アブダビ駐在妻の日々 1
アブダビに来て1ヶ月と少し経つが大変濃い日々を送っている。貴重な経験なので忘れないうちに自分が感じた事、面白い出来事の数々を文字にして残す事にした。自己満足だが、アブダビに旅行される方、興味ある方の参考にもなるかもしれない。しかも60歳過ぎのアブダビ在住日本女性は希少価値だと思うので何気ない日常を残そう。1970年代1ドル360円固定相場制時代にアメリカの州ではないが端の方に住んでいたその頃の話はもっと価値があったかもしれない。今はこうやって多くの人の目に止まる可能性があり、良い時代になったと思う。
灼熱と熱中症
アブダビは5-9月が暑く、10-4月が涼しい(らしい)。外は灼熱、中は天国といったところだ。中が天国というのは、アラブ首長国連邦は、7つの首長国からなる連邦国家で、1958年に石油が発見され1970年代から独立国家となった石油リッチの富裕国で、砂漠の上に作った近代的なキラキラした街だ。高層ビルが立ち並ぶゴージャスなモールやビル群であり、屋内はエアコンはやや利きすぎの気持ち良い空間である。外は最も暑い8月で50℃になるらしい。今は7月で、今日は42℃だが、そこに湿気のせいで体感はプラス10度くらいになる。スマホでお天気41℃42℃の数字を見るとぎょっとするが、実際のところその2,3℃の差など大したことはないらしい。以前日本で、カナダ人の留学生が真冬にTシャツ一枚で過ごしていて、なぜそんなに強がるのか?と不思議に思い、寒くないの?と訊いたら、彼らに言わせるとマイナス10℃くらいでも5,6℃でも体感は変わらないと言ってた。日本の冬なんて夏みたいなもの、寒さとは、慣れなんだろうな。その体感を逆の灼熱の地で暮らす人に当てはめると、汗をかいて、暑い!と感じるのは温度ではなく、湿度のせいならしい。30から40℃位の数値はさほど重要でもないとか…その感覚はなんとなく分かっては来たが、いかんせん無理できるほどの体力も若さもない。ところが、こちらに来て、屋内生活が続き、早朝6時からプールで1時間泳いではいるが、夜どっと人々が外出する姿を見て、自分も夜遅く一人でジョッギング・ウォーキングを始めた(女性一人で外出しても大丈夫。あちこちにセキュリティガードが立っていて安全です)。昼間より気温が下がるので少し楽になるし、夜景がとてもきれいな高層ビル群の中のホテルに住んでいるので、夜出かけるのは景色を見るだけでも楽しい。そんなこんなで約1週間ほど歩くことを習慣にしていたら、ある日膝がガクガク、指が曲がらない症状が発生し愕然とした。
多分水分が足りなかったんだろう。怖い怖い。
翌日からちょっと休むことにした。そういえば、ミナという港の市場に、来てすぐに買ったアンスリウム #Andreanum というウソみたいにテカテカした赤い葉っぱが可愛い植物の状況と自分の身体の状況が似ている。お店の人が水やりは2週間に一度くらいで良いと言ってたので、その通りにしてたらどんどん萎んできて、見るも無惨な状況に!しかしバカだから、「ひょってして水あげすぎた?」と余計あげずにいたら、葉っぱがだらりと下がりだした。慌てて水あげたら復活。結局今では3日に一度くらいコップ1の水をあげている。カラカラにしてから水たっぷりの法則には当てはまらないのかな。土に水をずっと溜める事はできないのだと知った、自分の身体も同じで、想像以上に水分が奪われるんだな。これを経験し、今では小まめに水分補給しています。そして夜のジョギングは9月まで封印しました。
でも脱水症状で病院に運ばれる前に気付いて良かった。(写真はウォーキングコースのゴールにしていた、ユニークな景観のRixos Marina Hotelです)。
イスラム教の人々
アブダビはアラブ一の富裕国でオイルリッチとして知られております。エミラティ(UAEの地元民)=富裕層、白装束の男性と黒装束の女性たちは主におっとりと品のある容姿で、女性は真っ黒の衣装で頭はヒジャブを巻き、すっぽりと長袖くるぶしまで隠し、しずしずショッピングモールなどで見かける。大抵お高いブランドのバッグを抱え、ご家族で大移動されている。中にはびっくりするほどのメークバッチリのモデル級の美女が存在しております。そんなにお顔をマジマジ見れるわけではないが、お手洗いなどでヒジャブを外してらっしゃるお姿を見るとわ〜美しいという方も多い。夫のため?自分のためか、美容にもお金をかけ磨いてらっしゃる方も多い様だ。みなさん、生まれついてから金のなる木が裏庭にある潤沢な石油収入、不労所得で生活してるわけで、国内でゆったりと暮らし、お坊ちゃんの容姿にヒゲの白装束の人たちが集まってアラビアコーヒーをすすっているお姿が目に留まるか、週一のカルチャーセンターでお目にかかる上品な黒装束の奥様達くらい(同じクラスにはいないので話すことはない)。エミラティはこの国の1割くらいで他は全部移民の人たちで構成されている。イスラム教徒全体としてインド、パキスタン、スリランカ、モンゴル、東ヨーロッパなどのヒジャブ女性などと接した感想になるが、みなさん、とてもおだやかで優しい。例えば、先日夫とショッピングモールに行った時の話だ。
