「カフェにて2019 」


#創作大賞2023 #エッセイ部門

 スマホで無心に打つ。ブラックコーヒーを飲んでいると無性に吸いたくなってしまった。コーヒーは小さい頃から好きだが、タバコが砂糖やミルクよりも相性がいいということをようやく最近知った。一度知ってしまった極上の組み合わせは当分抜け出せなくなるだろう。良い条件のカフェを見つけた。ジャズ喫茶だ。某デジタルマップを駆使してたどり着いたその店は思っていた以上に落ち着きのある雰囲気漂う店であった。店内はジャズの音色で溢れていた。
 先客がいた。東京からの出張者だった。意外な共通点が見つかり話に花が咲いた。その店のマスターはコンビニを目の敵にしている人だった。各国との違いをジャズの豆知識を交えながら語った。個性的な者が少ない。流されている。今日はじめってあったとは思えないほど共感できた。コンプレックスがあった方が好きだ。出張者は語る。世界的に有名な歌手を取り上げ熱弁した。コンプレックスか。私にはコンプレックスしかない。コンプレックスの塊。最近の悩みだ。その二人にはわからなかっただろうが闇を持っている。なかなか言えない暗い闇。その闇が感じられたのだろうか。マスターとその出張者は私にこう言った。「大学生のうちに思う存分遊べ」その通りだ。むしろ遊びたい。だが、残念なことに遊び相手が私にはいない。高校時代、みんなが集まっていると担任から言われていたお調子者はいったいどこへ去っていったのか。周りの大学生をうらやましそうに見つめる根暗な女に変わっていた。ここ数年、私の中で目まぐるしく変わっていった。住む場所も変わり、所属する場も変わり、何もかもが変わった。もちろん人格も。そう考え思い老けながらコーヒーとタバコを交互に楽しむ。最高なひと時。孤独を楽しめる人は強い。そんな話になっていた。
 孤独か。私は何年孤独な人生を歩んでいるんだろう。同い年とは逆方向に進んでいったここ数年。絶望と向かい合いながら何も見えないにごった荒波を毎日食いしばって生きてきた二年間。目標を何とか達成した暁にはきっと素敵な未来が待っているだろう。そんな夢物語を語っていた当時では考えられない絶望が待ち構えていたのであった。唯一の救いは、その当時今のこの状況を一ミリも想像しなかったこと。そんなことを当時考えていたら今の私はきっとこの喫茶にはいなかっただろう。週一できてあげて。そういって出張者は店を後にした。
 頼んだピザトーストを内心急ぎながら食べていた私に気まずそうにマスターがコンビニの話の続きをした。コンビニの経営の大変さを教えてくれた。外からでは内部の状況が分からないということだ。確かに言うとおりだ。外部からではわからない。この世の中大抵そんなものだ。人の心も一緒だ。言葉と行動があっていない人。外面良子と良夫には十分注意しなきゃいけない。注意しすぎても大変だが。今後の予定も未定だがマスターには、また来ますといって店を後にした。
 そして明るい大通りを目指して歩いて行った。

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