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これからの教育現場

文部科学省が約4年前に発表した「次世代の学校指導体制強化のためのタスクフォース」の検討結果最終まとめ。これは、学校教育現場の現状を踏まえたうえで、次世代の学校における教員のあり方、学習指導のあり方などの方針をまとめたもので、この内容は今後の学校教育のひとつの指針となっていくことでしょう。今回は、この「次世代の学校指導体制強化のためのタスクフォース」から、今後の学校教育について考えていきましょう。

現在の「日本式学校教育」の優れた点とは

日本の学校教育のあり方は、諸外国と大きく異なる部分があります。それは、教職員の子どもへの携わり方です。

諸外国では、教職員の業務は「授業」に特化していますが、日本では、教職員が授業だけでなく、生活指導や部活指導までを一体的に行っています。さらに、通学路での安全確保や夜の巡視指導といった学校外での子どもの活動にまで教職員が対応するケースももはや日常の風景。

このように、日本の学校教育には、子どもたち一人ひとりを総合的に把握しながら指導するという特徴があります。現在の日本型学校教育は、幼いうちに身につけるべき資質や人格、能力を育むための場として学校が発展してきた姿だといえるでしょう。

これからの学校が対応すべき課題も多数

このような日本型学校教育は、実は国際的に評価が高く、海外でも参考にされているほど。しかし、一方で、日本の学校教育現場では、今後取り組まなければならない課題も少なくありません。

・子どもを取り巻く課題

例えば、現在、不登校やいじめ、校内暴力、貧困、児童虐待など、子どもを取り巻く課題は複雑化・多様化しています。地域によっては過疎化の進行による児童数の減少、地域の繋がりの希薄化、ひとり親家庭の増加による家庭の孤立化などといった問題も。

・教職員を取り巻く課題

日本型学校教育は優れた点が多い反面、それは現場の教職員の「過度の負担」の上に成り立っているという現実があります。例えば、始業前や放課後、休日の部活指導や生活指導など、文字どおり「朝から晩まで」「休日返上」で業務に当たっている教職員がたくさんいるのです。また、子どもたちが抱える課題が複雑化・多様化していることも、教職員にとっては頭が痛い問題。

このような教職員の労働環境、労働条件がニュースなどで広く知られるようになり、教員採用倍率は全国的に低下の一途をたどっています。言い換えれば教職員に良い人材を採用できる機会が毎年のように少なくなっているということ。この状況はまわりまわって子どもたちにとって大きな不利益につながります。できるだけ早期の改善策が求められる課題の1つと言えるでしょう。

・時代の進歩にともなう課題

グローバル化や人工知能の飛躍的な進歩によって加速度的に変化する社会に応じた教育も、次世代の学校においては非常に重要です。より広い視野を持ち、予測が難しい社会のなかで生き抜く力をつけるための実践的教育が必要になるといえるでしょう。

このように、次世代の学校教育においては、引き続き解決すべき課題、あらたに取り組むべき課題がたくさんあります。

次世代の学校教育が目指す姿、その実現への構想とは

これら学校教育の「いいところ」と「今後対応すべき課題」をまとめ、指針として示したものが、「次世代の学校指導体制強化のためのタスクフォース」です。
このなかで取り上げられているのは、「今まで以上に子ども一人ひとりと向き合い、個に応じた重点的な学習指導を行う」、「特別な配慮が必要な子ども(不登校や家庭に問題を抱えている、外国人児童など)それぞれの状況に応じて個の能力を最大限に引き出す」「“地域とともにある学校”を目指し、学校と地域が一体となって教育を行う」といった内容。
そして、これらを実現するための構想として、以下の事項が検討されています。

学習指導要領改定にともなう「社会に開かれた教育課程」の実現

・小学校高学年で、外国語や理科、体育などの専科指導を行えるよう、専科担当教員や専門性の高い教員の定数を充実させる。

・「主体的・対話的な学び」「より深い学び」の実現のために、アクティブ・ラーニングの指導ができる教員を充実させる。また、少人数指導を実施するための必要な教員定数を確保する。

子どもたち一人ひとりの状況に対応した教育

・発達障害、言語障害などの子どもに対して、通常学級に在籍しながら特別指導を受けられるよう、必要な教員を配置する。

・外国人生徒に対して、日本語能力に応じた特別指導が受けられるよう必要な教員を配置する。

・貧困による学力課題が生じている場合に、放課後の学習相談や補充学習、家庭学習サポートなどきめ細かい支援を行う教員を配置する。

・いじめや不登校を未然に防ぎ、早期対応できるよう、組織的な指導体制を構築する。

次世代の学校・地域創生プラン

・教員の質を向上させるために、若手教員の多い学校には指導教諭を配置し、校内研修を充実させる。

・学校業務の改善、教育の情報化を推進するために、学校事務職員の体制を強化する。

・教育水準引き上げのため、各自治体が提案する「先導的実践加配制度」を実施し、各自治体が地域の学校教育の実情と、これまで得た現場での経験やさまざまな統計に基づくデータを用いて最適な教育制度や施策を提案する。

このように、学校教育現場の状況を踏まえたうえで、3つの視点から次世代の学校教育に関する構想が練られています。各項目の「教員配置」のキーワードは注目しておくべきポイントでしょう。

学校教育は、時代や社会情勢によって変化していくもの。今回公表された「次世代の学校指導体制強化のためのタスクフォース」によって、学校教育は、これからの時代にマッチした形に最適化されていくのではないでしょうか。

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