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各プラットフォームの『Goat Simulator』を比較する

「新装版」「文庫版」「完全版」「特典付き」「リメイク」「リマスター」――そういった言葉に惹かれて、過去に読んだことのある本やプレイしたことのあるゲームなどをもう一度購入してしまうことはありますか?
「借りパクされて戻ってこないから」「特典が欲しかったから」「旧版では収録されていない要素があるから」「押し入れから旧ハードを引っ張り出すのが面倒だから」――そんな理由で本やゲームを買いなおすことが、私はしばしばあります。

今回の記事で取り上げる『Goat Simulator』もそのひとつ。
コンシューマーに移植されたと同時にPS3版を購入し、その後PS4版とDLCを買い揃え、さらに無料配信中だったiOS版もダウンロードし、今年になってSteamデビューした勢いでPC版も買ってと、計4機種分(去年PS3を手放したので実際は3機種分)所持しています。

これまではスペック上の都合からコンシューマー版(PS3版→PS4版)でしか遊ぶことができませんでしたが……去年の秋にiPhoneを買い替え、1ヶ月ほど前にゲーム用のPCを購入するなど、今ではどのハードでも快適に遊べる環境が整いました。

ところがPC版やモバイル版をプレイすると、普段遊んでいたPS4版と違う点がいくつもあることに気付いたのです。

PC版(Windows版)
コンシューマー版(PS4版)
モバイル版(iOS版 Pocket Edition)

例えばガソリンスタンドを爆破させた際に表示される「MICHAEL BAY」の表記も三者三様です。

何故同じ『Goat Simulator』というゲームでありながら、大なり小なりプラットフォームごとに異なる点があるのだろう? せっかく3機種分遊べる環境にあるのだから、遊び尽くして比較してみないと損なのでは?
そう思った私はiPhone片手にPCとPS4を起動し、各デバイスにインストールされた『Goat Simulator』を見比べてみることにしました。

ゲーム概要と対応機種

かなり有名なゲームなのでご存じの方も多いかと思われますが、一応簡単に説明を。

『Goat Simulator』はスウェーデンのゲーム会社Coffee Stain Studiosによって制作された「ヤギになりたい」という全人類の夢を叶えた次世代ヤギシミュレーターです。

といっても『Farming Simulator』のようなリアル志向のシミュレーションゲームとは程遠く、かわいいヤギさん(ほぼ不死身)になって『Surgeon Simulator』のような荒ぶる物理演算バグめいた挙動を楽しむサンドボックス型アクションゲーム――要するにバカゲーです。

もともとは手の空いた社員がゲーム開発に慣れるための訓練として作られたゲームなので製品化の予定はなかったのですが、YouTubeにアップされたα版プレイ動画の反響から製品化が決まり、現在ではプラットフォームの垣根を越えてさまざまなハードで配信されています。

  • Windows(PC版)

  • OS X(PC版)

  • Linux(PC版)

  • Xbox 360(コンシューマー版)

  • Xbox One(コンシューマー版)

  • PlayStation 3(コンシューマー版)

  • PlayStation 4(コンシューマー版)

  • Nintendo Switch(コンシューマー版)

  • iOS(モバイル版)

  • Android(モバイル版)

しかし上記ハードで配信されている『Goat Simulator』は「ヤギになる」というコンセプトこそ共通していても、何の調整もしないままオリジナルを丸移植したものではありません。

簡単ではありますが、ここでは大きくPC版(Windows版)・コンシューマー版(PS4版)・モバイル版(iOS版)と3バージョンに分けて各プラットフォームの特徴を挙げていきます。

PC版の特徴

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2014年4月1日。すべての伝説はここから始まりました。

①MODの導入が可能

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バニラで遊んでも楽しいことに変わりないのですが、あれば遊びの幅がグッと広がるのがMOD。このゲームも有志の物好き……もといヤギ好きたちが作り上げたMODがSteamワークショップにて公開されています。
追加マップやオリジナルミューテーターはもちろん、無限ジャンプやマップ内に点在するトロフィーの拡大表示など実用的なものもあれば、シュレックになれるという誰得なものもあって、みなさんのヤギライフをさらに充実させること間違いなし。(ただし古いMODだと最新バージョンで動かないものも多数存在)

②スペシャルの制限がない

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ミューテーター固有のスペシャル(特殊能力)の中にはオブジェクトを出現させるものがありますが、コンシューマー版とモバイル版にはその出現数に制限があります。
Goat Queenのスペシャル(空からヤギを降らせる)を例に挙げると、コンシューマー版は4匹、モバイル版は7匹が上限で、それ以上出現させようとすると古いオブジェクトから順に消えていきます。
対してPC版にはその制限がなく、オブジェクトを無限に出現させることができます。ただし出現数に比例してPCの処理が重くなるので要注意。

