「○○国一の宮」と御朱印に載っているので、「一宮」を調べてみた【温故知新PJ第5弾】
私は美術館巡りが好きだけれど、神社も好きです。
大学時代は神社巡りにハマって、御朱印を集めていました。
今は2冊目の裏になるほどたまっています。
推しの神社は世界遺産にもなっている宗像(むなかた)大社!
眺めてみると色んな神様仏様がおられることに、感嘆します。
そして気づいたのが、右上に○○国一の宮と御朱印に書かれることが多いような。
一の宮と言うぐらいですから各県に1個しかないかと思いきや何個かあったり。
今と県境が違うと考えればおかしくはないですね。
なので、一の宮について調べてみようと思いました。
さながら季節外れの夏の自由研究のようですね。
1.「一宮」が登場したきっかけは?
簡単に言うと、「一宮」については謎が多いのです。
なぜかというと、選定基準や「一宮」という社格(神社の格式)の必要性が現在の研究では分からないから。
仮説として、一宮や惣社の制度が確立したのは11世紀末~12世紀とされています。
そこで選定基準や神祇制度のキーワードとして3つあげられます。
①官国幣社制度(延暦17(798)年)
もともと8世紀初めでは、神祇官という二官八省の(律令制の制度)トップが幣帛を各社の祝部に配布していました。
これを班幣制度といいます。
しかし各地の祝部が中央に毎回行かないといけないこともあり、次第に形骸化していきました。
朝廷も財政的に厳しいので放置していたのです。
しかし、天皇の権威が強まっていく中で神祇制度の見直しが行われました。
それが、官国幣社制度。
各神社を官幣社(主要神社)と国衙社(国司が管理)に分けました。
これによって国衙と地方神社のつながりが強化されました。
②一代一度大神宝奉献(仁和4(888)年)
9世紀になると、天皇即位時に特別の宝物を奉納する制度が確立されます。
ここで奉納される神社は格式高い神社に集中しており、大神宝奉献のための使者も定められていました。
あまり書ける内容がなかったのですが、次の③につながるので入れています。
③名神大社(10世紀頃)、二十二社(永保(1081)年)
名神大社は、官幣社と国衙社の中でも「大社」というトップの地位にある神社に限られていました。
『延喜式』「神名帳」で〈名神大〉と書かれている神社が該当するとされています(『世界百科大事典』よると224社)。
農作の順調な生育と祈雨・止雨祈願のための臨時奉幣がされる神社でもあります。
その次に二十二社がさだめられました。
二十二社は簡単に言うと名神大社の中の名神です。
もうトップオブトップの神社16社+6社。
名前を見ると納得すると思います。
⚪延喜年間(898~923)
伊勢、石清水、賀茂、松尾、平野、稲荷、春日、大原野、大神、石上、大和、広瀬、龍田、住吉、丹生、貴船
⚪正暦2(991)年~
吉田、広田、北野、梅宮
⚪長徳元(995)年~
祇園、日吉
なぜ正暦2(991)年に追加されたのかというと、承平5(935)年~天慶4(941)年に承平・天慶の乱が起こったことに起因するとされています。
この乱が朝廷に与えた影響は計り知れないです。
平将門と藤原純友の東と西の同時反乱といえば有名でしょうか。
そこで平定するための祭祀が重要視されたのですね。
十六社奉幣が盛んに行われたそうです(史料未確認のため仮説)。
さておき、延喜年間の16社は圧巻ですね。
ちなみに伊勢神宮は別格扱いで名神大社には入っていません。
一宮にも入っていません。
ただ不思議なのが二十二社の中で一宮になっているのが3社しかないのです。
賀茂社と大神神社、住吉神社です。
一国にひとつの神社のみが一宮という慣例に従うと減るのも通りですね。
この3社は何でしょう、トップどころではないですね・・・
2.平安鎌倉以降の一宮はどうなる?
さて、平安時代に確立された神社の社格ですが、鎌倉時代に入ると国衙との関係が薄れていき、一宮自体も表舞台から姿を消します。
そのまま室町、戦国時代なので、平安のような祭祀は細々と続けられているものの二十二社とか一宮とかは言われなくなっていきます。
再度登場したのが時代も下った17世紀。
橘三喜という江戸中期の神道者が『一宮巡詣記』を著わしたのが再燃のきっかけです。
もともと「一宮」が吉田神道の秘書扱いでした。
橘三喜は吉田神道の門人に学んでいたのでアクセス出来る環境にあったことにも起因するとされています。
そこから19世紀の天保12(1841)年になると伴信友という国学者が『神社私考』を著わします。
そして現在の一宮研究や一宮巡礼につながっていくのです。
調べてみると一宮にもたくさんの変遷があって今に至るということが見えてきました。
さらに興味深いのが祭神!
その神社ぐらいしか祭っていないようなレアな祭神も多くて、またまとめてみようと思います。
今後神社巡りするときも多方面から見ることが出来そうで楽しみです。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
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