夫のイライラ
夫がその店の会員証の使い方についてよく理解できないので、何が疑問かを私が訊いてからカウンターの女性に尋ねた。夫も英語は出来るが、私の方が流暢なので、私は彼女から説明を受け簡単に納得した。それは英語というよりもオンラインの買い物やITのシステムについて慣れているから、うん、そういうものよね、と理解できたが、夫には他の考えがあるらしく、次第にイライラと負の感情を表してきた。周りのお客さん達もかなり私達をマジマジと見ていたし、東洋人(日本か韓国かの男性の直情でマナーのない様子は珍しいのか、人だかりという感じになってきた)。私は恥ずかしくなり、意固地に苛ついている夫を落ち着いて話せばいいのに、なんですぐこう不機嫌になるんだろう?後で説明するから此処では機嫌良くしといてくれ!と私は夫に畳み掛けようとしたが、その女性は本当に夫の話を我慢強く聞いてくれた。彼が素直になれば良いだけの話だったのだけどね。夫は自然派のおじさんなので、最低限のオンラインシステムは活用するが出来るだけ避けていたから馴染みのないことが多く、海外に出て今頃痛い目に遇ったというだけの話だ。本人が素直に気持ちよくその制度を活用出来れば良いだけだが60歳近い、モラハラ気味のIT嫌いは現代社会に馴染めず、海外でも浮きまくる。こっちも嫌気がさし、さじを投げ気味になっていた。
しかし、イスラムの彼女に教えられた。不快感を外で表すってことは相当に弱いんだよ。日々英語でも細かい事わからなかったり、文化の違いに気づかなかったり、仕事でも誤解が生じたり精神が弱ってるんだろうな。そこを私みたいに、「あんたが勝手に新しい事学ばないから悪い」と切り捨ててはいけなかったのだ。一緒に考えてあげなきゃ。私も同じ立場だとはいえ帰国子女なので、若く頭が柔らかい頃に一通り文化の違いは経験し、どんな場所で生活しようが、夫のように弱ったりはしない。そのせいで弱い人の気持ちに鈍感だった。
イスラム教の教え、六信五行
するべき行いの中に
断食
喜捨(きしゃ)
があるが、断食はラマダンで、食べれない人の気持ちを自分も体験すること、その弱さを自分の経験として取り込み共鳴共感すること。そしてきしゃは弱い人に施すこと。弱い人を喜んで助ける、貧乏な人に施すこと。本当に彼らは毎日5度もお祈りし、繰り返し繰り返し弱っている人を見つけたらすぐに助け優しい言葉をかけ、食べ物を分け与え、お金を分け与え。困った人を皆で助けましょうと健全に穏やかに暮らしている。*因みに、六信五行の信じる事、1神 2天使 3啓典 4預言者 5来世 6 天命 行うことは、1信仰告白 2礼拝 3断食 4喜捨(きしゃ)5巡礼だ。
スルー文化が一番嫌いなのに
話は戻るが、夫が怒るのは弱いからだ。それを思い出した。ワガママな振る舞いというのは、その人の感情の乱れが問題で、その人自身の問題だ。それをのさばらせていたら余計にワガママになるとは思うが、その不機嫌感情を人に見せる時点で、相当に弱っている事も事実なのだ。(まぁ常日頃穏やかな人なので、感情の乱れが高まるのはそういう事だろう)。夫の理屈としてはカスタマーセンターの人が自分の疑問に答えてないと考えたらしいが、自分が基本構造を知らないし、自分の疑問を他者に伝え切れていないし、そもそもその疑問は自分の勉強不足から来ている事に気付けてないのは、精神が弱っているからである。見捨てるのは簡単だが粘り強く教えてあげるべきだ。これに関しては、日本が面倒くさい人を簡単に切り捨てる(スルー文化)が自分は一番嫌いなのに、私も夫に対してスルーしかけていた。気付いてからは本当に申し訳なく思った。
私は弱っている人には優しくしなきゃ、と気付いた。
イスラム教の方々から毎日色んな教えを頂いている。運転手さんは、私が携帯をなくした時、どうすれば良いかよく考えてくれたし、見つかった後もあれからどうした?と毎日訊いてくれたし、会う人皆、ただすれ違うだけでも思いやり溢れる行動を取る。優しく穏やかでにこやかだ。とても学ぶことが多い。
他にも沢山あるが日常の細かすぎる事を書いたら、疲れてきたので、また後日書くことにしよう。