顧客満足を考える 笑顔を生む方法

長引く新型コロナウィルスの影響から、企業の倒産や小売業の閉店が深刻になってきました。ニュースなどを見ていると、小売業の努力が目立ちます。特に目立つのは飲食店で、様々な努力や創意工夫が行われています。
生き残りのためにはやれることをやらなければならないというのが事実なかと思います。企業規模が小さい分、小回りがきくという側面もありますが、普段からお客様の顔を見ていることから、顧客満足に敏感であるように感じました。食べることは人にとって欠かせない行為であると共に、多くの人が幸せを感じる行為です。飲食業の方々はヒトの笑顔に敏感なのかもしれません。

以前記しましたが、マーケティングの講義ではマーケティングの定義について説明します。その時、これは僕の考えですが「誰の笑顔を見たいのか、どんな笑顔を見たいのか、そのために何ができるかを考える事」と話しています。
企業のお手伝いをする時、例えば事業や製品・サービスの改善など、新規事業開発や製品・サービスの開発などを行う時、実際の利用シーンから、具体的な人物の顔を思い浮かべ、どんなことを想うのか、どんな笑顔になるかを考えます。

例を挙げましょう。
夜の繁華街での営業が中心の飲食業が、昼から営業する店舗を出店した時のことです。単純に「月に○○万円売り上げを伸ばす」と言ってもすぐに実行できません。集客が伸び悩んでいたことから、来店客の様子を観察しました。夜の繁華街では客単価が高くなります。合わせてワインなどをボトルで注文する顧客が多いため、比較的高額を支払う顧客が多いです。しかし立地条件が違うことから、ランチ営ではそうはいきません。普段のランチは食事ですからワインをボトルで注文するような会食とは異なります。そこでこんな風に考えてもらうことにしました。
夜に毎週1回来店するお客様がいるとします。4人でボトルのワインなどを注文して合計20,000円(1人平均5,000円)程度の食事をされます。一方でランチに週3回程度来店するお客様がおられました。ランチが800円のランチを週3回、合計2,400円になります。店長としてはどうしても単価の高い顧客に目が向いてしまいます。
夜が中心のお客様は可処分所得から出費しています。一方ランチのお客様は食費(生活費)から出費しています。どちらも大切なお客様ですが、夜中心のお客様はそのままに、ランチのお客様に例えば100円でコーヒーをつけてもらえる方法や、1週間にもう1回多く来店してもらえるよう考えてもらいました。

単純に考えれば、夜に来店するお客様の来店回数が増えたり、高いワインを注文していただく方が簡単に売上が上がります。コーヒー1杯やランチ1回ではなかなか売り上げは増えません。しかしこうした視点ではランチに来店するお客様の気持ちには近づけません。そこで、目標の売上を達成するために何人のお客様にランチに来店していただく必要があるのか、目標を算出しました。そして1日10人ランチのお客様が増えるためにはどうした良いのかを一緒に考えうことから始めました。
メニューだけでなく接客方法などを、店長だけでなくアルバイトの店員さんも含めて皆で改善していくうちに、ランチのお客様が増えるだけでなく、コーヒータイムにも来店していただけるようになりました。
面白いもので、こうした変化が起こると、お客様が店員の名前を憶えて下さり、店全体で会話や笑顔が目立つようになります。次第にランチのみのお客様が、夜も来店してくださるようになりました。
こうなるとお店全体でお客様の望むことができるようになりました。次第に僕の提案やアドバイスが少なくなっていき、意見を求められるようになりました。

そして数か月後、その年のクリスマスは予約でいっぱいになりました。
この時のメニューは、内容や価格帯など、殆ど携わる必要がありませんでした。また当初に比べて格段に忙しくなっていましたが、店員の顔に笑顔が絶えることはありませんでした。

この店長は、現在ではその会社から独立し、人気のお店のオーナーになっています。少し前ですが、近くまで行ったので、お喋りでもしようと思い、ランチタイムに立ち寄ると、店の外に列ができていました。

蹴客満足のためには、様々な事を考えなければなりません。
しかし最初に考えるのは難しい理論ではなく、お客様の笑顔で自分が笑顔になれること。それほど難しいことではないのかもしれません。

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