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約束されたメェ作『Goat Simulator 3』をスルーした自称ヤギ好きの言い訳

2022年11月17日――アレの解禁日です。
繊細さと力強さを併せ持ち、芳醇で香り高く、そのクオリティからは50年に一度とか100年に一度とも評されたことのある、世界的に有名なアレ……そう、アレと言えばもうアレしかありません。

『Goat Simulator 3』リリース

あの衝撃的な発表から5ヶ月、ついにG-Dayがやってきました。世界中の誰もが待ち望んだ今年最大のビッグタイトルにしてGOATY(Goat of the Year)最有力候補、そして数々の伝説の打ち立てた歴史的メェ作『Goat Simulator』シリーズの最新作という約束されたメェ作『Goat Simulator 3』の発売日――おお、ヤギよ!! 勇者ピルゴールよ!! 貴殿の旅路にねばねばの液体キャンディーの祝福があらんことを!!

おそらく世界中のヤギ愛好家たちはこの日のために有給休暇を取得し、日付が変わったと同時に人間を辞めて偶蹄目ウシ科の愛くるしい生物へと姿を変え、ボジョレー・ヌーヴォーの入ったワイングラスを傾けながらサン・アンゴラ島で素BAAAらしい休日を満喫したことでしょう。
そして皆、この世界に秩序と混沌をもたらした偉大なる王の凱旋と新たなる伝説の誕生を声高々に祝福するのです――おお、ヤギよ!! 救世主ピルゴールよ!! ミュージカルスターの金魚ンヌ・リーヴスよ!! 貴殿らが振りまく愛嬌と災厄とわくわく!びくびく?大騒動!を未来永劫讃えよう!!

……とまあ次世代ヤギシミュレーター最新作の発売をテンション高く喜んでみたはいいものの、私自身は有給申請もしていなければボジョレー・ヌーヴォーも飲んでおらず、サン・アンゴラ島にBAAAカンスにも行っていません。
なんてことのない普通の平日。そこにゲームのGの字もゴートのGの字もありませんでした。

つまりヤギ愛好家を自称するにも関わらず、約束されたメェ作の購入をスルーするという決断を下したのです。

過去にも「EGS独占販売なのが気に食わない」とか「豪華すぎてコレジャナイ感がある」などいろいろと言いがかりをつけてきましたが、これらが直接的な原因となって今回購入を見送ったわけではありません。
仮にPC版がSteamでも配信されたとしても、すぐには飛びつかず購入を渋ったことでしょう。

今回購入を見送った最大の理由を挙げるとするなら、ゲーム側でなくプレイヤー側の問題。すなわち、私自身のゲームプレイスタイルの変化にあります。

プレイ時間、購入頻度、趣味に費やす金額……遊ぶ時間もお金もあってPSプラスで配信されるフリープレイタイトルも毎月律儀にプレイしていた学生・フリーター時代と比べると、今の自分は過去の自分ほどゲームに対する情熱を持ち合わせていません。趣味に対する熱量が、ここ3〜4年ほどで明らかに右肩下がりになっています。
特にメインプラットフォームをPCに移してからは「ゲームそのもので遊ぶ」よりも「セール価格の掘り出し物を手に入れる」方が楽しいと感じることが多くなり、Steamで大型セールが開催されるたびに「ゲーマー」ならぬ「積みゲー無ァー」化に拍車がかかっています。

購入しただけのゲーム。インストールしただけのゲーム。無料配布でポチっただけのゲーム。MODを入れて起動確認しただけのゲーム。数十分触っただけで未クリアのゲーム。終盤まで進めたけど未クリアのゲーム。アーリーの頃に買ったけどほとんど触らないままいつの間にかフルリリースされたゲーム。セールで買ったけど1度も起動することのないままいつの間にか続編やリメイクが発表されたゲーム。
こうしたゲームがライブラリにずらりと並んでいるのを見ると、ゲームのみならず自分がいかに趣味と真摯に向き合っていないかが思い知らされます。

買い集めた文庫本、インストールしたゲーム、ダウンロード済のプライムビデオ……とりあえず手元に置いておくだけ置いたそれらの中には、きっと死ぬまで読まない本やプレイしないゲームも出てくるはず。
そうと思うと、横になってぼけーっとSNSを見るだけで無駄な時間を潰すだけの休日を送る自分がなんだか死に急いでいるような気がしてなりません。

逆に今の私が『Goat Simulator 3』を欲しがる理由としては「自称ヤギ好きとしての使命感」に他なりません。

もちろん『Goat Simulator』が好きという気持ちに変わりありません。何もかもがチープで馬鹿げていて愛おしい、ただの出来が良いバカゲーではなく歴史に残るレベルのメェ作だと本気で思っています。

反対に、その「好き」という気持ちが足枷に感じることもしばしばありました。たとえ本心ではそう思っていなくても、自称ヤギ愛好家として『Goat Simulator』狂信者のペルソナを被って道化っぽく振る舞っていたことも少なくありません。

特に基本無料モバイル版のレビュー執筆時なんかは「据置ゲームを無理やりスマホに移植した挙句バーチャルパッドとかいうクソ操作を強いてくるクソアプリは全部滅べ」というバーチャルパッド操作嫌いの私と「それでも一応『Goat Simulator』なんだし……」というヤギ愛好家としての私がせめぎあって、変な義務感を抱きながら検証作業を進めていった覚えがあります。

そんな見栄以外の何物でもないちっぽけな理由しか持ち合わせていないなら、別に今すぐ買う必要無いんじゃないか?
本当に好きだったらプレオーダーが始まった時点で迷うことなくEGS版を予約したはずだし、行動できなかったってことは今の自分にとってそこまで欲しいゲームでもないんじゃないか?
それならセールや独占契約切れからのSteam版を待っても遅くないし、それよりも今積んでいる別の娯楽に目を向けた方がいいんじゃないか?

そう思ってしまったが最後、心が「見送る」方向に傾いたまま再び揺れ動くことはありませんでした。

つまり私にとって『Goat Simulator』とは……ヤギとは……所詮その程度のものだったのだ……

おお、ヤギよ!! 主神ピルゴールよ!! 食物連鎖の頂点に立つ万物の王よ!! 我に蹄の裁きを!!

数々の伝説を生み出してきたそのマジカル☆ヘッドバットでこの煩悩をゴートヴィルそして星々の世界にMICHAEL BAYしてくれたまえ!!!!!

この愚か者に……「真のヤギ愛好家」でも「並のヤギ愛好家」でもない「ヤギ愛好家を気取ってるだけの変人を気取ってるだけの凡人」にどうかヤギの裁きをおおおおおおおお!!!!!!!!

そんなこんなで約束されたメェ作が発売されたにも関わらず素直に喜べないうえに、自身のヤギ好き&ゲーム好きアイデンティティが崩壊した木曜日だったのでした。

こんな記事に投げ銭するぐらいならレンガかフラフープを買った方が有意義だぞ。