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マーケターも知っておきたいビジネス戦略~ジレットモデル~

こんにちは。BtoBマーケターです。
私はこれまで中小規模のBtoB事業会社に複数在籍し、マーケティング業務に従事してきました。

その実務経験の中で、疑問に思い直面したこと、試行錯誤したことやその解決策、「BtoBマーケティングあるある」を、noteでまとめていきたいと思います。

今回は、【マーケターも知っておきたいビジネス戦略~ジレットモデル~】というテーマでまとめます。

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◆ジレットモデルとは?

ジレットモデル(Gillette Model)とは、商品本体を無料もしくは安価に提供し付属品を消耗品として販売することで、収益を継続維持するビジネスモデルのことです。

このビジネスモデルは、レーザー&ブレードモデル(Razor and blades(替刃)Model)とも呼ばれ、アメリカのひげ剃り用カミソリメーカーのジレット社が採用したことに由来しています。

ひげ剃り用のカミソリは、それまで「柄」と一緒に販売するのが一般的でしたが、ジレット社は柄と刃を分離し、柄を無料で配布し大きな話題を集めました。

そして刃を「替え刃」として販売することで、柄(本体)を買ってもらい継続的に替え刃(消耗品)を購入してもらう、というモデルを作り出しました。

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◆日本でも江戸時代からあった『ジレットモデル』

実は1600年代の江戸時代の日本でも『ジレットモデル』は広がっていました。

それが『富山の置き薬モデル』です。
薬商人が各地の家庭に薬箱を無料で設置し、その後定期的に訪問して使用した分だけ代金を貰うという販売手法です。

富山藩主だった前田正甫の「用を先に利を後にせよ」(「先用後利」)という精神を反映した日本的なシステムと言えます。

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◆ジレットモデルのメリット

●「無料」「低価格」イメージにより購入動機を発生させる
ジレットモデルによって、商品を無料もしくは安価に提供することで消費者の購入動機を生み出し、消耗品で売上を回収します。

仮に商品本体と消耗品を一緒に販売してしまうと、高価格になり消費者の購買意欲を低下させることになってしまいます。
なので、商品本体と消耗品を切り離して販売することで、長期的に収益を確保することが可能になります。

●継続的に収益を確保できる
商品本体と消耗品を分けて販売するモデルによって、消費者が商品本体を持っている限り消耗品を定期的に購入することが見込まれるため、継続的な収益を確保できるようになります。

また、自社の消耗品しか本体に使用できない仕様であれば、継続して買い続けてもらえるため、顧客の囲い込みとなり売上がより安定して見込めるようになります。

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◆ジレットモデルのデメリット

●「消耗品」の代替品にシェアを奪われる可能性も
ジレットモデルの収益源は「消耗品」となりますがもし、その「消耗品」を代替する企業が参入してきた場合、収益を上げるためにより低価格で販売することが想定されます。

そのため、継続的に消耗品を購入してくれると見込んでいた顧客が、その企業に流れてしまう可能性が発生してしまいます。
回避策としては、消耗品に関する特許権を保有し、他社が参入しにくい環境を構築する必要があります。

●価格設定によってはイメージが低下することも
収益を上げるために消耗品は一定価格以上に設定すると思いますが、消費者にとって「高い」と認識される価格の場合、消耗品を購入するたびに消費者は不信感を感じることになります。

そのため、収益を上げることに注視していると、その商品のブランドや企業に対するイメージが低下してしまう危険があります。
回避策としては、高額過ぎない価格設定や、サポートなど周辺サービスを充実させるなどが挙げられます。

◆ジレットモデルのビジネス事例

ジレットモデルは、さまざまな業種で採用されています。

●≪印刷業≫ (本体)コピー機・プリンター・複合機 → (消耗品)インクトナー

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印刷業界で最初に採用したのは、ゼロックス社と言われています。

複写機本体をリースやレンタルにして可能な限り価格を下げ、コピー枚数に応じて課金する、消耗品であるトナーで利益を上げるという仕組みを構築しました。

業務用であれば、リースやレンタルで低価格にして、コピー枚数に応じた月々の使用料金やインクトナーの交換や用紙によって利益を上げる、家庭用であれば、本体を格安で販売し、消耗品であるインクトナーで収益を上げるというモデルが業界各社によって構築されていきました。

最近では、互換性のあるサードパーティー製のインクカートリッジが普及し、またプリンターメーカーが独占禁止法違反でインクカートリッジ事業社から訴訟を起こされたり、プリンターメーカーから本体が高価格でインクの交換頻度を減らせる搭載容量の大きいプリンターが発売されたりと、ジレットモデルから脱却を図る動きが進んでいます。

●≪製造業(カメラ)≫ (本体)カメラ → (消耗品)フィルム

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専用のフィルムを用いたカメラにもジレットモデルが採用されていました。

カメラ本体を安価に設定し、使用する専用のフィルムで収益を上げるという仕組みです。
ですが、デジタルカメラやカメラ付携帯の普及により、ビジネスモデルが薄れていってしまいました。

●≪製造業(飲料)≫ (本体)ネスレ → (消耗品)エスプレッソ豆カプセル

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コーヒー飲料メーカーであるネスレエスプレッソもジレットモデルを採用しています。

独自技術を用いて本格的なエスプレッソが抽出できるエスプレッソマシン本体を安価に提供し、そのマシンでしか使えないエスプレッソの豆が入ったカプセルを、消耗品として収益を上げるというモデルです。

●≪製造業(家庭用レジャー機器)≫ (本体)ゲーム機 → (消耗品)ゲームソフト

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ゲーム業界の代表例としては任天堂が挙げられます。

(安価とは言い難いですが)ゲーム機を本体、ゲームソフトを消耗品としてビジネスを展開し、他社のゲームソフトもゲーム機で利用可能にし、他社からのロイヤリティも含めて収益源としています。

●≪製造業(飲料)≫ (本体)ウォーターサーバー → (消耗品)ミネラルウォーター

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ウォーターサーバーもジレットモデルの代表例の1つです。

本体であるウォーターサーバーを無料でレンタル提供し、その本体でしか利用できない消耗品であるミネラルウォーターの料金を収益源としています。

●≪食品業≫ (本体)オフィスグリコ(お菓子箱) → (消耗品)お菓子

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オフィス環境でジレットモデルを身近に感じられるのは「オフィスグリコ」かもしれません。

江崎グリコ製のお菓子が入った箱をオフィスに置き、販売員が代金の回収と商品の補充に一定頻度で訪問するというスタイルです。

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◆最後に

事業を進める際、収益の『軸』をどこに据えるかでマーケティングの戦略も変わります。

低価格な消耗品を販売して長期的に収益を得るジレットモデルを採用するのか、高価格商品を少数に販売して収益を上げるのか、どちらを『軸』に据えるかは、自社の商品やサービスの特性を踏まえつつ、消費者の視点も考慮し検討する必要があります。

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BtoBマーケターより。

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