デザイン思考を活用してみよう 1

デザインと関わるようになり、気づけばそれなりに時間が経ちました。考えてみれば、まさか自分がデザインの学校で教えるようになるとは、思いもよりませんでした。

デザイン思考という言葉を知ったのもここ数年のことです。デザインについて、真剣に勉強して5年ほどですから、まだまだ新参者。普段の僕なら、「まだ僕が書く立場ではない」と考えるところですが、、、

社会の大きな変化の中で、これまで学んできたことを役立てたいと思い、またお客様など、皆さんの状況にお役に立てればと思い記すことにします。

・デザイン思考とは
デザイン思考とは何かという問いに対して、明確に答えている説明をにか目にしません。何だか魔法の発想法のような文章も目立ちます。

デザイン思考を、僕は「意思決定方法」と説明しています。

デザイン思考という言葉を生み出しまのは、企業の意思決定論で有名な経営学者である、ハーバート・サイモンです。
彼は合理的な判断に基づく考え方の1つとして、科学的思考を挙げています。科学的思考は、基本的には「観察」→「仮説」→「検証」のプロセスを経て行われるもので、このとき演繹法や帰納法といった、極めて論理的な方法を用いて考えます。しかし企業や経営者は、環境が変化し続ける中で、時としてこのような思考のプロセスを積み重ねることが困難であることが少なくありません。そこでサイモンは、研究者(学者)が理論を構築するプロセスに対して、デザイナー(建築家)がデザインを行うプロセスに着目し比較しました。
デザイナーがデザインを行うとき、顧客の要望を満たすうえで、その課題を解決するための理論を見つけ出し、検証する必要はありません。顧客の快適性が確保されれば、そのデザインは役割を果たすことができます。

サイモンは、このデザイナーの思考の流れを「デザイン思考」と定義しました。

・思考のプロセス
デザイン思考について、概要を説明しましたので、次に思考のプロセスについて考えます。

まずは比較するために、前述の科学的思考として、以前のnoteでも紹介しましたが、仮説演繹法のプロセスを説明します。

■仮説演繹法のプロセス
  帰納的論証  演繹的論証
事実  →  仮説  →  予測(推論)

この流れでは、起きていること(事実)を分析し、その原因と理由について仮説を立てます。その仮説から論理を積み重ねて、今後について予測(推論)を立てます。科学者は、基本的にはこのような流れで研究を進め、新たな理論の発見や構築を行います。

しかしこの方法は、多くの知識や高い論理構築の力を必要とします。またビジネスの場では、スピードが求められるため、様々な変化に素早く対応できません。そのためサイモンが着目したのが、デザイナー(建築家)が、デザインを行う際の思考の流れです。
デザインを行うとき、目的が達成(問題解決)ができれば、必ずしもその要因を論理的に証明する必要はありません。この思考流れを更に洗練させたものが、スタンフォード大学によるデザイン思考プロセスです。

■デザイン思考プロセス
(観察)→共感→問題定義→創造→プロトタイプ→テスト

この流れでは、共感を通じて、可能な限り速やかに問題の本質を見つけ出し(問題定義)、創造(アイデア)に結びつけるかが重要となります。しかしこの目的は、あくまでもプロトタイプ→テストを通じて、必要なモノや仕組みを生み出すこと、つまり効果的な成果を生み出すことですから、論理的な分析は必要ありません。

ただし、デザイン思考を活用するとき、問題を問題を認識することは容易ではありません。そのためまずは「困ったこと」を見つけ出す「観察者」が必要になります。企業でれば、経営者が常に社内の「うまくいかないこと」に目を向けていればよいのですが、それでも慣例など、そもそも問題に気付けないことが少なくありません。
そのため僕は、「共感」の前に「観察」を加えています。

・デザイン思考の本質
先に述べたように、テザイン思考とは、意思決定方法の1つであり、問題解決のための‘考え方’です。決してデザイナーでなければ活用できない方法ではありません。‘デザイン’という名称ですから、勘違いしやすいように思いますが、むしろターゲットとなる人たちに寄り添った顧客満足の方法と考える方が、適切なように思います。
顧客満足としましたが、何も商品やサービスを生み出すだけの方法ではありません。困っている人、もっと言えば、現状を改善、改良いたい人々全てに対して有効な考え方です。そうした側面から見た場合、デザイン思考はデザイナーだから活用できるというものでもありません。

大切なことは、当事者に「共感」することで、目に見えない問題を「実感」することこそ大切です。そこから問題の本質を見出すことが1番大切なのです。

ただし、、、

共感を基にしたからといって、常に独創的なアイデアが生まれるとは限りません。ときには原理原則が実行されていないという結論に至ることとあります。そのときは、無理にアイデアを出そうとせず、原理原則の実施から行動することになります。

デザイン思考とは、「今起きていること」に「共感(自分の問題にする)」ことで、見えなくなっているものを見つける方法なのです。

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