一一九一〇四

フランクルの夜と霧を読んだ。
なんとなく、世界からの無言の圧力を感じたからである。
夜と霧といえば高校の時の倫理の授業でタイトルを習ったのみで、フランクルの主義主張などは一切覚えていない。
そんな状態で、フリマアプリでさっそく本を購入した。2日後、届いた本を前にごくりと息をのむ。
題材が強制収容所での生活ということで、半ば怯えながら1ページ目をめくった。心配は杞憂だった。え、何これ、めちゃくちゃサラサラ読める…!あっという間に一章を読み終えてしまった。

文章が簡単で分かりやすく、記されているのは壮絶な内容なのに、ある種の明るささえ感じる。本当に、すらすらとページをめくることができた。それがいいか悪いかは別として。
あまりにもさらりと読めてしまったせいで、この本の主題がいまだに捉えられていない。
極限の状態にある時の人間の振る舞いから人間の本質を考察したものなのかな、となんとなく思っているが、違うかもしれない。
これは時間をおいて再び読み直したい一冊になった。

以下、心に残ったフレーズを羅列していく。

まっとうに苦しむことは、それだけでもう精神的になにごとかをなしとげることだ(112頁)
生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ(129頁)
生きるとはつまり、生きることの問いに正しく答える義務、生きることが各人に課す課題を果たす義務、時々刻々の要請を充たす義務を引き受けることにほかならない。(130頁)
すべての状況はたったの一度、ふたつとないしかたで現象するのであり、そのたびに問いにたいするたったひとつの、ふたつとない正しい「答え」だけを受け入れる。(130-131頁)
あなたが経験したことは、この世のどんな力も奪えない(138頁)
わたしたちは学ぶのだ。この世にはふたつの人間の種族がいる、いや、ふたつの種族しかいない、まともな人間とまともではない人間と、ということを。(144-145頁)


分からないなりに、断片的なエッセンスは受け取れたのかなと思う。とくに心に刺さったのは、悩むということ自体が精神的に何かをやり遂げている、ということ。
心の病と向き合いながら生きる日々は、まさに悩みの連続だ。それすなわち、毎日何かをやり遂げているということ。この悩んでいる時間は無駄じゃないんだと思わせてくれた。
あともうひとつ、人間の種族には、まともな人間とまともではない人間かしかいない。これって、ユダヤ人差別に対する最大級の皮肉じゃない?気づいた時、手を叩いてしまった。
叶うことなら、まともな人間側でありたいものだ。そういうことを常に心の片隅に置いて日々を過ごしたい。

さて、この夜と霧。
難しい話は一切出てこない。でも、人間とは何か、生きる意味とは何か、そうしたことについて考えるきっかけを与えてくれる。
おすすめだ。読んで良かったと胸を張って言える一冊だ。今この時読んだからこそ、刺さる言葉が多数あったのかもしれない。世界から背中を押してもらえたことに感謝しようと思う。



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