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〜ウクライナの影に隠れたもう一つの戦争〜アルメニアとアゼルバイジャン

2月24日ロシア軍がウクライナに侵攻を開始したのは前世界中の人の知るところである。そんな2月24日以降、ロシア軍が平和維持軍として停戦を監視するのナゴルノ=カラバフ(アルメニアとアゼルバイジャンの係争地域)のアルツァフ共和国(アルメニアが主張する未承認国家、アルメニア人が住んでいる)のKHRAMORT村をはじめとする近辺の村はアゼルバイジャン軍に砲撃を受け、KHRAMORT村の住人は「村を出て行け、出なければ武力を使う」と拡声器でアゼルバイジャン軍に脅迫を受けている。アメリカ、カリフォルニアに在るアルメニア系の独立メディアZartonk Mediaはそう記事を出している。そして、昨日3月10日、村の女性や子供達が避難を開始したと言う記事をZartonk Mediaは投稿した。


もしこれが事実であれば、停戦違反のアゼルバイジャンの攻撃も、罪なき村人を武力と脅迫で村から追い出す行為も許されるべきではない。さらには、アルメニアとアルツァフ共和国を結ぶガスパイプラインをアゼルバイジャン軍は爆破して、罪なき多くの人々が0度以下の寒さの中ガスが使えない状況に陥っている。まさに、ロシアがウクライナで発電所などのインフラを破壊して、罪なきウクライナの人々が電気や水道などを使えない状況にして追い詰める行為と同等のことをアゼルバイジャンは行っているのだ。

自分の実力不足なのか、そもそも今は大手メディアはウクライナ情勢に注目して余裕がないのか(元々ナゴルノ=カラバフ、アルメニアとアゼルバイジャンの領土問題兼紛争は話題になりにくいが)アルメニア系メディア以外の情報が見つからない。アルメニア系以外の第3者視点の中立な情報が本来なければ信頼できるソースとは言えないが、探せなかったので、今回は主にZartonk Mediaを中心とするアルメニア系メディアの記事からロシア軍がウクライナに侵攻を開始した2月24日以降何が起きたのかをざっくりと流れだけを説明させてもらう。信じるか信じないかは読み手に委ねるが、世界を見る上での一つの判断材料としてこの記事を使っていただければ幸いだ。

その前に簡単にナゴルノ=カラバフ、ロシア、アルメニア、アゼルバイジャンの関係を説明しよう。

そもそも、なぜロシアがウクライナを攻めるとアルメニアとアゼルバイジャンの間での係争地域であるナゴルノ=カラバフが影響をうけるのかと疑問な方も多いと思う。

ナゴルノ=カラバフ問題というのは簡単にいうとコーカサス地域のアルメニアとアゼルバイジャンという2カ国の領土争いである。係争地域ナゴルノ =カラバフはアゼルバイジャン領土内にあるアルメニア人がたくさん住んでいるエリアで、ナゴルノ=カラバフに住むアルメニア人が独立を主張したことで役30年ほど前ナゴルノ=カラバフ紛争と言われるアルメニアとアゼルバイジャン間の紛争が始まった。

アルメニアは同盟国がロシアであり、アゼルバイジャンは同盟国がトルコだ。故にロシアの国力、軍事力と国際的信頼が落ちればアゼルバイジャンとトルコからしたらナゴルノ=カラバフに攻め入るチャンスなのである(こんなにシンプルでないがかなりざっくり言うと)。

2年前2020年にも44日間もわたる、44日間戦争がアルメニアとアゼルバイジャン間で勃発し、5600人以上もの死者が出た。オイルマネーで圧倒的な軍事力やドローンによるハイテク戦術、さらにはトルコの全面的な支援によりアゼルバイジャンが圧勝した。ロシアはナゴルノ =カラバフはアルメニア本土ではないということでアルメニアを見捨てた。これにより、ナゴルノ=カラバフの多くの元々アルメニアの手にあった(アルメニア人が住んでいた、ナゴルノ=カラバフの未承認国家アルツァフ共和国)領土はアゼルバイジャンに停戦合意で引き渡された。この停戦合意の仲介をして、平和維持軍としてナゴルノ=カラバフに駐在し、停戦の監視をしているのが今話題のロシアであった。

そんな、ロシアが2月24日ウクライナへ侵攻を開始したのは世界中の人が知るところである。ウクライナに軍事力を集中しなければならず、ナゴルノ=カラバフにそこまで力をロシアが割けないと言う状態の中、ナゴルノ=カラバフ、アルメニア、アゼルバイジャン間の絶妙な力の均衡が崩れた。

2月24日ロシア、ウクライナ侵攻開始


2月24日 アゼルバイジャンがウクライナ情勢を利用して、アルツァフ共和国(アルメニア人が住むナゴルノ=カラバフ」未承認国家)のKHRAMORTの住人に村を去るよう求めた、出なければ武力を使うと大声で拡声器を使い警告(脅迫)を行う。

2月28日アルツァフのKHRAMORTのロシアの平和維持軍がアゼルバイジャン軍と交渉。


3月4日アルツァフ共和国のNorshen村でも砲撃、村人が村を出なければ武力を使うぞと脅す 

3月6日 アゼルバイジャン軍がアルツァフ共和国のKHRAMORT村の方向に30分以上の集中砲撃、アゼルバイジャンがこの地域で発砲するのは初めてではないが、こんなに長時間の砲撃は初めてだった。子供達はまた戦争が始まったのかと怯えていたと言う。


