なぜビジネスに抽象的思考が必要なのか.1

今月は、集中講座として情報整理ワークショップを、ていれいの有志勉強会では、昨今の企業環境の変化について、講座を開催しました。

情報整理ワークショップでは、前半に情報の考え方や抽象的思考について説明し、熱心な質問を頂きました。また、勉強会では、日本が円高に変わった以降、約30年ほどの変化から、これからの企業がどのように考えたらよいかについてお話しました。

ところで、僕は「コロナ禍」や「コロナ後」という表現を使いません。勿論、新型コロナウイルスの影響による変化は大きいですが、単にコロナ以前、コロナ禍、コロナ後といった時間の区切り方はするべきではなく、もっと長期的な視点で考える必要があるのではないでしょうか。

このために必要な考え方が抽象的思考です。

・抽象的思考のおさらい
以前の記事「抽象的思考のススメ 考え方と注意点 1、2」で抽象的思考について記しましたが、ここで少しおさらいしておきたいと思います。
「抽象的」を辞書(大辞泉)で調べると、「いくつかの事物に共通なものを抜き出して、それを一般化して考えるさま。」とあります。一方、反意語となる「具体的」を調べると「はっきりとした実体を備えているさま。個々の事物に即しているさま。」とあります。
つまり抽象的とは、物事の根本や一般化されたものを指します。

具体と抽象で比較した場合以下のような対比になります。

個別的(具体)  ⇔  全体的(抽象)
短期的(具体)  ⇔  長期的(抽象)
実用的(具体)  ⇔  本質的(抽象)
五感的(具体)  ⇔  概念的(抽象)
現実的(具体)  ⇔  精神的(抽象)
一面的(具体)  ⇔  多面的(抽象)
手段(具体    ⇔  目的(抽象)
問題解決力(具体)⇔  問題設定力(抽象)

私達は、日々個別の様々な事柄に対応します。しかさビジネスを考えるとき、目の前のことだけを見ていては、今盆的な解決や目的の実現には届きません。また、目の前で起きていることが、実は大きな視点で見たとき、全く異なるところに原因があることもあります。

そのため、あらゆる立場の人、特にリーダーシップを執る人には、抽象的な考え方が必要になります。

・「円安」をどう捉えるか
新型コロナウイルスの影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻の影響から、日本では急速に円安が進み、大きな問題となっています。
確かに昨今の円安と、輸入価格の急騰は大きな影響を与えています。しかし現在の円安は、これまでのような議論では説明できません。日本が急激に円高に進んだ頃、1990年代とは、世界の産業構造が大きく変化しています。また当時のような「豊かさ」が優先された頃とは社会的な背景も異なります。
単に「円安」と言うのであれば、1990年代後半から、2000年代の方が、大きく変化しています。
こうした状況から、現在の状況を適切に理解するためには、社会全体の変化や長期的な視点が必要になります、

・「新型コロナウイルス」という現象
上述のように、僕はコロナ禍という言葉を、あえて避けています。そのためコロナ後という言葉もあまり使いません。
新型コロナウイルスの影響は大きいですが、単に一時の状況として、切り離されたものではないと考えているからです。

この2年ほどで、社会は大きく変化しています。例えば流通においては、10年分の変化を遂げたと言われます。しかしこれは、この間だけの変化ではありません。

新型コロナウイルスによって、社会の様々な問題が顕在化しました。しかしこれは、新型コロナウイルスによって引き起こされたものではなく、それ以前からの、言わば「見ないふりをしてきた」問題が、あきらかになったたけです。
またこの間の問題は、パンデミックの終息によっておさまるというものではありません。むしろ、正常な生活を取り戻した後は、優先課題として重視されます。

僕はよく、「パラダイムシフトには25年かかる」という話をします。
例えば、今小学校では、自転車の乗り方を教えています。この教育を受けた子供達は、ヘルメットがないと自転車に乗れないという認識ができています。
この教育を受けた子どもたちが親になり、子供に教え、「自転車=ヘルメット」という常識になる。これがパラダイムシフトです。

そうした意味において、この約2年は、社会の25年を凝縮するものだと考えています。
つまり、連続する時間の凝縮です。

だからこそ、この2年の変化を理解するためには、長期的な視点が必要なのです。

・在るべき社会のために
現代の社会は、個々の人々が求める社会を作る時代ではなくなりました。だからこそ、ビジネスを考えるためには、これからの社会の「在るべき姿」を、適切に推察する能力が求められます。こうした力がなければ、例えば経営者という人たちは、淘汰されてもしかたがないでしょう。

抽象的思考は、全ての人が、在るべき姿を考え、自己実現に不可欠な力です。

このような社会に突入しようとする中で、ビジネスに何が必要か、考え直すよい機会かと思います。

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