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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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マンガ技術から見るタコピーの世界【タコピーの原罪】

散々話題になっていたらしいタコピーの原罪を読みました。
とてもエネルギッシュで心を揺さぶる作品でした。

この記事ではなぜこんなにも引き込まれるのかをマンガ作法(画力・技術)の面から考えてみたいと思います。

今回もネタバレを含みますので、ご注意ください(7話までのネタバレになります)。
どうかご一読いただきたいものです。

ブラウザで無料で読めます。

タコピーはハッピー星人であり、宇宙にハッピーを広げるために旅をしています。

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タイザン5「タコピーの原罪」(1話, ジャンプ+) link

このかわいいタコのような見た目からタコピーという名前で呼ばれることになるわけですね。

ということでざっくり評価(7話まで)
ストーリー★★★★★
画力   ★★★★
マンガ技術★★★★

ストーリー★★★★★

ストーリーは神です。正直終わってから再評価したい気持ちもあるんですが、現状描かれている内容もこれから描かれると予想できる内容もおそろしく面白いです。

おそらくワンアイディアから始まった物語だと思います。
その構想を膨らませる設定や、それを示していく順番が非常に練られていて引き込まれます。

現状ドンドン悪い方向に事態が悪化していますが、これからサムネの煽り文を回収するのかどうかも気になります。

これは、ぼくときみの最高にハッピーな物語
タイザン5「タコピーの原罪」(1話, ジャンプ+) link

タイトルからして原罪ですから、これからタイトル回収をしてタコピーヤバいやつエピソードがあると思うんですが、さらにもう一歩読後感が良くなるハッピーエンドを期待しています。

全然設定とかに触れていないんですけど、本編を読んでもらいたいからです。
あと、ツイッターなんかで考察している方の方がよっぽど的を得た考察をしてらっしゃるのでそちらに譲ろうと思います。


画力   ★★★★

そしてそれを表現するマンガ技術や画力も備わっています。
さらに「チェンソーマン」の藤本タツキ先生のような映像的なオシャレさのある表現も豊富です。

画力に関しては粗い部分もありますが、間違いなく上手いです。

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タイザン5「タコピーの原罪」(1話, ジャンプ+) link

読んだ方はご存知でしょうが、まりなちゃんの紹介のコマです。
ここで考えたいのは魚眼パースを使っている事ですね。
まりなちゃんはいじめっ子で自己中心的です。クラスの中心人物でもあります。
そういった個性を魚眼パースでも表しているんですね。こういう構図や効果を適切に使用できるというのがタイザン5先生の凄いところです。

めちゃくちゃ深読みすると、まりなちゃんの影響力か気持ちの大きさを表しているのかな?と思いました。
魚眼パースは、中心(自分)が大きくなり周り(同級生)が小さくなる構図です。
ではしずかちゃんはどうなっているでしょうか?
まりなちゃんだけにそういう表現をしているならこじ付けも良い所ですよね。
しずかちゃんの紹介のコマはこちら。

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タイザン5「タコピーの原罪」(1話, ジャンプ+) link

魚眼パースっぽく見えて実は逆魚眼パースになっています。まず逆魚眼パースっていうのも初めて見ました。
中心が小さく、周りが大きく見える効果です。
しずかちゃんの影響力(気持ち)の小ささと対応してますね!

これは凄いですよ!!
表現を完全に自分の物にして、他者に伝える道具として使いこなしているんです。一流の先生がやっている事と全く同じですし、芸術性の高い表現だと思います。

ちなみにダメ押ししてみます。

学校ではイジメられているので逆魚眼パースで中心にしずかちゃんを置きます。

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タイザン5「タコピーの原罪」(2話, ジャンプ+) link

からかわれている時も当然逆魚眼パースですね。

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タイザン5「タコピーの原罪」(2話, ジャンプ+) link

宿題を答えられたときは、影響力(気持ち)が大きくなっているので、魚眼パースです。

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タイザン5「タコピーの原罪」(2話, ジャンプ+) link

凄すぎです。

強いて言うなら私は、影響力(気持ち)の大きさを表していると感じましたけど、もっと適切な言葉があるかもしれません。
この辺は考察班にお願いしたい所。


他にも画力の面で触れなければいけない点に表情の繊細さがあります。

上の画像も中心にいる人物の感情がしっかりと表情から読み取れるからこそ出来ている表現なんですけど、他のコマも素晴らしいです。

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タイザン5「タコピーの原罪」(1話, ジャンプ+) link
著者が13, 18, 27, 28項から抜粋して掲載。