③古いゲームの割にはそこそこ重い

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発売が2014年と古いゲームではありますが、Unreal Engine 3で開発された物理演算が肝の3Dアクションということもあってか、内容の軽さとは反対に意外と重たいゲームです。
一応内蔵GPUのノートPCでも起動しないこともないのですが……画質や解像度を最低設定まで下げても処理落ちが頻発するため、グラフィックボードを積んでいないPCではまともに遊ぶことすらままなりません。

④一度メインメニューに戻らないとミューテーターの脱着が不可能

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本作では特定の行動を起こすことでさまざまなミューテーター(突然変異)が手に入り、その多くはアンロックした瞬間に自動的に適応されます。そのため複数のミューテーターを装着しすぎると、見た目やスペシャルの使い勝手が悪くなることも。
コンシューマー版やモバイル版ではボタンひとつで自由に脱着できるのですが、PC版ではその機能がないのでいちいちメインメニューに戻ってミューテーターを選びなおす必要があります。その場合、一度ゲームから離脱することになるので当然スコアもリセットされてしまいます。まあこのゲームのスコアなんてあって無いようなものだけど。

⑤日本語翻訳のクオリティが低い

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まあ『Goat Simulator』というゲーム自体、元からして意味不明かつブッ飛んだ文章しか存在しないうえにADVのような読解力に重きを置いたジャンルではないので、機械翻訳に抵抗のあるプレイヤー以外はさほど気にならないでしょう。が、それでもコンシューマー版やモバイル版と比べると、PC版のローカライズ品質はお世辞にも良いとは言えません。
フォントが大きすぎて文章が枠からはみ出したり見切れたりはなど日常茶飯事。中でも『Goat MMO Simulator』や『Waste of Space』では台詞や説明文が多いため、直訳気味で堅苦しい機械翻訳らしさが一際目立っています。

コンシューマー版の特徴

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PC版やモバイル版のようにハード性能によって大きく左右されることがないので、比較的安定したヤギを楽しむことができます。

①実績解除・トロフィー獲得で得られるポイントがおいしい

Steam実績に対応していたPC版と同じく、コンシューマー版でも実績(Xbox Live)やトロフィー(Playstation Network)といったやり込み具合の可視化制度に対応しているのですが、その実績解除・トロフィー獲得時に得られるポイントが簡単な割になかなかおいしく、一部ゲーマーからは「実績・トロフィーブーストゲー」とも評されています。
例えばPS4版ですと、ストーンヘンジをめちゃくちゃにするだけでシルバートロフィーが解除され、ハングライダーをなめるだけでゴールドトロフィーが解除され……といった感じに簡単な行動でレアリティの高いトロフィーを手に入れることができます。さらに低価格ゲームとしては珍しくプラチナトロフィーも実装しており、早い人であれば1時間程度でコンプリートも夢ではありません。
……もっとも、おいしいのは本編だけでDLCになるとどのトロフィーも一律ブロンズ扱いになってしまうのですが。

②ミューテーターの脱着が容易

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当初はコンシューマー版もPC版のようにいちいちメインメニューに戻らないとミューテーターの脱着ができませんでしたが、バージョン1.04以降はゲーム中にミューテーター一覧を呼び出して自由に脱着できるようになりました。(逆にメインメニューでのミューテーター選択が削除)
「プレイ中にミューテーターを装着しすぎてスペシャルの使い勝手が悪くなった」「複数のミューテーターが混在したせいで見た目が気持ち悪くなってしまった」というときもボタン一つでデフォルトのヤギに戻ることができるので何気に便利です。

③一部キャラクター・ミューテーターの削除

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版権上の都合か、コンシューマー版ではBuilder Goat(『Minecraft』のパロディ)やUncle Goat(『A Story About My Uncle』のセルフパロディ ※モバイル版ではスパイダーヤギの名称で登場)といった一部ミューテーターが実装されていません。
他にもGoat City Bayの下水道に住むタートルズは緑のジャージを着たおじさん4人組に替わっていたり、『I am a Bread』とのコラボイベントも削除されています。

④ロード時間が長い

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詳しく検証したわけではないので一概には言えないのですが……少なくとも私のPS4(CUH-2000BB01)では読み込みにかなり時間がかかります。
試しにPS4版のメインメニューからゲームが始まるまでの時間をストップウォッチで計ったところ、『PAYDAY』で約30秒……『Waste of Space』ではなんと1分以上もかかりました。HDDにインストールしたPC版でもここまで長くありません。

モバイル版の特徴

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PC版やコンシューマー版からいろいろとデチューンされている部分が多い反面、モバイル版ならではの要素も多数あります。

