昭和に書かれた「わかりやすいソ連史」というタカ派視点の本が、なるほどとても「わかりやすい」件
昭和57年という冷戦時代の最中、北方領土問題を担当していた中山正暉氏が「ソ連がいかに脅威であるか」を知らしめるべく書いたソ連史の本
が、こちら。
中山正暉氏は石原慎太郎氏の盟友であった、立場としてはソチラの方。
つまりソ連を相手に喧嘩をしていた当事者が書いている。
当事者ゆえに、正直、バイアスもかかっている。「ソ連はスキを見せると明日にでも襲ってくる」とでも言わんとするような過激な論調。
でも凄くわかりやすい本になっています!そういう著者が書いている歴史の本だと理解したうえで読めば、ロシアがいかにして巨大な国家になったかの過程が頭の中で整理できる!
いまやロシアも(いろいろ問題はあるけど)対等な隣国とみなされるような時代ですが、つい一世代前まではこのような緊張感で日露が対峙していたことを知るのは大変よいことだし、
これからもまた厄介な衝突相手になり得る相手として、プロの政治家が現場で見た「ロシアを相手に交渉するてごわさ」を知っておくのもよいことと思います。
一例ですが、
「ロシアがシベリア方面に拡張したのは、ビーバーの毛皮を求めてのことだった」という説明は、世界史の教科書と同じ
同書『わかりやすいソ連史』(中山正暉/日本工業新聞社)より引用
ですが、
世界史の教科書ではロシアのシベリア進出は「原住民たちとの取引を伴って進んだ商事業だった」
と説明されがちなのに対して、
中山正暉氏の本では「シベリアの原住民たちを銃で弾圧しながら進んだ征服事業であった」とハッキリ書いている
どちらが事実か、となると難しい話ですし、おそらく両方の側面があったのだろうという優等生的な回答しか私もできませんが、
こうしてアジア方面へ何世紀もかけてやって来たロシアが、そうそう簡単にせっかく手にした北方領土を手放すはずがなく、交渉はおそろしくしんどい
というのは、まさにその通りなのでしょう。
親ロシアの方も反ロシアの方も等しく勉強になる本。著者のスタンスに賛同できるか否かは個々人の問題として、とにかく面白いです!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?