無理解に対する軽蔑、信頼と安心と幸福、希望、絶望。
そういった単純な喜怒哀楽以外の表情の解像度がとてつもなく高いのが分かります。

最近表情に関する本を読んだばかりで、そういうアンテナが敏感なのにまったく違和感が無いのは驚きしかありません。
このレベルはジャンプ作家でも相当上位だと思います。

ちなみに読んだ本は記事の一番下にリンクを貼っておきます。


マンガ技術★★★★

コマ割りの面でも紹介したい表現があります。

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タイザン5「タコピーの原罪」(2話, ジャンプ+) link

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タイザン5「タコピーの原罪」(7話, ジャンプ+) link

ツイッターでもたくさんの方が指摘していたセルフオマージュ?です。

これを簡単に説明すると
上は、まりなちゃん→タコピー(変身中)
下は、まりなの母親→タコピー(変身中)です。

ツイッターでは文字数の関係でこれ以上言及していないように見えましたが、ただ同じコマ割りを使っているだけではありません。
意味があるんですね。

どちらもタコピーが殴られている事が重要で、母親に殴られた時にまりなちゃんに殴られた時の事を思い出しているから同じ構図で殴られているんですね。

タコピーは、初めイジメを理解できていません。それどころかハッピー以外の感情を知らないとさえ思えるのです。
2話でループを繰り返す動機になっているのがその無知なのです。

そして画像の通り変身したタコピーが殴られ、初めて恐怖と悪意を感じます。

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タイザン5「タコピーの原罪」(2話, ジャンプ+) link

このまりなちゃん→タコピー(変身中)で恐怖を知ったからこそ、母親から殴られた時にまりなちゃん本人も殴られていた事をタコピーが想像できるわけです。
これは第1話のタコピーであれば想像できなかった感情なので、タコピー自身の成長があったからこその気づきな訳です。

さらに飾られたたくさんの写真から家族に幸せな日々があったことを想像します。

まりなちゃん本人も殴られていて悲しい気持ちだった事、
幸せだった家族からまりなちゃんを奪い母親も悲しい気持ちである事、
タコピーが全てを想像できるようになったから懺悔と後悔が出来るのです。

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タイザン5「タコピーの原罪」(7話, ジャンプ+) link

これも鏡に映るまりなちゃんに謝っている絵になっていて、すごくおしゃれです。

ちなみに私の解釈は、
タコピーは母親にバレたと思っている。
母親はタコピーを別人だと気づいているです。
母親の解釈は8話以降で変わるかもしれません。
でもどちらかと言えば、別人だと気づいているんじゃないかと思います。

ただ肯定してくれる都合の良い娘を求めてるクズ親説もまだ否定は出来ないんですけど、以下の事が気になります。
気付いていないならずっとキレたままの感情で良いような気もするし、後半の縋る様な語りでの写真のカットは幸せだった時の写真だからです。

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タイザン5「タコピーの原罪」(7話, ジャンプ+) link

もしただ肯定してくれる都合の良い娘を求めてるのならば、家庭が上手くいかなくなっても母親の味方をしてくれている時のまりなちゃんを背景にした方がより具体的な表現になって良い気がするんですよね。
本編にピッタリ該当する描写が無いので理由として弱いですけどね。

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タイザン5「タコピーの原罪」(2話, ジャンプ+) link

引用するにも母親を肯定するシーンがこれしかないので、使うならここ。ここ以外の肯定するシーンを創作しても良いですが、それをせずに写真を使っている理由は気づいているからだと思うんですよね。

タイザン5先生は、自分の表現したいことを徹底的に分析して、それを伝える為に手法を正しく選ぶことが出来ています。
だからこそ母親は別人だと気づいているんじゃないかなぁ、と。

金曜日に8話が更新されるので、答え合わせは金曜日!


さいごに

今回ツイッターなどでひたすらバズっているタコピーを画力・マンガ技術の面から読んでみました。
ストーリーのインパクトだけでバズっている訳ではなく、しっかりとマッチした手法や技術があるからこそ読者への訴求力が強くなっていると思える傑作だと伝われば幸いです。

タコピーの成長に注目すると序盤のタコピーの行動が無知によるものだと分かるのでもし良かったらその視点でもう一度読み返して見てください。

そして、成長したタコピーと闇落ちしたしずかちゃんの今後に目が離せない展開になっています。

ジャンプ+の連載は初動のアクセス数で作者への報酬が変わるそうなので、ぜひ更新日に読んで作者を応援しましょう!
コミックスも初日が良いみたいですよ!

最後まで読んでくださってありがとうございました!
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【最近読んだ表情の本】

読み放題に入っている作品。ラフ画だが、惹き付けられる表情だらけで凄い。表情が顔だけで無いことなども勉強できる一冊。


しっかりペン入れしてあり、デフォルメした表情にフォーカスした一冊。こちらの方が評価が高いのは分かりやすいからかも知れない。


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