人事トラブル相談所③「身元保証書取ってるし、何かあったら保証人に全額賠償させられるよね?!」
労務管理をするうえで重要となるものの1つに就業規則や雇用契約書があげられますが、入社時に取得する書類も同じように重要であることを実務に携わっていると感じることが多々あります。
どの企業でも、比較的取得するようにしている身元保証書について触れたいと思います。
民法改正(2020年4月)
企業に入社する際、求められることが多い書類のうちに「身元保証書」がありますが、およそ120年ぶりの民法改正に伴い、2020年4月から一部運用が変わっています。
保証期間(通常3年、定めがあれば最長5年)や通知義務、解除権などは従来どおりですが「賠償額の上限」を明記することが必要になりました。
そのため、2020年4月1日以降に従来どおりの上限の定めがない書式を使用している場合は、身元保証書そのものが無効(何かあった際、保証人に賠償請求などができない)となる可能性があります。
とはいえ、実生活において頻繁に身元保証人に賠償責任を負わせるケースはあまりお目にかかれませんが・・。
賠償額
実務者の方からすると、これまで特に気にしていなかった賠償額の設定などが出てきて、いったい幾らにするのがいいんだろうか・・・と考えると思います。過去の事例などから、身元保証人に全額の賠償が認められることはほぼないとはいえ、会社としては然るべき額を設定しておきたいところでしょう。
結論、これに対しての明確な解は無い!と思います。
(すいません・・・・汗)
が、あまりに高額すぎると身元保証人が躊躇したり、低額すぎるとリスク回避の観点から企業としてどうか問われることになるので、下記のような考え方(切り口)をもとにした組み合わせなどで検討いただければ良いと考えます。
①職種
→ 職種により高額な資金移動や融資、不動産売買、高価な現物(金、ダイヤなど)を大量に売買をする場合などは、一般的な現業や事務職とは異なる金額設定をする
②年収またはレイヤー(役職など)
→ 会社内での給与レンジまたはレイヤーなどに応じて金額設定をする(責任や権限に応じた設定)
③雇用形態(正社員、契約社員/パート)
→ 雇用形態により金額設定をする。
なお、額面記載時に「月額給与の●ヶ月分」や「入社時の●ヶ月分」などとすると、昇給時などに当初の想定金額と変わることとなり、曖昧な要素が増えるため、運用するにあたっては、明確に「●●●万円」と明記するほうがよいでしょう。
あまり細かく分けすぎると運用が煩雑になるので2-3パータンくらいにとどめておくのが賢明と思います。
なお、参考までに一般的には月額給与の12~24ヶ月分の間程度で設定されることが多いようです。
運用面のケア
上記の金額設定とは別に、運用面でよく見落としがちな部分についても併せて記載いたします。
①入社する当人が身元保証人箇所の代筆をしていないか
→ 人事側で筆跡確認と身元保証書に代筆禁止を明記し、類似している場合には確認して再度提出をさせる
②本当に身元保証人が存在しているのか
→ 身元保証人の住民票原本の提出まで義務付ける
最後になりますが、身元保証書を採用時に取得したものの、それ以降は更新をしていない企業や民法改正前の書式を今でも同様に使っている企業が散見されますので、この機会に身元保証書の整備と運用について、見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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