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【海外マンガ事情】ドイツ語に翻訳された時、日本マンガのセリフが2倍以上に「増える」怪現象をサイヤ人ナッパさんのセリフで検証

以前に別の記事で、

日本マンガがドイツ語に翻訳されたとき、なんだかセリフが増やされているような?

という印象の話をしました。

その後「印象」で済ますのもよくないなと思い、なんとか数値データで証明できないかと試行錯誤してみたところ、このたびうまくいきました!

以下で結果公開します!↓

ドイツ語版『ドラゴンボール』のセリフをデータ化して、定量分析してみた!

題材として、ドラコンボールの「ナッパ戦」のところを使いましょう。

ドラゴンボールのナッパ戦といえば、「くそ」とか「とりゃ」とか「ぐわ」とか、せいぜい「へっへっへ覚悟しろよ」とかしかセリフがない、ひたすらなバトルシーンのはずですよね。

ざっと日本語版の先頭から拾い上げてみても、以下のような感じです。

さあて
どいつからかたづけてやるかな
はあああああ
くるぞっ
よけろっ
うおおおおっ
天さーん!
ふん、もろいやつらだ
まず一匹!
(『ドラゴンボール第19巻』(集英社ジャンプコミックス)其之二百十七「いそげ!孫悟空」より) 

このエピソード、其之二百十七「いそげ!孫悟空」の日本語のセリフをすべて抽出して計算すると、文字数にして390文字ありました

1エピソードの中で、四百字詰原稿用紙の一枚に収まるくらいのことしか、みんな喋っていないのですね。

ちなみに、このエピソードで一番長いセリフは、

ピッコロさんの「自爆して相討ちとはな、おもいきったことしやがったぜ」の25文字です

これが英語版となると、アルファベット文化の影響で、文字数がまず1.5倍に増えます

いちおう比較対象として、英語版を入れてみましょう。

同じエピソードの全セリフを英語版から抽出すると、文字数にして632文字となります。日本語から英語への翻訳で、マンガのセリフはデータ上、162%くらいの増量になるわけです

もっともこれは、「ひらがな・カタカナ」文化の日本語と、「アルファベット表記」文化の英語との違いの影響と思われます。1.5倍くらいならまだ文字体系の違いで説明できる範囲ともいえますよね

実際、英語版でドラゴンボールを読んでも、日本語オリジナルに比べてそんなに「変なこと」を言っている気はしません。

せいぜい、日本語では「どこだ?」で済むところに、"Where is he?"と逐一主語が入ったりの、「英語の省略の利かなさ」が目立つ程度です。

問題はドイツ語版:もはや日本語では言っていないことを勝手に喋ってるよねw

さて、本題のドイツ語との比較を入れてましょう

日本語の390文字を基準にした場合、英語は632文字で162%増し、ドイツ語は802語で205%増しとなっていました

ドイツ語になったとたん、日本語の文字数の2倍を超える情報量になるというのも驚きですが、

それ以上に気になるのは、同じアルファベット文化であるはずの英語版と比較しても、ドイツ語になったら「クンッ」と文字数が増える点でしょうか。

いったいどこでセリフの分量が増えちゃったのでしょうか

そこで、以下のように日英独のセリフを対照表にして、このエピソードの全セリフ中、いちばん日本語と英語とドイツ語の文字数の差が激しいセリフを特定してみましょう

ありました。日本語では「まず一匹」と叫んでいる、ナッパさんのこのセリフですね。日本語とドイツ語では文字数が12.5倍も違います、、

これが英語版になると、

NEXT!!!と言っています。「まず一匹」とそんなに変わらないことを言っていますね。

これがドイツ語になると、

です。

ドイツ語になった途端、ナッパさんがいろいろ喋っちゃってます

ざっと直訳すると、「おお、痛かったか? すぐにナッパおじさんがラクにしてやっからな」みたいなことを言っています。日本語ではそんなことぜんぜん言ってませんw。オンケルナッパ(ナッパおじさん)と自分のことを呼んでいるあたり、もう別キャラが形成されていると言ってもいいですね。

ドイツ語版のドラゴンボールは、だいたいこんな感じで、「セリフが勝手に水増しされています」。

まとめ:翻訳がおかしいのではなく、「わざと」こう翻訳している?だとしたらなぜ?!

出版しているのはCARLSEN COMICSというドイツ最大手のコミック出版社です。よって翻訳者がヘンなわけではなく、何らかのマーケティング意図があって、わざわざセリフを水増ししているのだと推測されます

どういう経緯からこういうことになったのかはまだまだ私にも読み解けないナゾですが、「ドイツ語版ドラゴンボールのナゾ」として、引き続き、覚えておきたいテーマです。

ドイツ市場におけるマンガの歴史を今後も勉強していけば、何かのきっかけで、このナゾが解ける日がくるかもしれませんし!

こないかも、しれませんし、、、。

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