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脳食いアメーバ、生息域が拡大中



どこかの老舗旅館が、大浴場のお湯を十分なサイクルで入れ替えていないということで、保健局から処分を受けたらしい。それで思い出したのが、脳食いアメーバのニュースで、これは致死率90%以上と言われているものだ。

衛生管理が甘いプールやお風呂、淀んだ池、湖に入ることで、感染の可能性が生まれる。鼻の粘膜にアメーバが付いてしまったら、感染から死亡まで1週間であり、初見だけでは発見は困難だという。

脳食いアメーバの主なものは、バラムチア・マンドリルリスやネグレリア・フォーレリ(日本ではフォーラー・ネグレリア:Fowler - Naegleria )
が正式名とされている。河川や湖沼、温泉等の淡水に生息し、水温26度以上になると活性化し、25~35度くらいの温かい水を好む。

人には温度の高い淡水での遊泳によって感染し、鼻から体内に侵入して脳に到達する。原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)は感染から4日~1週間程の潜伏期間の後、発症すると発熱や悪寒、頭痛や嘔吐を引き起こして、意識が混濁して発症からわずか10日あまりの短い期間で死に至るという怖い感染だ。

感染してもすぐに原発性アメーバ性髄膜脳炎を起こすということではないにしても、アメーバは鼻や皮膚の傷口から体内に入り、最終的には血流に乗って脳に到達。「肉芽腫性アメーバ脳炎(GAE)」と呼ばれる症状を引き起こす。ただ患者が出ても、症状の原因が究明しにくく検査をしている間に命が奪われてしまう。

発症したら致死率90%と恐れられているアメーバ。治療法はないのか。
これまでの例では尿路感染症治療薬であるニトロキソリンが効果をしめしたことを、アメリカの米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医療センターが報告している。

PAMが生じるのはまれなことだが、PAMを引き起こすアメーバが淡水にいるのは普通のことなのだ。日本での感染例は非常に少ないけれど、これまでに助かった人はいないという。

ネグレリア自体は、ヒトの脳を食べるつもりがないことかもしれない。このアメーバの好物はもっと小さな獲物で、本来は淡水域をさまよいながら、微生物をむさぼり食う。

けれども、そんな淡水域で誰かの鼻に水が入ると、アメーバは脳に侵入して脳組織を食べはじめ、原発性アメーバ性脳髄膜炎と呼ばれる疾患を引き起こす。脳の膨張にともなって発熱、吐き気の症状が現れ、ついで発作と幻覚が生じる。死亡までの期間は平均で5日。致死率は97パーセントにのぼる。

ここで気をつけたいのは温度がぬるく感じる淡水で泳がないこと。また温水プールや温泉でも鼻を湯にはつけないこと

処理剤や消毒薬を使っている施設では、水中にネグレリアは見つからないと人々は期待するけれど、その処理の方法は場所によって異なる。特にウォーターパークはアトラクションを運営するため、さまざまな水源の水に頼る場合が多いので危険性がより高まる

ただ、そうした水源の水を飲んでも感染のリスクはない。さらに言うと、鼻を水につけづに泳いでも比較的安全だ。脅威となるには、フォーラーネグレリアがいる水の飛沫が、鼻に入る必要がある。極めてまれなケースだけれど、そこで鼻腔に沿った粘膜に足がかりを見つけ、嗅神経に沿って進み、脳に侵入する。

世界の気温上昇によって生息範囲は拡大し続けると予想されている。これからの夏、プールや温泉、ウォーターパークで感染しないため鼻腔の粘膜を水から護ることが必要だ。

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日本では寄生虫学が医療の世界から外されつつある。既に赤痢アメーバの検査にしても、検査出来る機関も、そして検査技師も少なくなった。余談にはなるが、検査技師養成校でのカリキュラムにも医動物(寄生虫学)がなくなったということも追記しておきたい。


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