見出し画像

<立春>淡雪のような蕪のポタージュ

コロナ禍で一人暮らし、リモート推奨の会社に務めるのわたしは「圧倒的1人」を続けている。最初の頃は非日常の生活の中で、ハーブを育てたり、パンを作るようになったり、梅干しを作ったりと様々な試みを楽しんでいた。一人ではあるけれど、オンラインで仕事をしているし、リモートで人と話す機会はいくらでもある。友達とだって同じだ。

ただ家の中には1人しかいない。「圧倒的1人」生活である。

久々にリアルで人に会うと、うっすら涙を浮かべてしまったりしている自分に戸惑いながらも、「全然だいじょうぶ!」と強がるしかなかった。
自分だけのために作る料理は、だんだん適当になってしまって、生活がモノクロになってきていることを感じてはいたもののどうしようもなく毎日が過ぎていくのだけの生活を過ごしていた。

そんな心がささくれだっていたときに、母親からの電話で言い合いになってしまった。理由は些細なことだ。なにが気に食わないわけではないけれど、心に余裕がなく、母親の愚痴を受け止めきれず、ひどい事をたくさん言ってしまった。電話を切ってから涙が止まらなかった。なんでこんなに泣いているのかわからないくらい大粒の涙が溢れ出てきた。

食欲はあまりなかったが、何かを食べないと…と思って冷蔵庫を開けると真っ白な蕪が新聞紙に包まれてでてきた。こんなときは温かいものでも食べようと、コンソメで蕪を茹で、ミキサーにかけてポタージュに。いつもは牛乳や豆乳、バターをいれるが、こんなときに限ってないから諦めた。塩で味を整え、オリーブオイルを少し垂らしただけの「素の蕪ポタージュ」。蕪の透きとおった淡い白色が雪のようにきれいで、滋味深い味わいに、また涙が滲んできた。

野菜がもつ素の味わいにじわじわと励まされている気持ちになる。「コロナが収まったら…」と思って過ごしたこの1年。自粛しながら何事もなく過ぎ去っていく日々にわたし自身が疲れているのだと認識をした。春になってまた自由に人に会えるようになったら「食べること」をもっと楽しむことができる生活に戻ることが待ち遠しい。

蕪のポタージュ
<材料>
蕪 4つ
コンソメスープの素 小さじ1程度
塩・胡椒 少々
オリーブオイル 適量

<作り方>
1. 蕪を皮ごと4等分に切る
2. 蕪がかぶる程度の水にコンソメスープの素を入れて茹で、柔らかくなったら冷ます(放置でOK)
3. なめらかになるまでミキサーにかけ、鍋に戻す
4. 再度火にかけ、塩で味を調える(涙くらいのしょっぱさ)
5. 器に注ぎ、オリーブオイルと胡椒をかける

<メモ>
乳製品を入れない分、野菜本来の味わいに。
小さめのグラスに盛り付けるとおしゃれな前菜になるかもしれないです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?