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ジェンダー平等推進に向けたアクション①〜言語表現をニュートラルに変え、ノンバイナリーの人権を尊重しよう〜

[基本情報]#英語 #スペイン語 #人権  #ジェンダーニュートラル #ノンバイナリー  

英語でも、男性名詞と女性名詞の存在する言語でも、最近では、男性でも女性でもないと感じる「ノンバイナリー(non-binary)」な人びとの存在と彼らの権利を尊重するために、ジェンダーニュートラルな表現が使われるようになってきました。例えば、英語でもスペイン語でも、代名詞をどう使うべきか議論があり、ニュートラルな新しい表現を使う若者も増えています。

言語に現れるジェンダー平等推進に向けたアクションについて、解説していきます。

言語学者や哲学者の間で、様々な議論がある

スペイン語では、「彼ら(英語のthey)」という代名詞について、複数の男性なら「ellos」、複数の女性なら「ellas」、混合している場合は「ellos」と使うのが従来の活用でした。

これが、男性名詞の語尾「o」女性名詞の語尾「a」、ニュートラルにする際には「e」「@」「x」を使おう、という動きがあります。つまり、「彼ら」という場合に「elles」「ell@s」「ellxs」という新しい単語が生まれています。

同様に、「みんな(英語のeverybody)」も同じです。複数の男性には「todos」複数の女性には「todas」と使っていましたが、「todes」「tod@s」「todxs」と使うようになっています

「@」や「x」については、すでに定着している表現ですが、「e」の起用に関して、言語学者・哲学者から様々な意見が出ています。

言語学者や詩人は、言語がニーズに合わせて変化するには、まずは私たちの意識が浸透することが重要だと語ります。

「マルクス主義者である私は、左翼の人間として、まず、事実上の変化を達成し、具体的な行動を通じて集団を正当化しなければならないと考えます。言語は、理想的な武器ですが、使い方を押し付けようとすると、効果よりも誤解を生む可能性があります。真意を理解する準備ができていない社会では、多くの問題を引き起こす可能性があります。」(スペイン の詩人フアン・フェルナンデス・リベロ)

トランスジェンダー支援団体の意見

ノンバイナリーな(男性でも女性でもないと感じる)セクシャルを持つ人の権利を尊重するためには、男性と女性をはっきりと区別するような呼び方をやめる必要がある、という議論が当事者団体から出ています。

トランスジェンダーを支援するNGOのソーシャルワーカーは、言語の問題を次のように語ります。彼らの存在を「見えない存在(=Invisibility)」として扱うことに疑問を呈しています

「自分には性別がないと感じている人もいるし、同時に生物学的には男性・女性であることを経験している人や、流動的に自分の性別を決めて生きている人もいる。彼らが辞書に求めていることは、ジェンダーニュートラルな主語を指す代名詞「elle」、語尾の「-e」を新しい表現として追加することです。」(スペイン・マドリッドを拠点とするLGBT+支援団体のフンダシオン・ダニエラ)

名詞だけではなく、代名詞もニュートラルに

英語の場合も、「They」や「Them」の使用が進んでいます。本記事では、次のように当事者の意見として、アメリカの俳優兼モデルのボビー・サルボア・メネズが紹介されています。流動的な性別を好むノンバイナリーの代表的な例です。

より親密な真の人間関係を築きたい。だから、勇気を出して(They, Themと呼ぶように親族や友人に)伝えたのです。その日に着ている服や髪型によって、代名詞は変わります。つまり私は、毎日性別を間違われているというわけです。間違える人の多くは顔見知りでないことがほとんどですが、中には、職場の同僚が誤って『She』と使うことも。こうした経験が積み重なると、正直、精神的に疲れてしまうこともありますね」(アメリカの俳優兼モデルのボビー・サルボア・メネズ)

イギリスとアメリカでは、2015年に一部の新聞に「They」が導入されているようです。そして、アメリカ英語辞典の『ウェブスター辞典』には、ノンバイナリーの人を指す「単数の三人称代名詞」として2019年9月に「They」が追加されました

日本語の場合、「ちゃん」「くん」も要注意

当事者団体のソーシャルワーカーの懸念は、「子どもたちが、自分のアイデンティティに不安をもたないようにな表現で接するべき」だと指摘しています。

こう考えると、日本語で、子どもや年下の人に対して使う、「〜ちゃん」「〜くん」などの表現も違和感を感じるノンバイナリーな子どもたちがいるかも知れません

「〜さん」はとてもニュートラルな呼称ですが、呼び方を変えたい場合は、最初に「何と呼んで欲しいですか?」と本人に確認するのが一番いい方法でしょう

日本語も「平仮名」で表すとジェンダーニュートラル?

日本のでは、ジェンダー平等を意識したわかりやすい変化としては、以前まで女性を看護婦(かんごふ)、男性を看護士(かんごし)として区別していましたが、2001年に「保健婦助産婦看護婦法」が「保健師助産師看護師法」に改定されたことにより、2002年3月から男女ともに「看護師」という名称に統一されました。

これはだいぶ定着したように思いますが、他の表現はどうでしょうか?

「家政婦」という表現については、女性を前提とした職業だったため「婦」が使われていますが、現在はもちろん男性も担うことから「家事代行」「ハウスキーパー」などとニュートラルな表現を使うべきでしょう。

また、「主婦」と「主夫」は同じ音ですが、「主ふ」と書くことで、どちらの意味にも使えます。これは、最近、友人が投稿しているのをみて、ハッとしたことです。偶然にも同じ音の場合は、平仮名を使うことで、ジェンダーニュートラルにできるかもしれません。

まとめ

ジェンダー平等を意識した表現を徹底するには、男女の職業差別の防止だけではなく、ノンバイナリーな人々を尊重することが重要です。

もし適切な表現がなえれば、それを認識した上で、新しい単語を作ることも、私たちの社会・文化を発展させていく1つの方法になります。思いついたこと、発見したことをみんなで共有していくのが、まず最初の一歩になると考えます。

しかし、まずは私たちの意識を変えることが大切です。相手がどう感じるかを想像し、質問できるようであれば、相手に確認しながら、適切な表現をすることを目指していきましょう。

Social Connection for Human Rights/ 鈴木 真代


<参考記事>
El ESPAÑOL,La lengua no tiene sexo: "Elle está cansade" (2017年6月18日)

VOGUE, "あなたはどう呼ばれたい? 多様性時代の代名詞考察。"(2020年3月29日)

<その他の類似した記事>
wired, "「彼」でも「彼女」でもない新しい言葉のパワー ジェンダーニュートラルな代名詞が社会を変える"(2019年11月19日配信) (スウェーデン語のhenに関する記事)

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