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自選集:詩

35
密室で延焼する憎悪と、古戦場に揺れる花と。
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2017年6月の記事一覧

多次元の朝

多次元の朝

小さな宇宙には朝があった
全ての始まりの刻印として

空気の振動が停止した
一世一代の計りの朝

燃える恋でもしているのか
ダムが決壊したような期待があふれ出す朝

悪夢の続きを目覚めてなお見るような
冷暗室の悲鳴の朝

異邦の床で目覚めた
いつもとは違う朝と、いつもとは違う自分

仮宿の友人と迎えた
喧騒の残滓が漂っている朝

しかし、
これらの朝の中には確かに殺人犯が紛れ込んでいるのだ
それを

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こっちの世界と、あっちの世界

こっちの世界と、あっちの世界

あっちの世界では、ほとんど何もできなかったな
どんなに血を流し、身を裂く嵐を受け、混乱して道化を演じたとしても

こっちの世界では、それに比べればずっとマシだな
嘘をつかなくて済むし、だからと言って、すべてが解決したわけじゃないけど

あっちの世界では、まだ阿修羅たちが果て無き戦いを繰り広げているのかな
彼らも心の奥では気がついているから、あら探しをやめられないんじゃないか

こっちの世界でも、争

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オフィスに転がった万全な死体

オフィスに転がった万全な死体

空調が完備されたオフィスの中に、死体が転がっている
清潔で合理的なオフィスの中に、死体が転がっている
完全に慎重なオフィスの中に、死体が転がっている

叫び出す事すら許されなかった 此処では
掻き毟る事すら許されなかった 此処では

今日も仲良く、体温が失われている

僕が死んでいる 酸素の中で溺れるように
彼も死んでいる 絶望的な賭けに敗北し
彼女も死んでいる 極めて密やかな偽装工作の末

死に

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noteはじめました。過去作のご案内。

今日からnoteはじめました。更新頻度はそれほど高くないかもしれませんが、続けていきたいと思っています。
まだ作品数が少ないので、ブログで書いた過去作も置いておきます。
ブログの方は、ゲーム系の内容が中心です。小説や音楽の感想・エッセイもいくつか書いています。

短編小説:『桜は、窓の外にだけ咲く』

詩1:「蜃気楼:棚から降ってきた非難の声と、一歩だけの歩行」
詩2:「灰色の小人たち」「朝の喫茶

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