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箱書&ブレストを使いこなす子どもたち

シナリオ・センターでは、『一億総シナリオライター化』という創設者新井一の理念を形にすべく、2010年から『一億人のシナリオ。』プロジェクトを実施。
『考える部屋』1期生は、6月に1年間の集大成となる大発表会を実施。これで修了と思いきや、シーズン2が始まりました。

■『考える部屋』シーズン2がはじまった

1期生の『考える部屋』修了3ヶ月ほど前、ふっと思いました。
「『考える部屋』は、1年で修了と思っていたけれど、もっとやりたい子もいるんじゃないのだろうか……」

子どもたちにも、『考える部屋』をもっとやりたいかどうかを聞いたところ、数名の子たちが、「え?終わっちゃうの?」という顔をしてくれました。
そこで、やりたい子がいるのなら、やろうではないか!と、一念発起し、急遽シーズン2を立ち上げることにしました。
2022年の6月は、『考える部屋』2期生のスタートと、1期生のシーズン2のスタートという、なんだかせわしない形になりました。

■やる気に満ち溢れた子どもたち

シーズン2の参加者は、3名。人数は少ないですが、その分、じっくりと取り組めます。参加者それぞれに、シーズン2でどんな部分を成長させたいかを聞いてみました。

・Aさん「1つのことだけじゃなくて、いくつも発想を広げられるようになりたい」

・Bくん「身近な問題や、身近な存在を描くような、リアリティーある物語作りたい」

・Sさん「自己満足というか独りよがりにならないで、人が見て「面白い!」と思うものを書きたい」

本記事を、お読みの方はお気づきかと思いますが、『考える部屋』1期生の子どもたちは、自分自身を客観的に見つめ、さらに伸びしろについて、言語化することができます。彼らはサラッとやってのけますが、ものすごい、能力です。この部分は、『考える部屋』の1年間で、伸びた部分だと思います。隔週で、物語作りと仲間へ感想を伝えることを通して、自分の考えを言語化することができるようになったのです。

頼もしい限りです。

■シーズン2の仕組み

そんな彼らを迎えてのシーズン2。正直、勢いで企画したところもあるので、なんども担当講師と話し合いを重ねて、形にしました。大枠は、以下の通りです。

隔週の授業日である1週目と3週目を1セットとして、

・1週目:課題の共有&課題に沿ったブレスト&箱書き

・2週目「自主トレ」:各自シナリオを書く

・3週目:シナリオの発表と感想&講評

・4週目「自主トレ」:課題に沿った作品を鑑賞

■地獄のブレスト

1週目の目玉は、ブレストと箱書です。プレストは、『地獄のブレスト』と名づけました。1回目の授業では、「くつ」を小道具として使うために、「くつ」を題材にブレストします。

ここで気になるのが、わざわざ「地獄」とつけた意味ではないでしょうか。何が地獄なのかというと、約10分の時間で、それぞれが考える間もなく、どんどんと思いついたアイデアを言わなければいけないことです。

ブレストをやっていく中で、「あるある」と思う、くつにまつわるエピソードや、そういやそんなことあったよな、と思い出すようなエピソードがでてきたりします。

「小学生の時、上履きを片方だけ交換するのが仲良しの証として流行った」「お寺の境内の小石がいつも、ローファーに3粒だけ入る」。私も思わず、「高校時代に付き合っていた子は、ローファーのかかとを常につぶしていた」ことを思い出したりしました。

ひとくちに「くつ」といっても、色々ありますし、そこから、その人のキャラクターや人間関係まで表現することができます。

■箱書からディテールへ

そこまでブレストをしていくと、段々と物語のアイデアも浮かんできます。そうなったら、こちらのものです。
次に子どもたちには、箱書をつくってもらいます。箱書についても、すでに身につけているので、彼らはお手の物で、箱書を書いていきます。

ですが、箱書を作ることは目的ではありません。そこで考えたアイデアを、みんなでブラッシュアップをしていきます。

コメントを言う側の基準としては、もっと見てみたいところ、もっと面白くなりそうなところを、それぞれ深掘りします。

もちろん、作者の考えも大切です。作者には、自分がどう考えて箱書にしたのか、もしくはまだ考えてはいない部分なのかを整理していきます。この時間を、ひとり20分くらいかけてやります。かなり、濃い時間です。

箱書をつくり、アイデアをブラッシュアップさせたら、次の授業までにシナリオにしていきます。ここでのポイントは、箱書のどの部分を、魅せるシーンとして描くか、です。箱書を作ると、ストーリーを書きがちですが、ワンシーンに絞ることで、ディテールを描く力に変えていきます。

では、魅せる、とは何か。それは、観客を意識するということです。そしてそのために、『シナリオの基礎技術』を使って、シナリオを書き上げてもらいます。

■伴走し続けたい

『考える部屋』は、その名の通り、考えることを子どもたちに楽しんでもらいたい、という思いで始めました。シーズン2もそこは同じです。

何を考えるか、はそれぞれの中にあります。どう考えるは、シナリオを通して伝えることができますし、彼らはそれを、実人生のなかで使うことができると思います。人生の節目で、自分らしい判断ができる、そんな礎になってほしいと思います。

だからこそ、伴走者として、彼らのそばを走っていきたいな、と思っています。

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シナリオ・センターは『日本中の人にシナリオをかいてもらいたい』と1970年にシナリオ講座を開始。子ども向けキッズシナリオも展開中。アシスト、お願いします!! https://www.scenario.co.jp/project/kids_assist/index.html