現代日本でたぶん最強の実話怪談マンガは押切蓮介さんの『赤い家』だと思う【ネタバレあり】
これだけ怪談好きな私が、完全に打ちのめされました。とにかく、凄い話なんです。
それが、このたびぜひ紹介したい、押切蓮介さんの『赤い家』です。実話怪談マンガです。
以下の短編集に入っています↓
なまじ「怪談はたくさん知ってて、慣れてる」なんて人のほうが、強烈なインパクトを受けると思います。
不吉な事件ばかり起こるマンションに引っ越した主人公(少年時代の押切さん)の家族で、
とつぜん父親が行方不明になってしまう、というハナシ。
この父親の突然の神隠しという事態を中心に、家族はおかしくなり、
ますます怪異が起こるようになる、というわけなのですが、、、
これだけでもじゅうぶんに怖い、この実話怪談。
本当に凄まじいショックを受けるのは、終わった後の、作者押切さん自身による解題パートなんです。
これだけのトラウマを少年時代の押切さんに与えた怪談に、大人になってから、後日談が生まれるのです。
なんと、父親は神隠しにあったのではなくて、単に家庭から逃げ出して、ちゃんと仕事にもついて、ちゃっかり勝手に生きていたことが判明するんですね。
泣きそうになりました。
家族って、親子って、人生ってなんなんだろうと思いました。
現代社会とはこんなにも残酷で退屈なのか?!
怪談すら「自分の物語」として特別なまま保持させてはくれないのか?!
あのまま「気味の悪いハナシ」で済んでいれば、まだアイデンティティのよすがになったかもしれないのに・・・15年も経ってから、実はあれは超常現象でもなんでもなくて、父親が逃げたというただそれだけのハナシに過ぎなかったと、いまさらわかってしまう空虚感。
並の怪談なんかもはや児戯に思えるほど、生々しいハナシでした。
現代の人間社会の「くだらない退屈な閉塞感」には、もはや怪談すら対抗できないのではないか。そんな問いを投げかけられたような気がして、しばらく私、なみの怪談番組なんかを見る気がなくなってしまいました。
・・・と言っておいて、結局また、怪談好き人生に戻ったけど。
怪談に対する自己批判を含んだ、毒素溢れるアポトーシス怪談とでもいいますか。『赤い家』を読んだらいろんなことを考えさせられてしまい。やはり、ただただ、「押切蓮介さんのマンガ、ほんと、好きだ」と呟いてしまうのでした。
↓『赤い家』は以下の作品集に収録されています。同書のトリに収められている『オバケなんていないさ2』も同じ構造のハナシで、忘れがたい。「助けてくれー!置いていかないでくれー!」って・・・
子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!