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#2 怒りを否定していませんか?①

加藤隆行さんの最新刊『「会社行きたくない」気持ちがゆるゆるほどける本』の発売を記念して、前作『「また怒ってしまった」と悔いてきた僕が無敵になった理由』の一部を無料公開します。(酒井)

(前回のお話はコチラから)

感情は「自分を生かし、幸せにする」ためにある

さて、感情とはなんのためにあるのでしょうか。いきなり結論から入りますが、「怒り」も「不安」も感情とは全部、「自分を生かし、幸せにするため」に存在しています。

感情は基本、なんらかの「刺激」によって起こります。刺激があると、人はそれが「快」か「不快」かを感じます。
「快」であれば心身が【安全モード】に入り、そのときのさまざまな状況を加味して「楽しい」「うれしい」「ワクワク」といった感情が起こります。
「不快」であれば心身が【危険モード】に入り、「恐れ」や「不安」「怒り」などが出てきます。

ネガティブ感情は、不快で危険な状況から「自分を守るための感情」です。
「恐れ」を感じるから、その場から逃げたり、逆に動かないようにしたりする。「不安」だと思うから、それに対処し準備しようとする。「怒り」を感じることで、外敵に対抗する力が湧いてきます。
一方、ポジティブな感情は「こっちがいいよー」「それ、アナタに適しているよ」といった、「よりよく生きるため」の情報を与えてくれます。
感情とは、さまざまなことを教えてくれる「サイン」で、ワタシたちを動かす「エネルギー」なのです。つまり、どの感情も、アナタが生きていくために必要だから出てきています。

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そう言われても、今はまだ感覚的に受け入れられない部分もあるでしょう。
そのため、“かりに”で結構ですので、この本を読み進めていくにあたり、
「感情は自分を生かし、幸せにしようとしてくれている」
「感情は仲間で味方!」
ということを、念頭に置いてみてください。

人は感情によって動く

人は感情というエネルギーで動きます。感情が湧き上がってこなければ、人は最低限しか動こうとしません。

「ホメオスタシス(恒常性維持)」というコトバを聞いたことがあるでしょうか。人間や生物に標準装備された「なるべく今の状態を維持しようとする働き」のことをいいます。
人間や生物は、現状を維持して変わりたくないものです。生物にとっては本来、「生きる」ことが最優先事項で、今日まで生き長らえてきた方法に従って暮らしていれば、エネルギー消費も抑えられ、危険に出会い、命を落とす確率も下げられるからです。
同じことばかりしていては、日々マンネリかもしれません。しかし、新しいことにチャレンジするよりも、できるだけ動かずに昨日と同じことを繰り返していたほうが、生物的には得策なわけです(ちなみに、高度な知能をもった動物以外は、マンネリを感じることさえありません)。

ネガティブな感情がなぜ「不快」なのかといえば、ザワザワ、ムカムカと「不快」に感じるくらいのエネルギーがないと、人は動かないからです。「ヤバい!」という強い恐れや、イヤ〜な気分を払拭しようとすることで、人はやっとその重い腰を上げます。

つまり、現状を維持し続けようとする人間を、一時的に「危険だよ! 動かないとマズいよ!!(もしくは、動いたらマズいよ)」「逃げてよ! 戦ってよ!」とたきつけムリにでも動かすという、しんどい役割を担ってくれているのが、ネガティブ感情なのです。

ホメオスタシスにより動かないことも、感情で動かされることも、全部、自分を生かすために起こっています。
ただし、「危険から命を守る」という緊急性が高い役割である分、人はポジティブ感情よりもネガティブ感情に強く影響を受けます。

このように、人は感情のエネルギーで動いていますが、動くまでの判断は一瞬です。だから、自分が自分の感情に気づいていないと、知らぬ間に感情に動かされている、といったことが起こります。これが「感情に振り回される」という状態です。

【主導権=感情】刺激⇒感情⇒自動反応(振り回される)
【主導権=自分】刺激⇒感情⇒〈気づき!〉⇒意思による反応

【危険モード】と【安全モード】の違い

不快なネガティブ感情を感じている【危険モード】とは、カラダが“緊急事態”で、“厳戒態勢”に入っているモードです。
外敵に対処するためのモードなので、「なにが危険か」「どこから攻撃がくるのか」といった刺激に、ことさらに注目する心理・身体の状態になります。
いつも緊張した状態で、交感神経が優位となり、現実の刺激に対して過剰に反応してしまうことが多くなります。
このモードでいるときは、上司にちょっと注意されただけでも、「パワハラだ!」と過剰に反応して怒ってしまったり、「ヤバい!」「大変だ!」とものすごく不安になってしまったりします。
【危険モード】は命を守るために大切なのですが、普段から【危険モード】でいることが多くなると、生きていくのに不都合な状況が生じます。

一方、ポジティブ感情を感じている【安全モード】は、カラダが“リラックス”に入っているモードです。臨戦態勢を解いて自由に活動できる状態で、副交感神経が優位となって、周囲のことを希望的・好意的に受け入れられるようになります。

自分は普段、どちらのモードにいることが多いか、いちど考えてみてください。

現代は感情を否定するのがアタリマエ

さて、感情はこのように「ワタシたちを生かし、幸せにするもの」ではありますが、現代社会においては、怒りに限らず、あらゆる感情を否定することを、アタリマエのように教えられてきます。
家庭でも学校でも、「怒っちゃいけない」「泣いちゃいけない」「強くなれ」「ガマンしなさい」と子どものころから言われ続け、意識しないうちに感情を抑え込む能力を鍛えられているのです。
それどころか、「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」「まじめに」「一生懸命」を求めすぎるがために、「喜び」「楽しさ」を表現することを禁止される場合もあります。厳しいスポーツの現場では、「笑っていたら怒られた」なんてこともありますよね。
「分別や社会性を身につけるって、そういうことでしょう?」
「それが大人になるってことじゃないの?」
これまでボク自身も、できるだけ感情を抑制、ガマン、コントロールし、社会に適合していくことが「大人になる」ということだと思って、生きてきました。
とくに日本では、「周囲に合わせられること」が大きな価値として捉えられています。これを「協調性」というコトバで説明する学校の先生がいますが、まったくの間違いです。
「協調性」とは、「立場や環境が異なる者たちが互いに助け合うことで、同じ目標に向かって任務を遂行する能力」のことです。けっして「自分の感情をガマンして他人に合わせること」ではありません。怒りっぽい子や泣き虫の子がいても、それも認め合い、受け入れ合いながら、つながっていく能力のことをいうのです。

また、近代に発展した西洋文化には、感情や感覚など本能的なものをレベルの低いものとして捉え、理性や思考、科学によりすべてをコントロールすべきだ、と考える一面があるのも確かです。
そんな背景からも、だれもが気づかぬうちに感情を否定してしまっていることがあると思います。
それどころか、「感情を否定する、肯定する」という概念さえもったことがない人ばかりかもしれません。そうだとすれば、ネガティブな感情は自分を脅おびやかす「敵」だ、と思ってしまうのもムリありません。

(連載第3回はコチラから)

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