ブランドは「定義」が形作る

前回、「企業理念がブランドを確立する」という記事を記しました。そこでは主にマーケティングの視点とマーケティング4.0について述べ、企業理念については、触れませんでした。
そのため今回は、企業理念とブランドの関係について考えたいと思います。

マーケティング4.0とは、端的に言えば、企業と顧客が‘共に’新たな価値を創造する行為です。
出来上がったものについて、顧客(その企業を愛顧する消費者)にその価値を説明しなければならないようでは、‘共に’創造したとは言えません。
ですから企業は、自社のあらゆる考え方や価値観を伝えなければなりません。この考え方や価値観をあらゆる顧客と共有する作業がブランド・アクティビズムです。

それではどのようにして、ブランド・アクティビズムを実行するのでしょうか。

・企業理念の役割
企業数理念の役割については、以前のnoteでも何度か記しましたが、今回は、ブランド・アクティビズムを目的として、もう少し具体的に考えたいと思います。

これはとある経営者の方の言葉で、大変解りやすい例えなので、紹介したいと思います。

「経営者はバスを運転しているようなもの。ルートと目的地に賛同できる客(社員)を乗せていて、乗るのも降りるのも自由。ただし、バスのルールを守れない人は降りてもらう。」

この例えは、とても解りやすいものです。この中の「目的地」「ルート」「バスのルール」がビジョンや価値観です。そしてこの、ビジョンやルールの基となる方針が理念です。

理念の策定方法に決まりはありません。企業理念であれば経営者の考えが反映されたものであればよいのです。
例えば企業理念のない企業もあります。代表的な令がApple社です。理念を示さなくても、スティーブ・ジョブズの言動や製品が、考え方を物語っています。

ちなみに、、、Apple社と比べるべくもありませんが、SBE-Laboも、ホームページをご覧いただければわかる通り、理念を記載していません。
これには理由があって、残念ながら僕自身が、まだ自分の理念を成文化できていないからなのですが、僕をよく知って下さる方は、ちゃんと理解して下さります。

しかし僕を知らない方は、そうはいきません。ホームページについても、ある方から「佐伯さんを知ってるから、佐伯さんの考え方や姿勢が理解できるけど、この文章だけを読んだら、ちょっと疑うかも。」と、言われたことがあります。(笑)

・定義することの大切さ
例えば僕が講義を行っている「マーケティング」についても、様々な定義があります。
一般的に大学のマーケティングの講義では、AMA(アメリカマーケティング協会)の定義を説明します。マーケティングの第一人者であるコトラーや、マネジメントの父と呼ばれるドラッカーも、それぞれの定義を述べています。
僕のマーケティングの師は、「無限に連なる連鎖の、欠けたピースを探す行為」と仰いました。この定義は、最初に聞いたとき(大学生の頃)は、全く意味が解りませんでしたが、今ではとても良い定義だと思います。

ちなみに僕は、まだ自分なりの定義をできていません。講義では、AMAの定義を基本に、様々な定義を説明しながら、「誰のどんな笑顔が見たいのか、そのために何ができるのかを考えること(※定義ではありません!)」と説明しています。

ちなみに定義は、辞書では、以下のように説明しています。
[1] 物事の意味・内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定すること。「敬語の用法を―する」
[2] 論理学で、概念の内包を明瞭にし、その外延を確定すること。通常、その概念が属する最も近い類と種差を挙げることによってできる。
                              (大辞泉)

つまり定義とは、誰が聞いても同じ意味や価値観で理解できる言葉や考え方です。

・全ての価値を定義する
大学院生の頃、こんなお叱りを受けました。

「君は研究者(学者)志望らしいが、本当に国語ができていない、キミは自分が発する言葉を定義できているのか」と。

このお叱りは、今でも僕の心に問いを投げ続けていますが、残念ながら、マーケティングの例の通り、まだ自分の言葉を、定義づけるには至っていません。

言葉の端々定義とは、それほど大切なものなのです。

僕は、企業理念を作るお手伝いをするとき、大切な概念を、「定義」として、言葉にしていただきます。
その人が大切なこと、考え方や言葉遣いだけでなく、その人が好むことや不快に思う行為や言葉、仕事や人生の目的、生き方、全ての価値をを言葉として定義します。

ここまで言うと大袈裟に感じる方もおられるかもしれません。しかしこのような様々な言葉の定義が、企業に大きな影響を与えます。

自分達がどのような価値を創造したいのか、その対象(顧客)は誰なのか、どのような姿勢で取り組むのかなど。究極的には、その企業が考える人の幸せの在り方など、これらを定義し、体現することを目指します。

ブランド・アクティビズムは正しくこうした行為ですが、これは決して新しいものではありません。

優れた人物は、常にこうした「定義」を明確にしています。

これは企業だけではありません、目標や夢を持って頑張ろうとしている人々全てに、その目標や夢の定義を考えて頂ければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?