あなたの仕事はセレンディピティを起こすことができているか
最近、仕事をしていてこんなことをふと考えるようになった。
セレンディピティ(serendipity)とは、「素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、 幸運をつかみ取ることである」とある。(ウィキペディアから抜粋)
仕事をしていると多くの出会いがある。営業や接客販売のように人と話してなんぼの仕事の場合はもちろんだし、そういう仕事じゃなくても誰かしらと関わりを持つことはあるだろう。だいたいの仕事は、自分以外の人と関わりながら進めていくものだ。完全に1人だけでずっとやり続けられる仕事って意外にというか、ほとんど存在しないんじゃないかと思う。
僕自身はというと、人事という仕事をしていることもあり、社内外問わず日常的にいろんな人と会う機会がある。ほとんど毎日採用面接をしているので、求人に応募してくださった候補者の方と(今はオンラインで)お会いしているし、求人媒体や人材紹介エージェントなど協力してくださっている外部業者の方とコミュニケーションする機会も多い。もちろん、社内のメンバーと話す機会だって沢山ある。
採用業務をやっていると、自社に応募してくれた方との出会いをついついセレンディピティで表現したくなる。でも、誤解を恐れずに言うのであれば、僕にとってそれはセレンディピティではない。なぜなら、予期せぬ偶然の出会いではないからだ。むしろ、意図的に接点を作ろうとしてあれこれ手段を講じた結果生まれてくる出会いだと考えている。自分たちで募集しておいて、いざ応募が来たら「これはセレンディピティだ!」なんて言うのは、なんか違う気がするのだ。
もちろん、セレンディピティではないから良い出会いではない、と言いたいわけではないので、そのあたりは誤解なきよう。
で、僕が仕事でセレンディピティを感じるのはどういう時かと言えば、これはもう圧倒的に「初見で一緒に仕事を進めたいと思える営業を受けた時」なのである。
人事担当は新規の営業を受ける機会が意外と多い。HR系のサービスは世の中に多数存在するから営業のターゲットになりやすいだろう(他意はない)し、本社の管理部門ということで、会社にかかってきたすべての問合せに対してとりあえず一次対応する可能性も高いからだ。また、最近は個人的にTwitterを(一応)ビジネス向けに展開していることもあり、そちらからコンタクトをいただくケースもすごく増えた。これはとてもありがたいことだと思っている。
ただ、コンタクトしていただく方には申し訳ないけど、電話やTwitterでのDMも含めたいわゆる「飛び込み営業」は、ほとんどの場合はお断りしている。営業とはそういうものだと言ってしまうと身も蓋もないけど、断る理由をあえて書くとすれば、それはその出会いにセレンディピティを感じられなかったからなのだ。
セレンディピティを感じる営業なんてあるのかよ、と突っ込む方もいると思うけど、僕はなんと、ここ10年間で5回くらい経験している。毎日3回、何らかの営業アプローチを受けたと仮定すると10年で約7200件だから、おおよそ0.07%くらいの確率だ。でも、確率は非常に低いがそれは確かに存在するのだ。ちなみに、5回ともすべて人材紹介会社のエージェントとの出会いだった。
で、コンタクトしてくれた人の特徴について振り返ってみると、この5回とも共通していたのは、
・自分たちには社会の中でどうしても解決したい課題がある
・あなたの(会社の)課題を私たちがどうしても解決したい
という熱意と、それにかけている準備の総量が桁違いに凄かったということだ。
このエピソード5回のうち4回は、僕が過去に在籍していた企業での話だ。どれもいきなり会社に営業電話がかかってきて、「私はあなたの会社で活躍するであろう人を知っているから紹介したい」という勢いで提案をいただいた。しかも表に出ている求人募集から分析したのだと思うけど、会社の人事的な課題まで推測して言い当ててきた。ここまで準備してきたら、ちょっと話聞いてみようかな、、と人事だったら誰だって思うはずだ。(もちろん、実際に紹介してくれた候補者もドンピシャだった)
これは、「たまたまやってきた人材紹介の営業を僕が受けた」というだけの話だけど、まさしく予期せぬ偶然の出会いだったと思う。
セレンディピティには、受け取る側が身構えていないと訪れないという特徴があるらしい。ただ、ここまでの話を振り返ってみると、仕事でセレンディピティを起こすためには、受け取る側がアンテナを張っているだけではダメだということがわかる。同時にメッセージを送る側から発せられる強いサインも必要なのだ。話していてものすごく波長が合う、または強い熱量で覆い尽くされるといった感じで。
ということで、このnoteのタイトルを改めて問いかけたいと思う。
あなたの仕事はセレンディピティを起こすことができているだろうか。
自分が営業を受ける時は、そのくらいの気持ちで向かってきてほしいなと相手に対して思うし、翻って自分の人事としての仕事はセレンディピティを起こすことができているのか、自問自答しなければいけないなと思ったしだい。
人事担当が採用業務でセレンディピティを感じるのは作為的であざといから、逆に入社してもらう候補者の方にそう感じてもらえるように全力で努力するのが、本来あるべき姿なんじゃないかと思う。「この会社だと思いました! 見つけちゃいました!」と言って入社してくれたら、これほど人事冥利に尽きることはないだろう。
ちなみに5回のうちの1回は、つい最近あった出来事だったりする。
人との出会いは、いくつになっても面白い体験だなとつくづく思うのだ。
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