スクリプトリウムvol.3｜永井健一《2》｜詩作するオーランドー

2021年9月22日 18:06

Text｜霧とリボン

　秋風がカーテンを揺らし、スクリプトリウムにひらかれた一冊の書物のページの上を過ぎりました。

永井san_オーランドーのスケッチ

　月桂樹、楢の木、サンザシ、シダ——夏の追憶と共に、ページから、様々な植物の青々しい香りが漂ってきます。

　ひとりの少年が詩作する風景を、ひとりの画家が描きました。

2109会場_永井さま04

　本ドローイング・シリーズの題材は、ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』。
　本展にてローンチする霧とリボンのポプリブランド《Du Vert au Violet》とのコラボで発表する、オリジナルのトワル・ド・ジュイのために特別に描き下ろされました。

Script3_永井san3

　紋章のステンドグラスのある屋根部屋で詩作するオーランドー、あるいはひとつの町のような館を出て、楢の木のある丘へとむかうオーランドー。
　小説を綴る文字が菫色の描線となって、翻訳されているかのよう。

永井san_オーランドーの詩作

＊

Script3_永井san4

　文学の中の自然を写した精緻なドローイングは、自然への讃歌を湛えている一方で、詩人の神経の震えがそのまま画筆の先端に写され、自然と芸術の相克による擦過傷として、絵の具の菫色を滲ませています。

自然の中の緑と、文学の緑は違うものなのです。自然と言葉はそもそもの初めから相寄れないようです。一緒にしてしまえばお互いをめちゃめちゃに引き裂いてしまうことでしょう。
　　……ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』より｜維月楓訳

永井san_オークへ

＊

Script3_永井san5

　ポプリブランド《Du Vert au Violet｜緑色から菫色へ》にちなんで「ニガヨモギ」と「匂菫」も描いて頂き、物語の風景に重ねて。
　オーランドーの目になり観察する永井さまの誠実な筆致が小説の風景を生き生きと伝えてきます。

永井san_オーランドーの観察_ニガヨモギ

　トワル・ド・ジュイのために菫色で描かれたドローイングは、そののち鉛筆の素描や色彩が加えられ、ひとつの作品として仕立てられました。
　『オーランドー』の一枚を飾って、素敵な読書の秋をお過ごし下さい。

2109会場_永井さま04

　トワル・ド・ジュイは永井さまの原画を霧とリボンが再構成する手法で制作。後日、別記事でご紹介しますので、どうぞご期待下さい。

＊

【公開中】本記事以外の永井健一さま新作

【お知らせ】本展にてローンチする霧とリボンのポプリブランド《Du Vert au Violet》とのコラボ作品をたくさんお披露目しますので、どうぞお楽しみに！

＊

Tiny_永井san1

Tiny_永井san2

Tiny_永井san3

永井健一｜画家　→HP
大阪大学文学部美学科卒業後に作家活動を開始。個展や企画展等で作品発表をしながら、イラストレーターとしても活動している。画中の人物は、夢現に漂う叢雲の中で願いや想いを折り重ねて結晶化する。book opusとして絵画に詩や写真を織り交ぜた作品も制作している。

＊

霧とリボン｜服飾・小間物ブランド　→HP
「物語を身につけよう！」をコンセプトに、愛書家の日々を美しく彩るオリジナルの服飾品やオーガニック紅茶、小間物類を制作販売。2008年活動スタート、2015年オープンした「菫色」の色彩と世界観にこだわった直営SHOP《Private Cabinet》では、文学・アート・モードの世界を横断する展覧会を開催（現在実店舗は休業中）。会員制社交クラブ《菫色連盟》やオンライン上のアート・プロジェクト《モーヴ街》の活動も行っている。本展にてプライベート・ポプリブランド《Du Vert au Violet》ローンチ。

＊
＊
＊

00_通販対象作品