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霞がかる東京スカイツリー #1

わたしたちは
天気でお互いの気持ちを
表現し合っていたね
別れた今でも
雨が降ると
ちょっぴり嬉しくなるの

やっぱり ”その日” も曇りだった

今にも雨が降りそうで
どんよりとした暗い空
予想通り
期待を裏切らない
あなたの気持ち

不謹慎かもしれないけど
とっても楽しみだったのよ
あなたに会うことが


***



わたしたちは 塔を制覇するコンテンツで知り合った
次から次へと現れるモンスターを
時間内に倒しきって
階層を進めていくスピードバトル

考えられたジョブ編成と
きちんと敵の弱点や攻撃に合わせた装備を各自、身に付けて
なおかつ、一人一人のプレイスキルも上げて行かないと
クリアできないほどの高難易度だった

最終的にパーティーメンバー全員の息を合わせないと
ボスを倒しきることができない
挑戦しがいのある人気バトルコンテンツだ


わたしはそのスピード感のある戦いに
夢中になって挑戦していた
とても楽しいのだけれど
1人でクリアするのには限界があった

全クリアするまで固定メンバーで挑戦出来たら
どんなに楽しいのだろうかと
思い切って募集に声を掛けてみた

そこのメンバーの一人だったのが

雨男さん



雨男さんは頭の回転が速く、判断力も優れていた
階層ごとに出現するモンスターの種類や位置を徹底的に記憶して
予想を立てながら、常に次の行動を誰よりも先にやってのけた

エクセルでデータ化し、誰でも理解しやすいように
情報を可視化するのも得意だった

塔をクリアするために
手取り足取り教えてもらいながら
挑戦を繰り返していくうちに
自然と一緒にいることが多くなっていった

根本的なレベル上げから一緒に手伝ってくれて
何度もあきらめかけたわたしに
塔を一緒に完全制覇しようと励まし続けてくれたの


会話のテンポとか
あいづちとか
息づかいとか
そういうところの心地よさが
やっぱり好きだなって
自然に惹かれ合っていたように思う


次第に雨男さんは あなた自身の好きな場所へと
わたしを連れて行ってくれるようになった

湿地帯から見える五重塔だったり
360度海に囲まれた 白い浜辺の美しい海岸の朝陽だったり
雪山を超えた先にある 断崖絶壁から見える夕陽だったり

美しい景観が好きだった


その仮想世界だって
現実世界と同じように天候が存在する

あなたが連れて行ってくれるときは必ず

曇っていたり
霧が出ていたり
雨が降ったりするの


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なんてからかっていたけれど

雨を降らせていたのは
わたしの方だったって

別れてから気づいたのよ


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今まで小説を読んでくださった方、女性の生き方として興味を持ってくださっている方、作品を通してnoteに来てくださった方に、自分の気持ちに向き合いながら正直に感じる思いをエッセイに込めて描き続けていきます。 生き方や愛に思い惑うときにも、エンターテイメントとして楽しみたいときにも、喜んでいただけるような内容を届けられたら、嬉しいです。 新しいスタートを切った*うみゆりぃ*をよろしくお願いいたします

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