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お産と自閉症 自閉症の予防②

SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二(産婦人科医師)よりメルマガを配信しています。
今回は、2024.05.21配信のメルマガ内容(前半)です。

前回に引き続き、「自閉症の子どもたちと”恐怖の世界”」(白石勧著 花伝社)より。
※白石さんの書籍を割愛し結論を中心にお伝えしています。詳しく知りたい人、文献も見たい人は原著書をご覧ください。Amazonでも購入できます。


これまでにわかったこと

  • 「母親への信頼は刷り込みである。刷り込みがないと信頼がおけず、母親への甘えもなく、傍にいても安心できず不安が生じ、さらには恐怖を感じるようになる。恐怖のために同一性に固執し孤立する」

  • 「鳥の刷り込みは、母親を特定するだけではなく、自分が属する種や、仲間の種や、繁殖相手の種を特定する機能があることが分かっている。また、自分の種への共感能力が生まれるという機能がある」

  • 「哺乳類でも、早成種であるキリンの子やカバの子だけではなく、晩成種であるネコの子も生後早期に刷り込みが生じている」

  • 「人間の赤ちゃんも刷り込みによって頼るべき母親を特定している。したがって、自閉症の子どもに母親への信頼が生まれていないのは刷り込みの障害が原因である」

  • 「出産直後から母子同床であれば、刷り込みに障害が生まれる余地はない。それで、団塊の世代に自閉症の子どもはほとんどいない」

  • 「生まれたばかりの赤ちゃんを新生児室に隔離したのが、自閉症になった原因である」

  • 「病院出産では、母親は分娩台の上で仰向けになって赤ちゃんを産むので難産になりやすい。だから出産後の安静が必要となり、赤ちゃんは新生児室に入れられる。そして、一部の赤ちゃんが自閉症になる」

第4章 自閉症予防の5カ条

4-3. 現在の病院

赤ちゃんは刷り込みをしていないと考えられているので、現在の病院は赤ちゃんの刷り込みにまったく配慮していない。

しかし、新生児室に入れている以外にも、赤ちゃんの刷り込みを妨げるような要因は多い。

■ 分娩室の照明

新生児は、生後3日間ほどはまぶしい光を嫌う。
赤ちゃんが胎内にいたとき、光は1万分の1ほどしか届いていない
特に、お母さんの下半身は無影灯で照らされている。赤ちゃんはスポットライトをあびて生れてくるようなものである。
暗い胎内から生まれてきた赤ちゃんは目を開けていられない。

2010年に起きたチリの落盤事故では、69日後に33名の鉱山労働者が救出された。そのとき、33名全員にサングラスが支給され、夜間に救出されたが全員がサングラスをしていた。

こういった配慮が新生児にはまったくなされていない。
新生児は薄暗ければ、生まれると1~2時間ほどは目をしっかり開けて何かを見ようとする。
新生児覚醒状態である。しかし、分娩室が明るいと、赤ちゃんはまぶしい光を嫌って眠りに逃避してしまう。

ミシェル・オダン(1991)から引用する。

分娩第一期が進行して収縮がだんだん強くなっていくと、産婦は静かな薄暗い場所に移動したいと感じるようになります。-(略)-哺乳類の動物は、暗く静かな、ひと気のない場所を選んで出産します。(p.71)

ミシェル・オダン(1991)

赤ちゃんはお乳を吸うとき、目をしっかり開けているので、室内の明かりは赤ちゃんの目を刺激しない程度に薄暗くします。出産のとき、産婦に必要な条件はそのまま、生まれたばかりの赤ちゃんにとっても必要な条件であるということを強調しておきたいと思います。(p.112)

ミシェル・オダン(1991)

通常の病院は、分娩室での権限は医師や助産師など病院側にある。しかし、オダンの病院では、分娩室での権限を産婦に与えている。
通常の新生児の写真は、眼を細くしていて眉間にしわをよせた、いかにも不快そうな顔をしている。
しかし、オダンの本に載っている新生児の写真は、目を大きく開けていて顔は凛としている。
薄暗い分娩室で、高感度カメラで撮った写真である。(pp.114-115)

新生児が眼を大きく開けて母親の顔を見れば、母親の顔を刷り込む。しかし、分娩室の照明が明るいと、赤ちゃんは目を開けていられない。眠りに逃避してしまう。

最近の分娩室の照明は以前よりも明るくなっている。
分娩室の照明が以前よりも明るくなっていることが、自閉症スペクトラム障害の子どもが増えている原因のひとつになっている可能性がある。

