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#3 怒りを否定していませんか?②

加藤隆行さんの最新刊『「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本』の発売を記念して、前作『「また怒ってしまった」と悔いてきた僕が無敵になった理由』の一部を無料公開します。(酒井)

(前回のお話はコチラから)

感情を否定するから、反発して増大する

感情とは「自分を動かすエネルギー」だと言いました。
とくにネガティブ感情は、緊急事態を脱するための強いエネルギーなので、否定し、抑え込もうとすればするほど反発し、大きくなっていきます。ネガティブ感情もアナタの命を守ろうと必死なのです。

「怒らない自分になろう」としている人は、怒りを「否定」しています。
怒りを否定しガマンで抑え込むと、その強いエネルギーはカラダに残り続けます。消えたように見えても水面下ではフツフツと煮えたぎっており、つねにイライラした状態になっていきます。
そうすると、外からのちょっとした刺激に対しても過剰反応してイライラするようになり、いつしか抑え込んだエネルギーがドカーンと爆発してしまいます。

「怒らない」ことを目ざす人は、たまに怒らないでいられた瞬間だけは、一時的に自分を認められるかもしれません。しかしそれ以外のときは、いつでも自分を疑いの目で監視して暮らしています。
そして怒りを爆発させてしまっては、「ほら見ろ、やっぱり怒っちゃいけない!」と怒りを強く否定する、という無限ループの中にいます。
怒りは抑えれば抑えるほど増大するため、より抑え込むのが難しくなっていき、いつしか怒りとの戦いが人生のメインテーマとなります。
たくさんの本を読んだりセミナーに行ったりしても、なかなか怒りがなくならないのはそのためです。

このように、怒りを否定し、怒りと敵対しながら「怒らない自分」を手に入れることは、矛盾した、とても難しいことなのです。
これは怒りに限らず、不安や恐れといったネガティブな感情全般にいえることです。

ポジティブシンキングの功罪

向上心のある人ほど、ネガティブな感情が出てくるとポジティブな考えに切り替えようとするかもしれません。いわゆる「ポジティブシンキング」というものです。

・物事に対して楽観的な解釈をする
・ネガティブなコトバを避け、ポジティブなコトバを使うようにする
・ユーモアを大切にする

実際にやってみて、その試みはうまくいくときもあるかもしれません。でも落ち込んでいるときや疲れているとき、そしてカラダが【危険モード】にとらわれているときに、物事をポジティブに捉えることは至難の業でしょう。
ポジティブシンキングを“つねに”行うのは、不可能です。

また、「ポジティブであること」にこだわりすぎていると、「ああ、やっぱりオレはポジティブに考えることができない、意志の弱い人間なんだ」と自分を責め、怒りを自分に向けたり、よりネガティブになったりと、逆の結果を生み出すこともあります。
ポジティブでいられるのは望ましいことですが、「ポジティブでいなければならない」という考えは、それ自体がネガティブの“否定”であることに気をつける必要があります。

怒りを否定すると、器の小さな人になる

「怒っちゃいけない」「怒鳴るのは最低なヤツがやることだ」と「怒り」を否定していると、そんな自分のルールに反して「怒り」を出す人を見ると、イライラ・ザワザワしてきます。
「オレはこんなに怒りを出さないようガマンしているのだから、オマエも怒るんじゃない!」という思考になっていく、ということです。

「怒鳴る上司」は嫌なものですが、上手にやりすごすのも、社会人のスキルとしてはとても重要です。
しかし、「怒っちゃいけない」と強く思っていると、「怒り」を出す相手に強く反応してしまいます。
また、「怒りを否定することで怒りをためている人」どうしが出会ってしまうと、激しい怒りのぶつけ合いが始まります。いつもいがみ合っている2人っていますよね。その状況は、お互いに自分の「怒り」で相手に「怒るなよ!」と訴え合い、怒りを増幅し続けているのです。
このように、怒りを否定していると同類を引き寄せ、怒る場面をつくり出しやすくなります。