【追記(2022/2/1)】
本項で取り上げられている内容は、2021年7月(Android版)・12月(iOS版)に配信された大型アップデート以前の旧バージョンのものになります。
大型アップデート以降の変更点・新要素については別の記事内にまとめましたので、興味のある方はそちらをご確認ください。

①モバイル版限定マップがある

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モバイル版を買うと通常のマップ(『Goat Ville』と『Goat City Bay』)に加えて、『Buck to School』という学園を舞台にしたマップで遊ぶことができます。(※後述の『Pocket Edition』では別売)
この『Buck to School』はなんと他機種では配信されていないモバイル版限定マップ。もちろん『Buck to School』オリジナルのミューテーターやミッションも健在です。他機種版で遊んだことのあるプレイヤーも新鮮な気持ちで楽しめます。

②無料体験版がある

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モバイル版には通常の買い切り版に加えて基本無料版が存在します。
これは広告動画を視聴すればDLCを含むどのマップでも時間制限付きで遊ぶことができるいわば体験版のようなもの。もちろんミューテーターもすべて使用可能です。ただし制限時間をオーバーすると、該当マップを購入しない限り遊べなくなってしまいます。

③課金によってミューテーターのアンロックが可能

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通常であれば実績やトロフィーのように特定の行動を起こさないとミューテーターを入手できませんが、モバイル版ではリアルマネーで購入可能なミューテーターのアンロック権が販売されています。
これによって金にものを言わせれば最初から全ミューテーターを解除することもできますし、取得条件に対応するDLCマップを所持していなくても特定のミューテーターのみを使用することも可能となりました。

④マップの簡略化(一部施設の削除)

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PC版やコンシューマー版のような広大なマップをそっくりそのまま移植するのはやはり厳しかったのか、モバイル版では画質の低下と合わせてマップがかなり簡略化されています。
『Goat Ville』ひとつとっても、低重力試験場やバッティングマシーンは削除され、Coffee Stainのオフィスも一階部分しか歩き回ることができず、ミニゲームの『Flappy Goat』や『Steamworld Goat』も存在しません。
その代わり、『Goat Ville』に電車が走っていたりガソリンスタンドにラグドール自販機なるものが設置されているなど、モバイル版でしか見られない光景もちらほらと存在します。
他にもモバイル版でしか登場しないNPCや施設がいくつかあるので、PC版やコンシューマー版との違いを探して遊ぶのも面白いかもしれません。

⑤複数のミューテーターを組み合わせることは不可能

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PC版やコンシューマー版では複数のミューテーターを組み合わせてカオスな見た目にすることができますが、モバイル版ではひとつのミューテーターしか反映されません。
例えば上の画像は「Queen Goatを使用した状態でEvil Goatをアンロックした瞬間」なのですが、通常であればQueen GoatとEvil Goatの見た目&スペシャルが両立するところを、ここでは何故かミューテーターが外れてNomal Goatに戻っています。
単一のミューテーターしか反映されない分、見た目もすっきりしてスペシャルの使い勝手も良いのですが……あのカオスっぷりが楽しめないのはなんだか少し寂しい気もします。

まとめ

さて、各プラットフォームの『Goat Simulator』について箇条書きでまとめるとこんな感じになりました。

【PC版の特徴】
〇 収録ミューテーター数が一番多い
〇 MODの利用が可能(Steamワークショップ対応)
〇 制限なくスペシャルを発動可能
× ミューテーターの脱着が不便
× 日本語訳の質が低い
× ある程度性能の良いPCが必要

【コンシューマー版の特徴】
〇 環境に左右されることなくほぼ安定して動作する
〇 ミューテーターの脱着が容易
〇 実績&トロフィーコンプリートが容易(本編のみ)
× PC版から削除された要素あり
× ロードが長い

【モバイル版の特徴】
〇 モバイル版限定要素多数
〇 基本無料版がある
〇 ミューテーターの脱着が容易
× PC版から削除・簡略化された要素多数
× 複数のミューテーターを組み合わせることは不可能

オリジナルのPC版。安定した動作のコンシューマー版。独自色の強いモバイル版。同じ『Goat Simulator』というタイトルのゲームでも、プラットフォームによって個性がはっきりと分かれています。
しかしどのプラットフォームにおいても「ヤギになる」というコンセプトは一貫しており、「ヤギらしさ」は損なわれていません。

まずはお手元のPC・ゲーム機・スマートフォンから、みなさんも気軽にヤギになってみてはいかがでしょうか。少なくともレンガやフラフープを買うよりもよっぽどエキサイティングな体験ができますよ?

注意点

上記の情報は本記事公開時点のものであり、最新のバージョンとは内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

こんな記事に投げ銭するぐらいならレンガかフラフープを買った方が有意義だぞ。