■ 新生児室の照明

新生児室の照明も以前よりも明るくなっている。
これも、自閉症スペクトラム障害の子どもが増えている原因になっている可能性がある。

私(※白石氏)の2人の子どもが生まれた1970年代の新生児室は、親に公開されていなかった。しかし、現在の新生児室はガラス越しに見えるようになっている。
それもあってだと思うのだが、新生児室の照明が以前よりも明るくなっている。

照明が明るいと新生児は目を開けていられない。
眠りに逃避しておとなしく眠っている。
おとなしく眠っているので、ほとんどの人がなにも問題はないと考えているだろう。

ネットで新生児室・照明で検索すると、新生児室看護師の用語辞典で、「全身の色などが観察できるよう、夜間でも白色蛍光灯500ルクス以上の明るさが保たれている。」と書いてあった(2019/3/25)。 

ちなみに、一般病室の照明は100~200ルクスである。新生児室の照明は、夜間でも、一般病室の照明よりも明るい。
500ルクスというのは事務室の照明とおなじ明るさである。

そんなに明るいと、新生児が受けるダメージはかなり大きく、新生児の拒否感も強いはずである。

したがって、新生児室の照明が以前よりも明るくなっていることが、刷り込みに障害が生まれる赤ちゃんが増えている原因になっている可能性がある。

■ 目薬

現在、病院は生後早期に新生児に目薬をさしている。
生まれたばかりの赤ちゃんに目薬をさすのは危険である。

ネコは目薬をさすのをとても嫌がる。ネコが目の病気のときは、逃げないように押さえていないと目薬をさすことができない。

赤ちゃんも目薬が嫌いだ。
生まれてすぐに目薬をさされたら、赤ちゃんの拒否感はかなり強いはずである。

マレー・エンキン他の『妊娠・出産ケアガイド』(1999)という本に、「新生児の眼に使用される点眼薬は、出生後の最初の母親と子どもの視覚的な交流を障害するかもしれない」(p.351)と書いてあった。
刷り込みという言葉は使われていないが、私が危惧していたのとまったく同じことが書いてあった。

目薬は新生児にとって刺激が強すぎる。
母親を刷り込む前に目薬をさすと、赤ちゃんの拒否感はかなり強く、刷り込みに障害が生まれる可能性がある。

イギリスでは目薬の投与といった予防的処置は必要ないと考えられている。
新生児への目薬の投与は必ずしも必要とは言えない。

生後24時間ほどは、目薬をさすのはひかえる必要がある。

■ 写真のフラッシュ

生まれたばかりの赤ちゃんを、フラッシュを使って写真を撮るのも危険である。

20年以上前だが、新聞の健康相談で、「赤ん坊が生まれてすぐにフラッシュを使って写真を撮ったら、1週間経っても目を開けないが問題はないのか?」という相談が寄せられていた。
眼科医は「全く問題ない」と言った。
しかし、私は刷り込みのことが心配だった。

目を開けなければ、視覚の刷り込みに障害が生まれる可能性がある。目を開けないというのは、世界を拒否していることを示している。

母親の刷り込み全体にも障害が生まれる可能性がある。

現在は、ほとんどの人がフラッシュ機能のついたスマートフォンで写真を撮るようになった。
産まれた赤ちゃんの写真を撮りたいという気持ちはわかるが、刷り込む前の新生児を、フラッシュを使って写真を撮るのは危険である。

赤ちゃんが目を閉じていれば問題ないかもしれないが、赤ちゃんが目を開けていたら衝撃が強すぎる。

さらに最近は、退院時に病院から記念アルバムを贈るというサービスが流行している。フラッシュを使って写真を撮るという流行が、自閉症スペクトラム障害の子どもが増えている一因になっている可能性がある。

生後24時間ほどは、新生児の写真をフラッシュを使って撮るのは危険である。写真を撮るのであれば、照明を落とした部屋で、高感度カメラで撮るといった配慮が必要である。

後半へ続きます。


白石氏の電子書籍の目次は以下のとおりです。
※なお、本記事は白石氏の了承のもと公開しております。

第一部 自閉症の原因と予防
  第1章 自閉症の原因
  第2章 刷り込み
  第3章 新生児室
  第4章 自閉症予防の5カ条
第二部 自閉症の正しい理解と支援
  第5章 自閉症の正しい理解
  第6章 後期発症型の自閉症
  第7章 恐怖症の治療
  第8章 恐怖症の治療と教育


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