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スクリプトリウムvol.3|Du Vert au Violet|ポプリブランド設立に寄せて

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Text|霧とリボン

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 このほど、霧とリボンのポプリブランド《Du Vert au Violet|ドゥ・ヴェール・オ・ヴィオレ》をローンチします。

小壜_リード

 ブランド設立に寄せて〜香りの物語がはじまった場所
 
文|Mistress Noohl(霧とリボン主宰)

 
巡る季節の美しさを窓越しに眺めながら、菫色のポプリ室でひとりポプリの研究と実験に没頭した日々。室内香の伝統は受け継ぎつつも、理想とするポプリの世界を模索し続けてきました。

 そうして辿り着いたポプリを「プライヴェート・ポプリ」と命名。
 BGMのような室内香に対して、香りを体験したい時にボトリングされたポプリの栓を開封して、能動的に「一対一で香りと対話するポプリ」を、このほどお披露目することが叶いました。

 ポプリブランド設立のきっかけは、或るひとつの香りの記憶——

プロスペクト・コテージのお庭|英ダンジェネス(2015)

 はじまりは2015年英国ケント州ダンジェネス——
 長く敬愛してきた故デレク・ジャーマン監督の終の住処「プロスペクト・コテージ」を訪れることが叶った日のこと。
 強風で極寒の晩秋、遠まきにお庭を見ていると、護り主キース・コリンズ氏が「寒いので紅茶でもいかがですか?」と、見知らぬ私たちをコテージに招き入れて下さったのです。

 お伽話のような出来事に震えながら扉を開けた瞬間私たちを包んだのは、コリンズ氏の笑顔と温かな空気、そして一条のラヴェンダーポプリの香り——清冽な香りと熱い一杯のミルクティは、コリンズ氏から頂いた無条件の信頼と歓待の証として、こころの奥深くに刻まれ、生きる指針となって今日の日まで私たちを支えてくれています。

プロスペクト・コテージ|英ダンジェネス(2015)

 以降、日常のふとした場面で、あるいは、立ち止まって考えたい時に、あの日の菫色の香りを追想します。自分が立ってる場所はどこなのか、これから歩いてゆく道はどの道なのか——迷うたびに、あの日のポプリの香りがそっと導いてくれました。

 再会の約束が叶わぬまま、キース・コリンズ氏は2018年に監督の待つ天へと旅立ちました。しかし、ラヴェンダーポプリの香りを思い出せばいつでも、あの日のプロスペクト・コテージに棲まうコリンズ氏に会うことができるのです。

 記憶の中に、確かさを持ってしっかりと息づく香り。時空を超えて、あの日のあの場所へ、一瞬で連れて行ってくれる香り。ここにはない、記憶の中だけに存在する香りを、こころの小壜からそっと取り出しては、折に触れてゆっくりと向き合ってきました。
 
 私たちにとって大切な記憶を保存してくれる「香り」という存在。その儚き存在が持つしなやかな強さを形にしたいと思い続け、「プライヴェート・ポプリ」は生まれました。
 「一対一で香りと対話するためのポプリ」——あの日のラヴェンダーの記憶と静かに向き合う、掛け替えのない時間がブランド設立の根底に流れています。

 いつか、ラヴェンダーの想い出に捧ぐポプリを調香できる日を夢見つつ、これから美しい香りを編んでゆきたいと思います。

 ブランド名《ドゥ・ヴェール・オ・ヴィオレ|緑色から菫色へ》は、ベル・エポックの巴里に生きた詩人ルネ・ヴィヴィアンの同名散文詩集から。霧とリボンの基調色が菫色とアブサン色(緑色)の二色であることと、スミレ属やアブサン酒(ニガヨモギ)を作品モチーフや企画展テーマの中心に据えてきたことを重ねて、ブランド名としました。

ヴィヴィアン初版本_01
ルネ・ヴィヴィアン散文詩集
『Du Vert au Violet|緑色から菫色へ』初版本
(Alphonse Lemerre・パリ・1903年)
霧とリボン所蔵
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 室内香ではない、書物を紐解くように香りと対話するポプリを「プライヴェート・ポプリ」と命名。

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 敬愛する文学作品を題材に調香するブランドコンセプトを「Private Pot-Pourri Library」に込めました。

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 天然原料を1ヶ月以上熟成させたオリジナルポプリに加え、ポプリまわりのアイテムを気鋭のアーティストとのコラボレーションで発表していきます。

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Arii Momoyo Pottery & Du Vert au Violet
薬草を摘む手のポプリポット

 日々の生活の中に、香りと静かに対話するひとときを取り入れてみませんか?

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keino glass & Du Vert au Violet
ポプリ・ボンボニエール


プライヴェート・ポプリについて詳細な解説記事です

Du Vert au Violet|ポプリブランド →note
書物を紐解くように香りと対話する「プライヴェート・ポプリ」とポプリまわりのアイテムを制作販売。室内香ではない新しいスタイルのポプリを提案します。霧とリボン運営、本展にてローンチ。

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