価格の話 「安い」「高い」はその人次第

今回は、再度、価格について考えたいと思います。

今年は多くの企業が苦しい状況にあります。先日もとある記事に、「大企業は中小企業を搾取しているのか」というものがありました。ここではこれについての議論は行いませんが、こうした内容が記事になるのは、やはり現在の苦しい状況の現れのようにおもいます。

また、僕自身、こんなことがありました。Saeki Business Economics Laboでは、一応価格表を用意しています。とは言え殆どの依頼が、オーダーメイドのようなものなので、価格表通りで業務を請け負ったことがありません(笑)。
ご依頼を頂くとき、内容によっては「高いですよ」とお伝えするようにしていますが、実際に「高い」と言われたことはなく、むしろ「安い」と言われることの方が多いです。

実は、先日もある方に価格表をお見せしたところ、「安い」という言葉が出ました。色々な考えがあっての価価格でしたが、これらの言葉から質問をしました。すると、相場ではなく、労力と成果から安いと言ったというお答えを頂きました。

これについては、失礼な質問をしてしまったと反省してきます。

こうしたことから、価格について以前も記しましたが、違った視点から考えることにしました。

・CSRから考える価格
CSR(企業の社会的責任)という言葉を聞くようになって随分時間が経ちます。
日本ではCSR1.0から3,0まで示されていますが、これについて知っている方は少ないのではないでしょうか。
CSRは、自然環境や社会福祉などに参加することではありません。社会が必要とする財やサービスを、より良い方法でより消費者が活用しやすい方法で提供すること。そしてその行為を改善しながら継続することです。

つまり、、、

会社の事業で世の中の役に立ち続けることなのです。

ところが、未だに大企業ですら、先に挙げたような内容をCSRと表現しているのを見ると、少し腹立たしい気持ちになります。
随分前ですが、例えば大手食品スーパーで、植林活動を行っているポスターが張られており、CSRと記載されていた(現在は変わっています)のを見たときは「そんなことをしなくても、食の安全性や食育で貢献しろよ」と、つい口にしてしまいました。
またとある日本の大企業が行っている活動で、ヨーロッパで行っているものは、ホームページなどに一切紹介されていません。これはその活動が、ヨーロッパでは社会に知らしめると、CSR活動でも売名行為と見なされるためで、つまり同じ活動を行いながら、ヨーロッパと我が国でダブルスタンダードの立場をとっていることになります。

かなり話が逸れましたが、CSRとは、先にも述べた通り、「役立つ事業を継続する」ことなのです。

この点から価格について考えてみましょう。

僕は企業のお手伝いをするとき、必ず適正利益率を算出してもらいます。
わが国では、取引慣行から、驚くほど低い価格で事業を行っている中小・零細企業が少なくなく、中には利益の出る取引のバーターとして、原価割れの製品・サービスを提供している事例が、多く見られます。
こうした状況で、利益が殆どない状態での自転車操業であったのが、新型コロナウィルスの影響から、さらに価格を下げられる状態も目立つようになりました。

もちろ、これまでそのような取引慣行にまかせていたことが問題なのですが、ここへきて、急に改善しようと思っても、なかなかできるものではありません。
それには価格を上げる(下げない)ための正当な根拠が必要になるからです。

テレビ番組などでも、「お客様に喜んでもらえるなら」という理由で、「赤字覚悟」とか「採算度外視」といった言葉を聞きますが、僕はあまり好きではありません。勿論、価格は品質の1つですし、消費者から見れば安いにこしたことはありません。
しかしキャッチコピーとしての謳い文句ならともかく、闇雲に安いというのは、やはり問題があります。

先にも述べた通り、消費者にとって有益で不可欠な事業であれば、継続する必要があります。

・適切な価格
加えてもう1点、問題があるように思います。
それは以前も記した「適正価格」です。

ダイエーに代表される価格破壊は、メーカーがチャネルリーダーとして協力な支配力を発揮する仕組みに対して、流通コストを抑えることで、消費者に安く製品を提供しようとする試みでした。
しかしバブル経済崩壊以降の自由化や海外との競争などにより、消費者は更に安い製品を求めるようになります。
この破壊的な競争の中、例えば昨年末話題になったコンビニエンスストアのような、小売業が経営を維持できない競争を強いられるようになりました。
新型コロナウィルスの影響から、食品スーパーなどは、極端な安売りを避けるようになりましたが、一方でコンビニエンスストアは、ミニスーパー化のような形で新たな競争にのりだし、経営者や従業員を圧迫する要因は強まっています。

そのような中で、消費者に製品を通じて、「適正価格」を納得させる取り組みが不可欠だと考えます。

このとき、単に「安い」「高い」といった基準だけで判断していれば、いずれ近いうちに、多くの産業が破綻し、私たちの生活を圧迫するでしょう。

‘サステナブル’というと、なぜかやはり自然環境に目が向いてしまいますが、そのためには、持続可能な社会制度が必要となります。
そのような問題意識からも、事業を通じて適正価格を示し、価値提案を行うことは、今後の企業経営に不可欠です。

生活環境や企業環境が急変しつつある今こそ、適正な価格を、顧客かから「安い」と言ってもらえる事業や品質の在り方がとわれるのではないでしょうか。

最近特にそう感じています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?