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北欧デザイナーにとっての「一汁一菜」 DUKA3

一汁一菜の企画案は、シンプルを好む北欧デザイナーにとって興味深いものでした。デザイナーには、茶道の懐石料理を絡めて飯碗、汁椀、小皿、お箸の置き場所が決まっていることなど「一汁一菜とは」から説明しました。また、欧米の基本のダイニングスタイルと比較しながら、日本の基本的なテーブルセッティングの理解を求めました。

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欧米の基本的なテーブルセッティングは、プレートの両側にナイフ、フォーク、スプーンが置かれていますが、このスタイルを日本の一汁一菜に置き換えてみました。和食器の位置は、飯碗、汁椀、お箸の位置が決まっています。しかし、これが定位置であることがなかなか理解してもらえず、お箸を縦においてみたり、少しずらしてみたり、というアレンジがされることはありましたが、定位置であることを極力理解してもらうように努めました。

今回デザイナーにお願いするのは、飯碗、小皿、箸置き、そして2種類のデザインを楽しめる2WAYのランチョンマットとしても使える手ぬぐいとのトータルデザインです。いつも平面デザインを描くデザイナーにとって飯碗という立体デザインはチャレンジだったようです。また、和食器と手ぬぐいのコーディネートという少々複雑な要求になるので、数々の人気北欧ブランドで食器のデザインを手がけているアンカーリン/Ann-Carin Wiktorssonに試作の段階から関わってもらうことにしました。ストックホルムから特急で3時間かけてヨーテボリというスウェーデン第3の都市までアンカーリンに会いにいきました。

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アンカーリンは、スウェーデンの手工芸は伝統的なテキスタイルデザインからインスピレーションを得て、「Stina」というデザインを考えてくれました。「Stina」はスウェーデン女性の一般的な名前で、 ちょっとクラシックで思いやりがありながら強い意志を持った女性という印象があります。「Stina」という名前が多かった時代は、まだそれほど娯楽もなかったため、人々は家の中で手工芸を楽しみました。皆で集まってはお互いの手作りを自慢しあった り。スウェーデンの女性たちは本当に手が器用で、細かいレー ス編みや刺繍を得意としていました。スウェーデンの民族衣装には、そんな女性たちの思いが込められた美しい刺繍が施されています。刺繍というとクロスステッチが主流で、いくつものステッチが美しい形を生み出して行きます。クロスが少しぶれたり、時々ステッチが抜けていたり、そんな手作り感が刺繍に温かみを与えています。

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アンカーリンのデザインを試作し、それを元に他のデザイナーに要点を伝えてから手を動かしてもらいました。各デザイナーと何度もやりとりをし、それぞれのデザインが少しずつ形になっていきました。ひとりひとつのトータルデザインをお願いしましたが、いくつものデザインを提案してくれるデザイナーもいて、ひとつに絞るのに悩むという嬉しい悲鳴もありました。

by Y

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