自己紹介とnoteをはじめた理由/学校法務について
見に来てくださってありがとうございます。
弁護士の須賀裕哉と申します。1993年生まれの31歳です。
このnoteでは、私の関心分野である「学校法務」について取り扱いたいと思います。
「学校法務」って?
「学校法務」のイメージをもっていただく上では、次の文章が参考になるかと思います。
ここ十数年でコンプライアンスの重要性は飛躍的に高まりましたが、学校現場もその例外ではありません。いじめや学校事故などの諸課題について適切な対応がなされるよう、様々な法律やガイドラインが策定されました。
これらは結構な頻度で公表されているので、その全てをきちんとフォローすることは、弁護士の私から見ても相当に困難だと感じます。
他方で、一定のルールが示されている以上、保護者や市民社会から学校に対しては「ルールをふまえた適切な対応がされているだろうか」という厳しい目線が向けられることになり、対応が不適切であると問題がこじれてしまいます。これを超えて、保護者等から「過剰な要求」がなされることもしばしばあります。
このように、学校におけるコンプライアンスは「大事だけれども大変」なものになっています。学校現場の多忙と、これに伴う教員の休職数の増加や教職志望者の減少は、ずいぶん前から社会問題化していますが、「大事だけれども大変」なコンプライアンスはその一因となっているように思います。
前置きが長くなりましたが、このような大変さを学校現場だけで抱え込まず、必要に応じて弁護士に相談することの意義を述べたのが冒頭の文科省の文章です。ここでは、何か問題が発生した後の対応が念頭に置かれているようですが、日頃から適切な体制を整えておくことも重要です。
こうした課題について、弁護士が相談に応じたり、必要な対応をとることを、このnoteでは「学校法務」と呼びたいと思います(必ずしも一般的な用語というわけではない点、ご留意ください)。
noteをはじめた理由
学校法務に関心を持つ弁護士は増えており、私もその一人ですが、学校法務に関連する法律の全体像を把握することは、以下のような理由から、なかなか大変な作業であると感じています。
学校法務に関連する法律やルールの全体像について、体系的にまとまった書籍があまりないため(本note末尾もご参照)、論点ごとに関連資料を1つ1つ精査しなければならないこと
新しい法律やガイドラインが頻繫に公表されており、こまめに知識をアップデートしなければならないこと
私は、2023年4月からはじまった雑誌『月刊生徒指導』のリレー連載「学校をみつめる法律」(学校関係の法律を毎月見開き2頁で解説する連載)の執筆者の一人に加えていただいておりますが、その執筆にあたっては、担当トピックに関連する資料を網羅的に調査しますので、私自身にとっても非常に良い学びの機会となっています。
「勉強のため、こうしたプロセスを、連載では私が担当しないトピックについても行おう」「せっかくなので、その成果物を公表しよう」というのが、noteをはじめた理由です。
noteで行いたいこと
法律を学習されたことがある方は、有斐閣の『判例百選』シリーズをご存じかと思います。『判例百選』は、1つの重要判例について事案・判旨の概要と関連する裁判例・学説の状況をまとめたB5見開き2頁の判例解説が、100以上収録されている法学部生向けの教材ですが、その情報量は大変に高密度であり、ある論点に関する議論の状況がたった2頁で概ね把握できるようになっています。しかも、判例百選は定期的に改訂されるので、常に新しい裁判例や文献の情報までアップデートされていることも魅力的です。
私はこの『判例百選』シリーズのファンなのですが、このnoteでは、学校関係の法律について、『判例百選』並みにコンパクトに解説することを目指したいと思います。並行して、関連する学校関係の裁判例の紹介も行う予定です。
公表したnoteについては、学校関係者や保護者の方をはじめとする読者の皆様から幅広くご意見をいただければと考えております。適切なコンプライアンスのあり方を考える上では、関連法令の知識だけでなく、学校現場の実情についても把握している必要がありますが、弁護士(私)は、必ずしも学校現場の常識や肌感覚に通じていないため、ぜひ率直なご意見・ご感想を賜れますと幸いです。
また、記載内容に誤りがある場合には、お手数ですがその旨お知らせください。
三日坊主にならないよう、少しずつできるところから始めていきたいと思います。これからどうぞよろしくお願いいたします。
(おまけ)関連書籍の紹介
学校法務に関する書籍は多数出版されていますが、ここでは、学校を取り巻く法律等の全体像を把握するという観点から、関連書籍をいくつかご紹介します。その他、個別の論点に関する書籍は個別のnoteにてご紹介する予定です。
姉崎ほか編『ガイドブック教育法(新訂版)』(2015年、三省堂)
:コンパクトに全体像がまとまっているが、発行年が古い点に難あり。
高見茂編『教育法規スタートアップ・ネクストver. 2.0』(2023年、昭和堂)
:発行年が新しく、ガイドライン類にも言及がある。内容もかなり網羅的。ただし、その反面として個別の記載は薄い。
佐々木幸寿編『教師のための教育学シリーズ 新版 3 学校法』(2023年、額分社)
:幅広いトピックについてコンパクトな記載があるほか、後半の章を法律実務家が担当している点で特徴的。
佐々木幸寿『学校法務』(2023年、ジダイ社)
:発行年が新しく、ガイドライン類にも言及があるほか、個別の記載が充実している。学校現場の課題に関する記載が中心。
窪田=澤田著『教育法規便覧(令和6年版)』(2023年、学陽書房)
:毎年改訂されており、過去の通知類も多く記載されている。学校組織に関する記載が中心。
荒巻ほか編『新基本法コンメンタール教育関係法』(2015年、日本評論社)
:教育基本法、学校教育法、地教行法、教特法を中心とする学校組織関係の法律について、詳細な記載がある。
村上=勝野著『[改訂新版]教育行政と学校経営』(2023年、放送大学教育振興会)
:学校組織や運営について、網羅的な記載がある。
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