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旅の短歌 35首

飛び込みたいくらいの青のタラゴナで ビーチじゃなくてバルでビールを

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冷え渡る 春先駆けるソンクルの 撫でた馬の背の 汗ばむ嬉しさ

ストーブの前で手渡す一杯の ウォッカの燃えるゲルの月夜に

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足元に気づかず踏んだエーデルワイス もっと華やか かと思ってて

ナンパ師とそうでない人の見分けの ついてきた頃に帰る寂しさ

朝食のバイキングで野菜を取った気になっている旅の偏食

真昼からビール飲み一人ほくそ笑み あわてて真顔に戻る楽しさ

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チャイハナで横になったらもう最後 日が暮れるまで起きたくなくて

バザールでトマトを二つだけ買って 部屋でのんびり食べる贅沢

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買い物が下手で残った小銭たち 妹にあげても喜ばず

駆け込んだトイレ用を足した後 顔を上げたら戸がスケルトン

10m置きに座って行きなさいと声をかけてくる爺やたち

機内食要らないオーラ出して寝たら ポッケにパン入れてくれた人

バス停でインスタグラムを交換し 現代生きる楽しさ噛み締め

砂漠の夜 もやで霞んで星見えず それが案外新鮮だったり

異国の地 東京グールの話しして 盛り上がりここがどこだか忘れる

ひよこ飼う子供にペット?と尋ねると 食べちゃダメだよと怯えられた

砂漠で吸うシーシャのなんとおいしいことか 思い出補正なんかではない

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久々のシャワーにはしゃぐもお湯が出ず 震えて戻り ドライヤーなし

道端の焼きとうもろこしをベンチで 子供と並んで食べる幸せ

空港で食べるマックの美味しさに ふと世界への近さ感じる

すいません 写真を撮ってくださいと 声かけといて 恥ずかしくなる

道端で「MATSUDA!SUZUKI!TOYOTA!NISSAN!」声かけてくる 人の多さよ

朝5時のアザーンで起きる旅先の 寝覚め不思議と悪くはなくて

雨の中 別にいいやとフードかぶり 歩くわたしはどこか得意げ

暖炉脇スウェットで寝そべり寛げば 砂漠の上でもここは我が家ね

いつだってスーツケースの半分は お土産入れるために空にして

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木の陰で飲んだ20円のジュースの 味が忘れられそうになくて

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星見よう!と出かけた日は満月で 見えねーじゃんねと笑うわたしたち

道路脇バケツ一杯に売っていた いちごのなんと甘いことでしょう

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なにもかも軽くなるコバルトの中で 呼吸も忘れて波に身を任せ

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パーキングエリアで買った高いコーヒー あちちと見知らぬ人と輪になり

おかえりと言ってもらったその日から 遠い町の安宿が我が家

もう会えぬ人こそ思い出さぬ時なくて今日も旅路の余韻に浸る

また会おう たくさん約束したからね いつか世界できっと必ず



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習作として、お手柔らかに。旅の短歌35首。70首作ってそこから削りました。実話。恥ずかしくなったら消すかもしれません。

旅のことを忘れたくなくて作りました。

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