じことが言えます。

なぜ今回、このようなことを提起したのかというと、先日「X(エックス)」で、日中共同声明にある台湾に関する部分において中国方面からとみられる人民と対話した時に、その必要性を大いに感じたからです。

彼らとは私のアカウント内で何回か対話したのですが、その中で一致点は最後まで見つけることはできませんでした。なぜ見つけることができなかったのかな、、と考えた時にやはり「ニュースに対する情報リテラシー」の違いなのではと思ったのです。

つまり、先ほどの①②③に当てはめて言うならば

彼らはおそらく、①中国という情報が限られた社会で②自分なりに咀嚼もせず受け売りで③私にその直接知識をぶつけてきた――とみられます。

これは彼ら自身が身を置いている中国社会の問題であるのですが、われわれも他山の石としてしっかり心の中に納めておく必要があります。

具体的にどういうことか①~③で見ていきましょう。

◇◇

まず、①の「情報の取得」ですが、これについては単に「情報を取得する」という意味だけではありません。取得した情報の取捨選別、情報の背後にあるバックグラウンド、書かれた情報の意図、情報の真偽などに基づき、取得した情報を選別、整理する能力も指します。

中国から壁越えしてXに来る人民は中国という情報が限られた社会から、いきなりXのさまざまな情報に接したために、「どれが本当の情報なのか」「その情報の背後にあるバックグラウンドは何か」などが分からない状況になっていると見られます。そしてその中で、「自分らが壁の中で接した中国の情報が一番正しいんだ」という認識を元に壁の外の情報を見ているために、認知の歪みみたいなものができてしまっているのでしょう。

私は「中日ニュース翻訳者」として、中国国内のニュースやSNSも、国外のニュースやSNSも、原文の一次資料に触れられる機会が比較的多い立場にあります。しかも中国語や英語のニュースに触れる機会も多いので、情報リテラシーとしては皆さんよりもやや優位な立場にあるかもしれません。

それでもこの中国ニュースに対する情報リテラシーは、皆さんにも養っていただきたいと常々思っています。中国ニュースに限って言うならば、解像度の低い中国ニュースが日本には氾濫しているからです。

これについては現に以前に配信した「中国のニュースに対するリテラシーを上げるには」という記事で、皆さんにいろいろ説明しています。ので、自信がないという方は参考にしてみるといいでしょう。

◇◇

次に②の「自分で咀嚼する」ですが、これは平たく言うならば「整理したニュースに対する自分自身の理論武装」です。①で選別した情報を見て、「今国内外では何が発生しているのか」を理解し、「それを受けて自分はどう思うのか」を自分の考えとして整理することです。

これらのことを行うには、単にそのニュースのうわべだけの記事をなぞっても不十分かもしれません。

例えば台湾問題ひとつとっても、今の総統選の結果だけを見て「それを自分なりに咀嚼する」のは非常に困難です。

時には台湾のこれまでの歴史、歴代総統がやってきたこと、中国大陸との関係、「1つの中国」とはなにかなど、多岐にわたる知識をしっかりと勉強した上で、「だから自分はこう思う」といったようにつなげていく必要があるのです。

思うに壁越え人民は、中国で「正しい情報・価値観だけ」を教えられた環境下で、得られた情報を疑ったり自分なりで理解したりすることを知らずに、X内の情報をそのまま「中国国内の価値観で」右から左に咀嚼したために、皆判を押したように「中国の情報に基づく言葉」しか発することができなくなってしまったということなのでしょう。

ここからも「情報を正しく理解する」ことがとても重要だということが分かると思います。

これを他山の石とし、われわれは日頃から物事に対して、正反両面から考え、自分なりに理論武装をする習慣をつけることが情報リテラシーを高める上でとても大切だということをしっかり覚えておきましょう。

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最後に、③「自分の考えをSNSや他人との会話で話す」です。

情報リテラシーの観点から言うならば、自分の考えの言語化はとても重要であると私は考えます。

この「言語化」能力を向上させるには、相手とのディベートを行うのが一番の近道です。つまり他の人と討論する中でアウトプットする能力を高めるわけです。

以前と比べてわれわれはSNSなどで、見ず知らずの人とディベート状態になり、自分の考えをアウトプットする機会が格段に増えました。これはとてもいいことだと私も考えます。「自分はどういう考えなのか」「自分はどう思うのか」ということをしっかり話すことで、相手からの尊敬を受けることもできますし、お近づきになる可能性もあるでしょう。

私は今回人民と話す中で、彼ら自身や、全く知らない見ず知らずの人民アカから汚い言葉を掛けられることが多々ありました。このような状況はSNSなどでは日常茶飯事かもしれないですが、討論・対話としては「あなたの負け」といってもいいでしょう。

つまり彼らは、「自分の考えを言語化できない(私の考えに反論できない)」から、汚い言葉をかけているのです。反論できるものがあれば反論しているでしょう。

彼らは台湾問題なら台湾問題をロジックではなく感情で処理しているからこそ、「それはそうですね」と素直に同意できずに汚い言葉に逃げてしまったとも言えます。

われわれが、彼らを他山の石とするならば。理論武装して構築した自分の考えをしっかり言語化できるよう事前準備しておくことでしょうか。もちろんすべての分野のことについて事前準備はできないわけですから「考えたらやる」程度でいいとは思います。

そして討論する中で相手に同意できるところがあれば同意する。紳士的に対応して情報リテラシーの「①②」の肥やしにする。

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どうでしたでしょうか。情報リテラシーを高めるための①②③のステップ。SNSを使うことが多くなった今、われわれも心してトレーニングしたいものです。


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