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声を上げろ!厳しい環境政策に反発して ~オランダ振り返り投稿2~

農業従事者が怯えてる。農業従事者が怒ってる。

2019年、オランダの最高裁のとある判決により、「窒素危機」に陥った。
まあ色々端折ると、窒素を排出する活動に出す許可が、実は根拠に欠けていて、EUの生息地指令に反するものだったということだ。
これに伴って、この許可に基づいて申請していた建築プロジェクト等は一時停止になった。また、2021年に政府は「窒素法」を制定し、各産業へ窒素排出制限を課した。農業もご多分に漏れず。

家畜の糞尿に含まれる窒素分が、土や水や空気を汚染し、花々を枯らし、野鳥を殺しているとして、オランダ政府は飼料に含まれるたんぱく質を減らすように求めたり、家畜小屋の窒素排出上限を定めたりしている。

しまいには、農家の強制買収と呼ばれる策を実施(実際には「強制」ではないのだが、そう思われるのも仕方がないのかもしれない)。3.5億ユーロもの予算を用意し(日本円にして520億円弱。2023年4月現在の為替レート)、畜産を営む権利を手放した農家には、市場価格等に応じて支払いをするというものだ。

これじゃ、農家潰しだろ!と怯え怒った農業従事者たちは、トラクター(100、200馬力とかある大きなの)で高速道路を塞ぎ、街にトラクターで乗り込み、時には過激的に糞尿を市役所にぶちまけたり、タイヤを高速道路脇で燃やしたり。

農家なき世界に食糧はない!食糧危機を起こす気か?と市民も加わった。農業従事者のデモに対する国民の支持率は5~7割を推移し続けてきた。

”Steun onze boeren” (私たちの農家を支えよう!)という旗が道端に掲げられていた

当事者や「共事者」が声を上げる、これは、日本ではもどかしいくらいに見られない光景だ。

空気を読む文化の日本とは正反対で、オランダではむしろ空気を読む方が失礼なのだ...まあ、TPOはわきまえるが...
相手の気持ちや考えを「勝手に」推測するなんて、相手のことなんか分からない癖に。相手に自分の考えを察してもらおうなんて、なんと自己中な、という訳だ。だから自分の意見はハッキリ述べるし、相手に聞きたいことはストレートに聞く。

さて、農業従事者のデモの話に戻ろう。数年に及んだ戦いが、今年2023年春の地方選挙の結果に反映された。2019年に創立された政党 BBB(Boer Burger Beweging「農民市民運動党」)が12の州すべてで最大の政党となったのだ。(低い州では投票の13.7%、高いところでは33.5%の票を獲得)

投票率も、州議会議員選にしては1980年後半以降最高の57.5%だったそう。
ちなみに、ついこの間の日本の統一地方選は...なんだって?全国では41.85%、埼玉県に限ると34.92%で過去最低を4回連続で更新した!?この絶望的な投票率の低さをオランダ人の友達に話したら、驚かれ引かれ呆れられた。

オランダでは、農業従事者とその他市民が痺れを切らし、現政権への不満が爆発したという訳だ。


でも実は、私が留学時代にお話ししたオーガニック農家には、農業従事者のデモの内容に全面賛成は出来ない、という人も多い印象だった。この選挙の結果に関してはどう思っているのだろうか?経営規模が違ったり、慣行・有機など栽培方法が違ったりする農業従事者の間の連帯感(対立)はどうなっているのだろうか?(この辺は現地に行って聞きたい)

話の続きはまた。

Tot morgen!(オランダ語で、じゃ、また明日ね!)


★★★さすらいの百姓、今年夏に再びオランダに行きます!★★★

4年間のオランダ留学を終えて早半年。もっと知りたい!うずうずが溜まってきました。なので再びオランダへ、2週間ほど。

今回はみなさんの素朴な疑問や知的好奇心をリュックに詰めて。題して、「 サキと行く!あなたの目線と共に。オランダの旅 𝟮𝟬𝟮𝟯(仮)」

旅するにあたって、2018年から2022年の留学を通して学んだこと、感じたことを改めて振り返ってみることにしました。現状が変わっているであろう箇所はどこか?もっと知りたいことは何なのか?その辺の整理も踏まえて。

正直なところ旅費が馬鹿にならないため、クラファン形式でお力をお借りできたらと思い、5月中旬募集スタートを目指して準備を進めておりますm(_ _)m 応援して頂いたお礼に、みなさんの知的好奇心もお供として連れていき、マスコミでは分からないオランダのリアルを現地からお届けします。私自身にとっても、みなさんの目線をお借りできるのは大きな意味があります。詳細は後ほど。

今は暫し、振り返り投稿にお付き合い頂きつつ、疑問などがあれば書き留めておいて頂けると嬉しいです🥰


参考資料
オランダ地方選2023の結果に関する記事
オランダ地方選2023の結果に関する記事その2
日本の統一地方選2023 投票率

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