見出し画像

死刑囚と紅葉

秋の夜長を

縁側で寝転んで

君と過ごす

強い風が吹き付け

ふたりの頬を冷やす

身震いした君の肩に

僕の上着を掛け

僕達は紅葉越しに

朧な

遠い月を眺める

「月が寒そう」

君が言う

僕は

「そうだね」

と答え

深紅の葉がはらはらと

舞うのを見ていた

こうして時は移ろい

僕達は死へ向かう列車から

降りることは出来ない

テレビに映る死刑囚を

蔑む人々も

自分達も永遠の死刑囚だと

気付いていないのだろうか

ただ

限られた時間を

愛する君と過ごす

今この瞬間が

僕の全てであり

昨日も明日も

存在しない幻想

今日を生きることは

君への愛がなせる

僕が起こす

ただひとつの奇跡

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?