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SF好きの私に一生続く影響をもたらした大学時代の3つの授業のハナシ-【2】モダニズム芸術史

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皆さんこんにちは、
SF考察やSF名作レビューなどをしております
ヤシロと申します。

今の私を形作っている大学時代の思い出の講義は、いっけんSFと関係ないようで、実は関係あるw、以下の三つとなります。

ロシア文学史
モダニズム芸術史
英米哲学講義

前回の記事では、「ロシア文学史」の授業の思い出を語りました。

↓↓↓

今回は、2つ目に挙げた、「モダニズム芸術史」の思い出を語りたいと思うのですが、

ハッキリ言って、大学で受けた教育にとどまらず、「芸術史」とか「美学」とかが名前につくいかなる講義やレクチャーやセミナーの中でも、

私は二十歳の頃に受けた、この年間30回のシリーズ講義「モダニズム芸術史」がダントツで面白かった。

モダニズム芸術、と言われても、ピンとこない人は多いかもしれませんが、以下のように名詞を並べると、なんとなく、わかってくれるのではないでしょうか?

すなわち、キーワードでいえば、

シュルレアリスム
キュビズム
未来派
ロシアフォルマリスム
ロシア構成主義
ダダイズム
「意識の流れ」派の文学

などであり、

人名でいえば、私の好みが入っていますが、

イェイツ
マヤコフスキー
マーレヴィチ
カンディンスキー
クレー
ジョイス
ストラヴィンスキー

とかとか。

20世紀の前半を彩った、こんな芸術家や芸術運動についての勉強を、一年間やらせてもらったのは、なんとも幸運な時間だったとしか言いようがありませんが、

SF好きな私との関連でいえば、この中でも特に、ロシア映画がめちゃくちゃ重要です。まぁ、この時期ですから、ロシア映画というよりは、「ソヴィエト映画」というべきですが。

まず、私自身はノンポリを強調しておりますので、別に共産主義が良いとも悪いとも価値判断はしたくない(というか・・・SF作家の歴史を追うときに、「ファシズムに協力した人」とか「ソヴィエト共産党に協力した人」とかを、それだけの理由で食わず嫌いしていたら、ぶっちゃけ、SF史のおっかけは不可能です)

ただ、ソヴィエトの、特に1920年代の映画については、

前衛的な芸術家たちが続々と映画に協力してくれた、という意味で稀有な時代であったと思っています。最先端の芸術と大衆向けエンタメがタッグを組めた時代!(ソ連の場合は、さらに、大衆へのプロパガンダ効果に目をつけた国家権力も映画作りと聞けば予算をバンバンつけてくれた稀有な時代ともいえるがw)。

どういうことかというと、ひとつ、具体例として、

有名な『戦艦ポチョムキン』という映画を観ていただければ、明白なのですが。

この『戦艦ポチョムキン』において、どうして、時には登場人物たちすらもそっちのけで、「戦艦の全体フォルム」とか「大砲の砲門の巨大さ」とか「稼働するエンジンの勇ましさ」を、ねっとりとドアップで撮るショットが多用されているか?お気づきですか?

そうなんです。この頃のソヴィエト映画において「機械はカッコいい!」がどうやら痛烈な美意識として前提されているようなのですね!

いやそもそも、「機械に囲まれた生活こそが楽しい!」と主張することは、ただそれだけで、「自然との調和」とか「男女の自由な愛情」とか「人間らしさ」とかいうものに逃げがちだった西欧の保守的な芸術(まぁ、、、ソヴィエト流儀でいえば「ブルジョワ芸術」w)に対する明確な「差別化」なんですね。

こんなに「機械は素晴らしい!」「工場生活は楽しい!」「でかい兵器は勇ましい!」を、芸術の主題として強調する時代、そしてその動きに前衛芸術家たちも全面的に協力してくれた時代に、

そもそも「カメラという機械」を用いる、人間の手作業では成立しえない、「映画」という芸術は、その存在そのものがアヴァンギャルドで、「新しい時代にふさわしい芸術」だったと思われます。

そしてついでながら、このような、

「機械ってカッコいい!」という美的感覚は、

特にソヴィエトが激しかったものの、西欧の未来主義者や、アメリカのニューディール世代の芸術家(マシーンエイジ)にも、確実に共有されていたことも強調しておきたい。

すなわち、ソ連だけにも限らず、この時代にあって「機械文明やテクノロジーは、いずれ人類を、過去にないほど幸福な未来に連れていってくれる」と素朴に信じられていたこと。

・・・とまとめると、ほうら、私のようなSFマニアがモダニズム(特に機械重視派)に強烈なシンパシーと好奇心を抱いた理由は、わかるでしょ?w

こんなふうにして、私は、大学の「モダニズム芸術史」という年間講義を、SF史との関連で理解し、

ソヴィエトのモダニズム時代の映画がいかに現代のSF映画の表現にも影響を与えているか」というテーマで期末レポートを書いて、なかなか褒められた記憶があります。そんなわけで、私、今後の人生でもしたっぷりと自分の好きな勉強ができる時間ができたら、また「モダニズム芸術と現代SFの隠れた影響関係」といったテーマの深掘り、やりたいなぁ、と思うのでした。

※なお、最後に、参考文献ですが、「モダニズム芸術史」という大学の授業の先生が、「モダニズムに興味を持つなら、どんなに苦労をしても、どんなに時間がかかっても、この論文は何度も何度も読み返し、自分なりの意見を持ってベンヤミンに賛成反対を言えるようにしておけ!」と物凄く強調していた論文を挙げておきましょう。モダニズム期の評論家ベンヤミンが書いた『複製技術時代の芸術』という論文です。

↑大学生の時に私はこの論文を読んで、、、「なるほど、、、難解すぎて、一文たりとも意味わからん」と思った記憶がありますがw。え?今ですか?ハイ、おかげさまで、この論文については、賛成できる部分と反論したい部分、私なりになかなかウンチクを語れるようになりましたよw。

ともあれ、なるほど、先生の言っていた通り、モダニズム芸術に・・・とりわけ映画(映像メディア)に興味を持つ人ならば、読めば読むほど、賛同も反感も含め、いろいろな刺激を受ける筈。これはこれで、20世紀のモダニズムが生んだ超絶論文かもですね。

まあ、今回はこのように、少し堅苦しいハナシにあなりましたが、私の中で「モダニズム芸術史」といういかにも文系大学生向きな勉強が、うまいこと、SF好きという「私の好きなこと」とつながって、もはや中年になった今日にまで続いている、というオハナシでした。モダニズム、ないし、SFに興味のある方に、何か参考になれば幸いです!


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子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!