3月7日午後12時40分アゼルバイジャン軍はアルメニア西国境沿いで停戦合意を違反し砲撃。二人のアルメニア兵士が攻撃を受け、内一人が死亡。

3月7日アゼルバイジャン軍アルツァフのKHRAMORT村の墓地に60mm口径迫撃砲で砲撃。

3月8日 午前1時アゼルバイジャン軍 アルメニアからアルツァフ共和国(アルメニア人が住む、ナゴルノ=カラバフの未承認国家)へつながるガスパイプライン爆破 ステケナパルト(アルツァフ共和国首都)住民は夜1時に大きな爆発音を聴いたが、まさか朝ガスが使用できないとは思いもしなかった。アゼルバイジャン軍武力でガスパイプラインを修理しようとする作業員を脅し、修理ができていない。ステケナパルトは現在とても寒く夜は気温0度を下回る。現地でガスによるヒーターを使えないのは死活問題だ。


3月8日 午後11時にもアゼルバイジャン軍アルツァフ共和国のKHRAMORT村を砲撃

3月9日 午後1時10分アゼルバイジャン軍 アルメニア 内のアゼルバイジャン飛地ナヒジャバンからアルメニア砲撃(アルツァフはアルメニアの東だが、ナヒジャバンはアルメニアの西)


3月9日 アゼルバイジャン軍アルツァフの MARTUNI地域のKHNUSHINAK村方面とKARMIR SHUKA 村方面、AS KERA地域の KHRAMORT村方面に120MM口径迫撃砲と60MM口径迫撃砲で砲撃を行う、停戦違反だ。同日、KHRAMORT村の住人に村を去らなければ、武力を使用すると警告。


3月10日 一部村では(村名は濁している?)女性と子供が避難を始めたとニュース。公式な見解はない。

3月10日 Armen pressと言うメディアはアルツァフでのKHRAMORT村の一件はアルツァフ当局と平和維持軍ロシアにより完全にコントロールされているという旨の記事が出てはいたが、、、本当に?と連日のアゼルバイジャンの攻撃とロシア軍の状況を見ていて思わずにいられない。

このように、ウクライナ情勢の陰に隠れて、未承認国家アルツァフ共和国の村々やガスパイプラインがアゼルバイジャン軍に攻撃を受けていると言う状況で一部村の女性や子供が避難を開始したと言う状況であるとZartonk Mediaは主張している。

アルメニア系以外のメディアで本件を取り扱う記事を探すことができていないので、なんともいえないが。嘘でこんな記事を書くとも思えない。実際にアゼルバイジャンによる砲撃は存在するのだろう。以前から、このようなアゼルバイジャンによる散発的な、攻撃もアルメニアとアゼルバイジャンの散発的な衝突も少なくはなかった。ロシアのウクライナ侵攻後も正直、このアルツァフへの攻撃のニュースは目にしていたが、いつもの小競り合いかと流していた。しかし、一部村から女性と子供が避難したという記事を見て、今までと少し様子が違うと思い2月24日ロシアのウクライナ侵攻後の流れを追ってみた。するとどうだろう、確実に平和維持軍兼アルメニアの同盟国のロシアが国際的な信頼を失い、軍事力を消耗している中で、アゼルバイジャンの行動はエスカレートしていると言わざる得ない。再びアルメニアとアゼルバイジャンの大規模な戦争になる可能性もなくはない。だからこそ、ナゴルノ=カラバフ問題という問題が存在し、ウクライナ情勢の影響を受けているということを知って欲しくてこの記事を投稿した。人の目が集めれば、支援も集まりやすく、反戦を訴える人も多くなるとウクライナ侵攻が証明してくれた(だからと言って根本的に何も解決できていないのは皮肉としか言いようがないが)。

今現在ロシアが世界の悪という風潮が世界中に存在し、同盟国のアルメニアも悪じゃないかと短絡的に考える人もいるのかもしれない。しかし、アルメニアはアルメニア人虐殺を行ったトルコ、敵国アゼルバイジャンに囲まれロシアの庇護にすがるしか国を守る術がなかった。日本でいうアメリカ、ウクライナにとっての悲願のNATOのような関係である。実際、平和維持軍としてあまり仕事をせず、44日間戦争では助けてくれず、自由がないロシアを嫌いなアルメニア人は多いと筆者は肌で感じた。3月3日の国連総会のロシア非難決議でも、的に囲まれ誰よりもロシアの武力にすがらなければならないはずのアルメニアは棄権した。これは物凄い勇気の必要な行動だったと筆者は思っている。

ウクライナでも今現在ロシア侵攻後わずか二週間で200万人を超える難民がウクライナ国外へ避難している、ナゴルノ=カラバフでも再び戦争が起きれば多くの人が故郷を失い難民と化すかもしれないし、多くの人が命を落とすかもしれない。もし、そんな悲劇が再び起こってしまった時、人の目が集まれば支援は増えるし、そもそも世界の関心がナゴルノ=カラバフに向けばアゼルバイジャンも下手なことがしにくくなるだろう。多くの関心がナゴルノ =カラバフにも集まり、ナゴルノ=カラバフ問題の平和的解決に少しでも近づくことを願う。

どなたか、アルメニア系以外のメディアでKHRAMORT村の件が取り扱われていたら教えて欲しいです。



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