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大学教員の実態:お金編〜兼業〜

前回は大学教員のお給料事情を紹介した。

今回は大学教員の収入を大きく左右する「兼業」について話してみよう。
かっこよく兼業と言っているが,要するにバイト,副業である。
大学教員によっては,副業の収入の方が本業を上回っているようなケースもある。
では,大学教員はどのような兼業を行っているのだろうか。

非常勤講師

最もポピュラーなものは他大学の非常勤講師だろう。非常勤講師は大学教員の兼業として大学側からも認められやすいこともあり,多くの教員は非常勤講師をやっている。やらないと食っていけない,という人たちもいる。

ただ,大学によっては兼業制限があり非常勤講師に出ることを認めない,なんなら兼業は一切認めない,というところもあるようだ。自分の大学では非常勤講師を雇っているのに,である。
私も一時期非常勤講師をやっていたが現在はやっていない。誘われたこともあったが,遠方だったり1コマだけだったりとコスパが悪かったからである。

非常勤講師の時給は大体1コマ1万円前後だろうか。集中講義でやるとまとまって入るので嬉しいものだが,コマ数が少なく遠方だったりして,毎週講義という形ならコスパが悪く感じてしまうのである。

非常勤講師は基本的には公募に出ることはなく,大学間の閉じられたネットワークで候補者を探すことが多い。たまにJREC-INで出ているが,そういうところは本当につてがないのだろう。

講演会・研修講師

もう一つポピュラーなものが講演会や研修講師だ。これには様々なところからお呼びがかかる。依頼先は民間企業はもちろん,自治体や他大学のFDなどさまざまである。

私の経験からだけだが,講演会や研修講師の謝金は依頼先や時間数によってかなり幅がある。また,教授なのか准教授なのか,はたまた講師なのかで謝金の額が変わることもある。職位で講演内容が高尚になるなんて保証はないのにね,なんて思っていることはここだけの話しだ。

金額的には90分程度で安いところでは1万円程度,いいところでは言い値というところもある,というか,いくらからなら講演で喋りますよ,という人もいる。といっても,そのような言い値を聞いてくれる(あるいは設定している)のはテレビに出ていたり書籍を売りまくっているようなタレント教員ぐらいかもしれない。
私の場合,最高額でも90分で3万円だったと思う。
当然,知名度が上がるほど値段も上がるし声もかかりやすくなる。そうなると,本業収入よりも講演会や研修講師の収入の方が多くなっていくということも十分にあり得る。羨ましい限りである。

テレビ出演・文筆業

もう一つはテレビにコメンテーターやご意見番として出演したり,専門書や一般向けの書籍などを販売する文筆活動である。テレビ出演に関してはもちろん知名度やコネクションが必要である。上記の講演会であったり,書籍を販売することで知名度を挙げたりコネクションを作っていくことになるのだろう。
大学的にも教員がテレビに出たりメディア取材を受けたりすると大学の宣伝にもなるので非常にありがたがられるようである。実際にテレビにレギュラー出演している教員と一緒に働いたことがあるが,学生からの人気も高かったし入学希望者を増やすことにも繋がっているのだろう。特にバラエティなんかに出たりすると,視聴率もそこそこ良く視聴者の年齢層も大学生であることが多かったりするので,そのような教員の知名度は高くなる。ただし,一部には客寄せパンダ化してしまっている教員もおり,本務よりもテレビ出演を優先する傾向があり,まともな研究業績が出せなくなっている人もいる。そういう人は妬みも含めただろうが,内部から「タレント教員」と揶揄されることもある。

文筆業に関しては,大学教員と言えば書籍出版をして印税をがっぽり稼いでいるというイメージを持っている人もいるかもしれないが,そんな人はごく一握りの人たちだけだ。なんなら,業績や昇進のために自費出版をして売れずに研究室の書棚に山積みになっているというケースだってあるわけで,そのような場合は稼ぐどころか赤字である。

その他

その他の兼業としては,起業や自営業で専門分野の知見・技術を活かしたビジネスを行うことである。国公立大学は一般的に副業として営利企業を自ら営むことを許可していないので,起業や自営業については私立大学の教員が該当することが多い。例えば,私立大学の医者はクリニックを開業していることもあるが,国公立大学の医者はそうしたことができないため,民間の病院に嘱託医や非常勤医師として勤務している場合が多い(時給はめっちゃ高いらしいが,開業している方がよっぽど儲かるらしい)。
こちらも,副収入が本業収入を上回るようなことは十分にあり得る。

まとめ

今回は大学教員の収入のもう一つの柱として様々な兼業があることを紹介した。上述したように,場合によっては兼業から得る収入が本業に匹敵するあるいは上回るようなケースもある。本業の収入も決して少ないわけではない(高いわけでもない)が,それが倍増する可能性があるのは大学教員になることのメリットでもあるだろう。また,そうしたことに費やす自由な時間が多い(あるいは柔軟な勤務が可能である)こともまたメリットと言えるかもしれない。お金を稼いで知名度も上がれば自尊心や自己顕示欲だって満たされるかもしれない。とはいえ,兼業をやってお金を稼げば当然本業に費やすことができる時間が減るし,日常生活も忙しくはなる。また,大学の規定によって兼業に様々な規制がかかっている場合もある。そのため,私のようなお金は欲しいけれど忙しいのは嫌だから兼業はしないという人や,兼業したいけれど規定上できないという人もいる。そういった事情も含めると大学教員の総収入はかなり幅のあるものと言えるだろう。

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