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雪の喫茶店

冬枯れの木々の間を  

君とそぞろ歩く


寒々しい風景に

こころ寂しく

肩を寄せ合う


雪は

三日前から

降り続き

君とのLINEも

雪景色に覆われた

辿り着いた喫茶店

コーヒーに脂が浮かぶ

君はそれを

指で除けた


角の席の老人が

突然叫び始めた

「万物は流転し」

「永久不滅」

「生ゴミ焼却」

「俗物死すべし」

僕と君は

黙って老人を見ていた

品のいいスーツを

カチッと着こなした

色気のある彼の白髭には

コーヒーの脂が

べったりと付着していた


水商売の女が

老人に暴言を吐いた

嫌味な濃い化粧が 

ぐにゃりと歪む

僕達はそのやり取りを

ぼんやりと聞いて

それぞれの人生を

頭の中で

紐解いていた


気が付けば

喫茶店は

巨大な芋虫の

背中に乗っていた

芋虫は悲しげに

のそのそと雪原を往く

喫茶店は窓に雪を映し

ゆらゆらと揺れる




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