ティールで「選挙」を戦ってみた(導入編)
こんにちは。「選挙」のボランティア組織をホラクラシー(ティール)で運営することになりました。今回は、その背景・経緯について書いてみました。
松浦貴昌のこと。松浦貴昌と僕との関係
早速ですが、親しい友だちの 松浦貴昌 が、4月の統一地方選挙を念頭に、東京都港区議を目指して政治活動を開始しています。
その応援をティール組織の考え方・知見を用いて進めているよ、というのがこのお話です。
初回では、なぜティール組織の考え方を導入したのか(せざるを得なかった切実な理由)をお伝えしたいと思います。
ティール組織に関しては、詳しく説明いたしませんので、僕がホラクラシーを実践している(教えてもらっている) Natural Organizaions Lab.の吉原史郎のブログ「経営の新潮流」を御覧ください。
まず、まっつんこと 松浦貴昌 とは、共に教育NPOブラストビートを運営し、また僕と妻との結婚の証人でもあり、公私共に深い関係です。数年前から、社会人大学生として働きながら教員免許を取得するなど、公教育に対しても問題意識や具体的な行動を進めていましたが、そのような中で、政治の世界から教育をどうにかしたいと決意を固めたようです。ティール組織に関心のある方は、U理論などの解説記事で彼もブログ「松の盆栽」を訪れた人もいるのではないでしょうか。
ティール導入までのチーム松浦
ここから、本題です。
12月上旬にキックオフが行われ、主に教育分野で 松浦貴昌 と協働してきた仲間が10人ほど集まりました。しかしながら、その後、2月にかけて、次第に活動は混乱と低迷の色を刻していきました。原因は様々です。集まったメンバーは、お互いに全員が知り合いというわけではなく、チームビルディング不足もありました。さらに、ティール界隈で俗に言われる「グリーンの罠」にどっぷりハマっていたという点も大きいと感じました。
「グリーンの罠」とは、簡潔に定義すると、NPOやボランティア組織などフラットな組織(グリーン組織)で陥りがちな罠のことを指す造語です。組織内でのコンセンサスを得ることにコストがかかりすぎ、肝心の活動そのものの量が落ちたり、スピードが遅くなるといったことが一例としてあげられます。短期間に具体的な目標を達成するという点で、この罠にはまると、指揮命令系統がしっかりと定められている一般的な組織(オレンジ組織)よりも、グリーン組織は劣ってしまうことになります。
選挙を応援しようという組織、特に職業政治家ではない新人がはじめての選挙に望む場合の組織の多くはグリーン組織と思います。
僕ら 松浦貴昌 のチームもそうでした。
最初の1ヶ月は、「なぜ政治という手段なのか?」「区議になったあとに作りたい世界は何か?」といったやりとりから、具体的なタスクの話など、様々な抽象度の異なるトピックがFacebook Messengerのグループで起こりました。それに対して、対話の場を作る、交通整理をする、Slack等のメンバー間のコミュニケーションの方法などを改善する、といった取り組みが、様々な人から自主的な動きとして起こりました。しかし、最後が決めきれない。独裁的に「Slackに移行しましょう」といった意思決定や指示をする一歩手前までしかいけないわけです。
その間に、それぞれが他のことで忙しくなるなど、1月中旬の段階では、Messengerのグループの投稿も殆どなくなっていました。
もちろん、その間にまったく動きが無かったわけではありません。一番若いメンバーがイニシアティブをとってより若い学生たちを組織し、松浦と共に駅頭に立つなど、他メンバーとのコンセンサスや調整がなくとも自発的に動けることを示してくれました。
ティール導入を決めた理由
僕もその頃は、オフライン等でそれなりの動きは起きているのだろうと思っていました。
それでも心配だったので、1月下旬に松浦に電話をしたところ、だいぶまずい状況ということが分かりました。
松浦は仕事と両立して活動しなくてはなりません。育児も積極的です。子供を寝かしつけてから出かけ、終電近くまで駅前に立ち、連日睡眠時間も慢性的に不足しているとのこと。そのような中で、駅頭などの必要最低限(本人が行わないと意義が殆ど無い)の活動で手一杯。
全体を把握して戦略的に動きを考える心身の余裕が無く、手伝いたいと声をかけてくれる人にもきちんと対応できていない状況が分かりました。
このような状況の中でホラクラシーの導入を決めました。ホラクラシーをはじめ、ティールは、短期間での成果を挙げるのには適していない面があります。また、ティールの実践は人間が厳しく問われるものです。拙速で動くと、メンバー間のこれまでの信頼にもダメージが生まれるような副作用もあり、当初、選挙には親和性が低いと考えていました。
しかしながら、この状況です。
・グリーンの罠を脱し、それぞれがコンセンサスを必要とせずに自律的に活動することができる環境を作ること
・自律的に活動することが、全体の目的達成にもつながる仕組みを作ること
・自律した活動同士の接点をうまくデザインすること
それらが必要とされていました。そして、僕は実践を通してホラクラシーがそれを実現することを確信していました。やらないよりはやったほうがいい、そう思ったのです。
そして何より、キックオフに集まったメンバーは松浦のかけがえのない仲間たちです。選挙の結果いかんに関わらず、それ以降も共に良い社会を作っていく仲間の中で「動きたいのにうまく動けなかった」という罪悪感が生まれることは不本意だということ。選挙に関わらず、このメンバーでよい活動のアソシエーションを創っていこう、それはとても意義深いことだ、という考えを松浦とともにし、ティールで選挙を戦うことになりました。(つづく)
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