見出し画像

【2023年3・4月号】映画感想メモ(ベイビーわるきゅーれ、エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス)

※ 本記事の内容は、あらすじの解説やネタバレを目的としたものではありませんが、感想を述べるため、一部のシーンについて言及することがあります。映画をまだご覧になっていない方は、予めご了承ください。

【1】 アポカリプト(2006)


マヤ文明を舞台にする作品。超人的な力を有するヒーロー作品以外で、部族の争いを舞台にする映画は実はあまり無く、本作のリアルさとナチュラルさが好きでした。なので、個人的にはその珍しさは勿論のこと、作品としてもクオリティが非常に高かったので、楽しむことが出来ました、かなり映像の生々しさはありましたが、、。「走る」って凄くシンプルな動作だけれど、その表情とか、あるいは少し大袈裟な手の振りとか、その工夫の仕方で大きく作品の質が変わりますよね。本作品においてもその鬼気迫る臨場感が感じられました。日本のドラマとかで見るジャニーズの走り方も、そのカッコよさを演出するために、統一したフォームがあるような気がします。


【2】 ブラッドシンプル ザ・スリラー(1999)


大ファンのコーエン兄弟のデビュー作品。事の発端はあなたの浮気だよね(^_^;)と思いつつ、各々の勘違いによって思惑が少しずつズレていき、お互いの過ちが絡み合い、深みにハマっていく、何とも悲しい作品です。僕たちも普段過ごしている中で、あれが1秒遅かったらとか、あの場所にあのタイミングで行かなければとか、そのような時の定めに対する感情を抱くことがあるますよね。全てには意味があると信じ、受け止めていくしかないのか。


【3】 ビッグ・リボウスキ(1998)


『ブラッドシンプル ザ・スリラー』に続き、再びコーエン兄弟の作品。ユニークなキャラクターが沢山登場するブラックユーモアたっぷりの本作品で、詳しくは言えないですが、途中デュードが夢想するシーンのネジが外れていて大好きです。後述の『シリアスマン』にも関係しますが、コーエン兄弟の作品は定番の逆を敢えて採用することで、その唯一無二のポジションを獲得したように思います。だからこそ、万人受けする作品とは言えないのかもしれないけれど、一定の層に深く刺さる映画が誕生するんだろうな。


【4】 ベイビーわるきゅーれ(2021)


個人的に今月1位の作品です。ユニークなキャラクター設定とアクションシーンのレベルの高さに驚きます。あり得ない設定だけれど、東京の日常に違和感なく溶け込む表現にも惹かれます。監督・脚本を担う阪元監督は1996年生まれで、僕とあまり年齢が変わらず、数々の賞を受賞しており、刺激を貰います。主演の伊澤さん、髙石さんもこれから更に活躍する俳優さんだと思うので、応援したいと思います。まず、『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』を観に行きましょ。


【5】 東京ゴッドファーザーズ(2003)


今敏監督の独特な色彩が好きです。クリスマスシーズンの映画ですが、その要素を全面には出さないものの、ポイントで入れていくあたりが非常にお洒落だなと思います。ギン、ハナ、ミユキが日頃から近くに居るお互いの存在を大切に思い合っていたからこそ、生まれた物語ではないでしょうか。「人間を人間として見る」、つまりざっくりと数字でマクロに人間を語ることには気を付けることを、人事領域に従事する身として僕自身意識しています。


【6】 シリアスマン(2009)


みたびコーエン兄弟の作品、今月三連発です。映画は基本的に①ハッピー→トラブル(絶望)→ハッピーエンドか、②ハッピー→トラブル(絶望)、の「落差」を利用した展開が多い中で、下がり続けるという新しい視点、試みです。この映画で起こる不幸って、多くは人との繋がりの中で生まれており、人間の悩みの9割は人間関係、と言われる所以が分かるような気がしますね、、。


【7】 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022)


第95回アカデミー賞作品賞を受賞した本作品。これまたブラックユーモアたっぷりで、劇中に何度か不意に笑ってしまうことがありました。主演のミシェル・ヨーさんは以前から知っているのですが、多分最初に観たのはドラマ『エージェント・オブ・シールド』かなと。作品を通して、毎日ポジティブなことだけではないし、コンプレックスだって沢山あるけれど、敢えて別人になりたいなとは思わないことを改めて感じました。良いもの悪いもの全てひっくるめて、今の環境、境遇全てに感謝したいと思います。映画はやっぱり答えをくれるものではなく、問いをくれる芸術だから好きなんですよね。勿論解説を見るのもいいとは思うけれど、まずは鑑賞後にじっくり自分で考えたり、ノーインプットで友人と感じたことを共有することが大切だと思います。少なくとも日本は感じた抽象的な感覚をアウトプットする教育が基本的にあまりなされていないし、ChatGPTの出現でまた大きく変化しますからね。


【8】整形水(2020)


ホラー過ぎる、しっかりホラーです(^_^;)。しかし、1つ1つの展開や表現に意図があり、「ルッキズム」を含む社会問題への問いかけが感じられます。それは、単に「外見に執着し過ぎては危険だよ」というメッセージに留まらないのではないでしょうか。見た目に影響がある病気を持つ僕としても、気持ちがよく分かるシーンが沢山ありました。今の時代、男性もスキンケアやコスメに関心を持つ人が多くなり、多様性の文脈で外見にどれだけ投資をするかは勿論人それぞれですが、外見磨きへの関心の総量は上がっているように思います。最近パリコレのランウェイの動画を観て、あることを感じました。それは、人間の外見は十人十色で全てが素晴らしいことは真理で、重要なことは自分の外見の特徴(コンプレックスを含む)を理解し、それを上手に活かすこと、ということです。パリコレに出演するモデルはスタイルが皆さん良いわけですが、その骨格、顔の形、肌の色、部位の位置および大きさ、そして総じて醸し出す雰囲気は全く異なります。出演者は皆さん、自分の特徴を理解し、コンプレックスも含めて自分の魅力が最大限表現されるようにメイクやファッションを考えているので、その人にしか出せないオーラがあります。そこには上下の順位というより、オリジナリティによる魅力を感じました。僕も昔から足が短く、下半身の骨格が全体的にゴツい傾向にあったことにコンプレックスを感じていたのですが、ワイドパンツを履くことで自分に自信が出たので、大切なことは自分を知り、うまくプロデュースすることかなと思っています。


その他鑑賞映画

【9】コンティニュー(2021)
【10】ハナミズキ(2010)
【11】トラスト・ミー(1990)
【12】エリン・ブロコビッチ(2000)
【13】RUN/ラン(2020)
【14】THE GUILTY/ギルティ(2018)
【15】孤狼の血 LEVEL2(2021)
【16】ウィンターズ・ボーン(2010)
【17】トラジディ・ガールズ(2018)
【18】スマイル(2022)
【19】スパイラル:ソウ オールリセット(2021)

*2023年1・2月号の記事(チェックお願いします!)


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?