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『怪と幽:妖怪天国としての台湾特集』を読む(まことに政治と妖怪との関係は厄介ですわ)

怪談やら幽霊やら妖怪やらを追っかけていると、どうしても避けて通れない問題のひとつ、

それは実は地政学と思います。

「そんな大袈裟な」と思われるかもしれません。ですが私は、妖怪やら怪談やらを追えば追うほど、どんどん、この関係が気になってきています。

やはりこれを無視して現代怪談は語れない。

でも追いかけすぎると、変な議論にハマる。難しい。

たとえば私も愛読している雑誌『怪と幽』のVOL003「妖怪天国台湾」特集。

単純に「へえ、台湾にも妖怪がいるのかー」という興味で読んでも面白いのだけど、

とうぜん、

「なぜ、今、台湾で妖怪ブームが?」と深読みすると、実に面白い

本特集の中では、伊藤龍平さんが以下の寄稿論文で、この問題をガッツリと取り上げてくれています↓

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つまり、台湾の妖怪たちは、日本の妖怪ブームを見た台湾の若い世代によって、台湾の伝統の中から「発掘」された、という指摘。

そしてそこには「大陸側の中国とは違うアイデンティティの探究」という側面が、いずれ出てくるかもしれないと予測しています。

私もこの予測はします、というのも歴史を見ても、

カタルーニャの独立が問題になったときに、中世カタルーニャ伝説がブームになったり、

19世紀フランスのロマン派文学者によって、「フランスの中のケルト」たるブルターニュ文化がブームになったりしたのも

地政学の動きと無関係ではない。

だから何、というハナシでもないのですが、「妖怪」とか「怪談」とかいっても、時事ネタについて無垢ではいられないのだ、というのは、最近とくに強く感じているところ。

オバケのハナシも政治から無垢じゃないのだ、と気をつけておきましょう」というだけの結論なのですが、

台湾の妖怪ブームはこれからどうなるのか、とか、中国大陸にも妖怪ブームはくるのか、とか、

妖怪やら怪談やらの未来を読む上で地政学の視点はなかなか役に立つみたいだ、とは、つくづく最近、感じているところです。


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