一方、「悲しみ(涙)」や「不安」といった、一見「弱さ」に思える感情を否定していると、そんな「弱さ」を見せる部下に対して、「仕事なのに泣くな!」「オマエは弱すぎる!」と過度にイライラしてしまい、その言動によりよけいに部下がついてこなくなる、ということになるかもしれません。
そのような人は「弱さ」を受け入れられず、「強さ」だけを絶対的なものと考え、ガマンやがんばりを強要することでしか、部下を指導できなくなっていきます。そう、過去のボクのように(笑)。

ほんとうは「怒らない人」「不安にならない強い人」といった器の大きな人になりたかったはずが、「怒り」や「不安」を否定しているために器が育たず、周囲が自分の気に入らないヤツや「敵」ばかりに見えてくるというカラクリ。

感情を否定することは、「その感情にとらわれている」ということと同じで、結局はその感情に振り回されてしまうことになるのです。

「感情」と「行動」を分けて考える

それでは、われわれはどうしたらよいのでしょうか。

まずはいったん、
「怒っちゃってもいいやー」
「不安でもいいやー」
と、自分の感情にOK(肯定)を出してあげるしか方法はありません。

とはいえ、とくに「怒り」にとらわれている人であれば、怒りを肯定したら大変なことになると感じると思います。
しかし、怒りの「感情」にはOKを出しても、怒りによる「行動」にOKを出す必要はありません。多くの人が、感情と行動をイコールで結びつけてしまっているから、怒りを認められないのです。
「(過去に)怒りを出す大人にひどく傷つけられた」、だから「怒り=ダメ」、
「(過去に)怒りで人間関係を台無しにしてしまった」、だから「怒り=ダメ」、
といった感じです。

ボクも中学のとき、暴力教師にひどい目にあわされましたので、その気持ちはとてもよくわかります。
ただアナタは、あのムカつく上司やお客さんに対して「そりゃあ怒って当然だ」と、自分の腹立たしい気持ち(感情)だけは認めてあげてもいいのです。
怒りを否定せず、自分の気持ちを認めながらも、相手を攻撃したり歯向かったりといった行動はしない、という選択もできます。

ただし、「怒り」という強い感情と「行動」を分離して冷静に対処するためには、「怒り」のことをよく観察してみる必要があります。
これまでのように「怒り」を否定して抑え込み、「怒り」のことをよく知らない状態のままでいては、正しく取り扱うことは難しいでしょう。

ネガティブ感情を肯定するということ

アナタがこれまで、「怒り」や「不安」といったネガティブ感情に振り回されてきたのは、もしかすると自分の感情を否定してきたからかもしれません。
もしも自分がネガティブな感情を許し、「怒ってもいいやー」と受け入れることができたなら、自由になってラクに生きられるだろうということは、なんとなく理解できるのではないかと思います。

もちろん、だれもがネガティブにならざるをえない会社での人間関係や環境の問題もあるでしょう。しかし、アナタと同じ職場にいながらも、機嫌よく、要領よく働いている人もいます。
そんな彼らは、間違いなく感情を受け入れ、味方にしている人たちです。

感情に振り回されていた人生から、主導権を自分に取り戻すには、感情のことをよく知り、わかってあげる必要があります。だからこそ感情を否定せず、「怒ってもいいのかも」「泣いてもいいのかも」「不安でもいいのかも」と考えてみてほしいのです。

感情を否定するとは、自分が自分の敵になっているということです(【危険モード】)。
感情を肯定するとは、自分が自分のいちばんの理解者になるということです(【安全モード】)。

さて、感情を肯定し、彼らのように楽しく働くためには、具体的にはどうしていけばいいのでしょうか。
次回では感情の仕組みをひもときながら、感情とのほんとうの付き合い方をお伝えします。感情と敵対することなく、仲間になることは可能なのです。

(連載第4回はコチラから)


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