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#5 アタマが感情をこじらせている②

加藤隆行さんの最新刊『「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本』の発売を記念して、前作『「また怒ってしまった」と悔いてきた僕が無敵になった理由』の一部を無料公開します。(酒井)

(前回のお話はコチラから)

本音の感情はアタマでゆがめられる

進化の過程からみても、アタマは司令官ではなく参謀役です。だから、参謀がおかしな考え方をしていると、感情に多大なる影響を及ぼします。

われわれ現代人は、アタマで生きることを周囲から強いられます。
子どものころから、男の子だから女の子だから、お兄ちゃんだからお姉ちゃんだから、成長してからは、もういい大人だから、新人だから、先輩だから後輩だから、課長だからと、さまざまな役割を背負っていきます。
さらに、しっかり、ちゃんと、フツーは、常識的には、社会人たるものは、といったコトバで、自分の感じているはずの「本音」をどんどん否定し、封印してしまいます。

「怒っちゃいけない」
「不安なんて言えない」
「悲しんでいちゃダメ」
「がんばらなきゃ」
「ガマンしなきゃ」
「ポジティブに考えなきゃ」
「もっともっと強くならないと……」

いつしか自分の「本音」はなきものとされ、無意識のうちに否定されていく。
現代人はだれもが、ネガティブな感情が浮かんだとたん、無意識に“瞬殺”するのがココロのクセになっています。
ボク自身も、職場では自分を叱咤激励して働くばかりで、自分の気持ち(感情)なんてほとんど考えたこともなかった気がします。
しかし、命からの叫びである感情をなきものにしようとしても、感情はいつでもそこに“ある”のです。

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感情と仲良くなるためには、アタマ(考え方)への再教育が必要になります。しかし、そのうえでもカラダ(感覚)の声を聴くほうが先だという点は、覚えておいてください。

記憶と感情の関係性

感情には「記憶」も関係していると書きました(前回)。
脳内では、過去の体験や記憶というデータベースと、今感じている五感の感覚や内臓感覚からの不快さを照らし合わせることで、現在の状況が危険かどうかを判断し、必要な感情がつくり出されます。

記憶には大きく分けて2つあります。
アタマによる記憶と、カラダによる記憶です。
アタマ記憶は、忘れやすく引き出しにくく、カラダで体験した体感覚で覚えている記憶は、忘れにくく引き出しやすいのが特徴です。
小学生のとき一生懸命覚えた教科書の内容はスッカラカンに忘れてしまったと思いますが、自転車の乗り方は、大人になってもすぐに思い出すことができます。
さらに、過去にこういうことがあったという体験の記憶と、そのときにカラダで感じた「楽しかったなぁ」「腹立ったなぁ」という感情(感覚)は、密接につながっています。

怒ってしまうのは、幼少時の記憶のせい?

映画に「レイティングシステム」ってありますよね。子ども・青年のために設けられた年齢制限のことです。
制限の理由は、子どもに見せるには過激だから、悪影響があるから、ということで間違いはないのですが、「記憶」と「感情」という点から考えるとよくわかります。

幼いころはアタマ(理性や思考)が未発達です。そのため、なんでも素直に「カラダ」で覚えてしまいます。理屈抜きに「体験」から記憶してしまうのです。
そして、カラダ記憶は「忘れにくく、引き出しやすい」と言いました。だから幼い日の体験は、そのまま大人まで引き継いでしまいやすいのです。

しかも、脳は「イメージやフィクション」と「現実」を区別することが苦手です。理性が介入しにくい子どものころは、それがより顕著になります。
だから、子どものときに過激でショッキングな恐ろしいものを見たり体感したりすると、めちゃくちゃ深刻にカラダに残ることがあります。そして、それを大人になってもあ
りありと思い出すようになりやすい。わかりやすいコトバで言えば、「トラウマになりやすい」ということです。

かりに明確な記憶としては残っていなくとも、幼い日にしんどい環境で育ったり、思わぬ出来事でショックを受けたりしたことを、カラダが覚えていることがあります。
そのとき自分を守るために出てきた「怖い」「不安」といった感覚だけが“漠然”と残っていて、同じような場面に出会うと、カラダがその感覚を思い出してしまいます。
そのような人は【危険モード】に入りやすく、過去の恐れの感情が今の行動を制限してしまっていることが多いのです。

もしかすると、アナタにも心当たりがあるかもしれませんね。

カラダを通して蓄えられた膨大な記憶のデータベースは、生命を守り、生かすために出来上がっています。生き残り戦略をカラダが覚えているということです。

感情を味方にする4つのポイント

さて、ここまでつれづれと感情の仕組みを説明してきました。
感情は自分を生かし、幸せにするためのもの。だから、まずは感情を全肯定し、受け入れてあげる必要があります。

ネガティブ感情を上手に肯定し、その過剰なエネルギーを終わらせていくために、ここでポイントを整理しておきます。

①感情は自分を生かすためのサインであり、エネルギーである(カラダ)

・ネガティブ感情は命を守るためのもの。逃げたり抑え込んだりすると、「ヤバいよ!」と反発し、さらに大きくなってしまう。
・現代人は無意識に感情を否定し、抑え込んでいる。
・感情はエネルギーなので、抑え込むとカラダに残る。

②感情はカラダ(感覚)で感じれば、消えていく(カラダ)

・感情はカラダの反応(おもに内臓の不快感や、筋肉の硬直など)として出る。
・否定していると感じにくいので、まずは「肯定」してあげる。
・出てきたエネルギーは一時的に自分を守るためのもの。だから、ちゃんと使って(感じて)終わらせてあげる。
・過去にため込んできた感情も、感じることで一緒に消えていく。
・アタマで考えると、さらに否定してしまったり、妄想が広がってしまったりして、終わらなくなる。

③【危険モード】のカラダに「安心・安全」を感じさせてあげる(カラダ)

・【危険モード】だと、ネガティブ感情が過剰に発動する。
幼い日からカラダで危険を感じてきた人は、それを今でも思い出しやすく、「世界は危険だ」と感じやすい。
・カラダの記憶を、「危険」から「安心・安全」に書き換えていく。
・感情を否定しないことが、「自分が自分の仲間になる=安心」ということ。

④考え方の「再教育」も必要(アタマ)

・怒りや不安への正しい知識、物事の考え方や捉え方を変えていく練習も必要。
・ネガティブを受け入れて初めて、ポジティブシンキングが役に立つ。

①~③が、カラダへのアプローチで、④がアタマへのアプローチです。

無料公開は以上です。
本書はこの後、「怒り」「嫌悪」「不安」「悲しみ」といったネガティブ感情の取り扱い方について、具体的に解説します。
興味のある方は、下記リンクから本書を読んでみてください。

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