教育のあり方を身体に訊く#2
前回の記事で、
鍼灸師は四診といって「望診・聞診・問診・切診」のアナログでクライアントから情報を得る
と書きました。
では、デジタルとアナログの違いは何でしょうか。
1、デジタルとアナログの違い
デジタル(digital)とは「連続的な量を段階的に切って数字で表す」ことです。語源には「指折り数える」という動作があります。デジタルは「正確」で「切れ目のある」ということと捉えるとわかりやすいでしょう。
アナログ(analog)とは「データを連続的に変化していく量で表す」ことです。区切られることなくゆるやかに止まることなく変化していくものを表します。アナログはゆるやかに変化をしていくものなので、1と1の間にある「0.0000001」以下の数値も表すことができます。しかし、例えば水銀式の体温計が36.5度と36.6度の間で止まった場合、その体温は読む人によって多少変わることもあります。アナログは「曖昧」で「切れ目のない」ということと捉えるとわかりやすいでしょう。
2、鍼灸臨床とアナログの親和性
私たち鍼灸師がクライアントの情報を入手するのはアナログのことが多いです。
アナログ情報には「曖昧」で「切れ目のない」という性質があります。曖昧であるために、情報入手者(人間である鍼灸師)が主観的にクライアントの情報を捉えるので、鍼灸師のその時状態によって情報が変わってしまうことがあります。
例えば、鍼灸師の体調がすぐれず、手が冷えている時は、クライアントの体が相対的に温かく感じるということがあります。ですので、鍼灸師は体と心をいつも整えておくことに注意します。
また鍼灸師自体が違うとクライアントの情報が異なって入手されることがあります。そこが科学的根拠や再現性が求められる時代にそぐわない点です。
しかし、アナログであるがゆえ、デジタルでは未だ受け取れない情報、つまり検査機器ではデータとして入らない、映像には映らないなどの未科学の情報が入手できます。
例えば、体の歪みというのは体をデジタル解析すればわかるようになりました。「右の肩が下がる」「右の股関節がやや屈曲している」などとわかります。しかし、どの方向に体はねじれようとしているのか、又なぜそのようにねじれようとするのかは、体に触れて、クライアントのこれまで、または最近の行動、癖を問うと、その情報が入ってきます。これは確かに「曖昧」で「不確か」ですが、経験を積んだ鍼灸師は経験上確信を持って入手できます。
またはクライアントについての2、3またはそれ以上の情報の関連性を調べ、全ての情報が連続性、または関連性のある情報として、そのクライアントそのものを捉えられるという点で、鍼灸医学のホリスティック(全体性)に人間を診る医療に親和性が高いです。
例えば、左肩が五十肩(肩関節周囲炎)の痛みがある場合、現代医療では、
年齢を重ねることで肩の関節を作っている骨や軟骨、靭帯や腱などに炎症が起きることが主な原因と考え、注射、湿布、運動療法が治療になる
しかし、あるクライアントの場合(人によって原因は異なる)
何年か前に左足首を骨折した。数ヶ月ギプスで固定していたので、左股関節周りの筋肉が固くなり、関節の動きが悪くなっていた。歩くと右の歩幅がやや長く、体全体は右足前、左腕前の歩行姿勢でねじれている。左肩がやや巻き肩になり、痛みが出る。すると治療は肩だけではなく、左足・股関節から全体のねじれを解消することになる
またそれ以外にも、ストレス、気づいていないが症状を悪化させる習慣、物事の考え方、捉え方の癖などもクライアントが抱える症状には経験的に関連することがわかっています。
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