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終わり。のその先
前回に引き続き、村崎羯諦さんの『余命3000文字』について紹介します。
本書は26編のショート・ショートで構成された作品集です。
中でも「私は漢字が書けない」は全編を通して、一番ポジティブな話だと思います。主人公の林まい子の日常がお姉ちゃんとの関係を中心に日記形式で描かれています。
※ここからはネタバレを含みます
物語の後半でまい子とお姉ちゃんが血のつながらない姉妹であることが判明します。
「養子のくせに!」
あることがきっかけで口げんかになったまい子は姉に対してひどいことを言ってしまいます。
わだかまりを抱えたまま、1年が過ぎた頃、まい子はあの日のことを姉に謝罪します。その時にいったお姉ちゃんの台詞が今でも印象に残っています。
「確かに何も知らないままだったらずっと仲良くいられたかもしれないけど、こうして向かい合って、おたがいの目を見て、どういうことかを考えたり、感じたりしているかを伝え合うことはできなかったと思うよ」
本作はそこに至るまでの過程が丁寧に描かれています。物語は姉の言葉を受けたまい子の決意表明で締めくくられています。
「今日はここまで。終わり」という一節の後にも彼女たちの日常は続いていくのでしょう。心が温かくなるような読後感でした。
他にも夢の中で亡き親友と邂逅する「おはよう、ジョン・レノン」、コントのような軽妙さにブラックユーモアを交えた「食べログ1.8のラーメン屋」、女子高生とその父親の不倫相手との歪な関係を描いた「不倫と花火」など様々なジャンルが楽しめます。
「5分で読めて、あっと驚き、わっと泣ける」と紹介されているように、どの話も20ページ以内に収まっているので、普段あまり読書をしない方でも手に取りやすいのではないでしょうか。
村崎羯諦さんの次回作が待ち遠しいです。
見出し画像はこちらから引用しました↓
「余命3000文字」|現代小説|文学・小説|書籍|小学館 (tameshiyo.me)
余命3000文字 | 小学館 (shogakukan.co.jp)
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