見出し画像

【英語】arm's length / arm's length price ("ALP")

今日ご紹介する英語フレーズは、"arm's length"(読みは「アームズ・レングス」)。

このフレーズのうち、"arm" は、「腕」という意味の名詞。そして、"length" は、「長さ」という意味の名詞。つまりこの "arm's length" を直訳すると、「腕一本の長さ」という意味になる。

ビジネス英語としてのこのフレーズは、「独立した当事者の立場」という意味を持つ。

これは、"arm's length" =「腕一本の長さ」というフレーズが、腕一本分ほどの間隔を常に保っている関係性をイメージさせるからだろうと思われる。

この表現が用いられるのは、主に、税務業務や、契約業務などにおいてだ。

特に典型的なのは、いわゆる「移転価格税制」の文脈だ。簡単に説明すると、多国籍企業が、グループ内での国境を越えた取引価格を恣意的に操作して所得を国外に移転させることを防止する仕組みのことだ。

多くの国や地域では、企業グループ間での取引価格は、資本関係がない第三者間の取引価格と同等になるべきだという考え方を採用している。この考え方を「独立企業原則」といい、この価格を「独立企業間価格(ALP=arm’s length price)」と呼ぶのだ。

このように言うと、この "arm's length" という用語を使うのは、税務担当者や、英文契約担当者に限られるだろうから、自分には関係ない、と思われる方も多いかもしれない。

しかし、外資系企業に勤めていると、海外の親会社や子会社、姉妹会社と取引を行うことは無数にある。

たとえば、業務に必要な情報や財産の一部を関連会社に使わせる場合に、どれほどのライセンス料を受け取ればよいのか、といった場合である。そういう場面では、関連会社から受け取るべき「"arm's length" の取引価格はいくらなのか?」というディスカッションが行われる。

だから、税務担当者や英文契約担当者のみならず、グループ内企業とのやり取りを処理する可能性のある外資系社員であれば、覚えておくべき重要な概念なのだ。

例文を見てみよう。

"I've received an instruction from our parent company that we should pay XX million yen for the licensed know-how.  Can we do that?"
"No, I don't think so.  The price is too high.  We should set up an arm's length price.  If this is not considered as ALP, tax authority may challenge us."

「親会社からノウハウライセンス料としてXX百万円を支払うよう指示を受けたんだけど、できる?」
「いや、できないと思う。価格が高すぎる。独立当事者間価格を設定しなければいけない。もし独立当事者間価格だと認められなければ、税務当局から否認されるかもしれないよ。」

多国籍企業においては、節税の観点から、税率の低い国にある子会社に多くの利益を集め、税率の高い国にある子会社には利益をできるだけ残さないようにしたいというインセンティブが働きがちだ。あるいは、本社により多くの利益をもたらすため、子会社に対して通常よりも多額の費用を請求したいという場面もあるかもしれない。

しかし、企業グループ間の恣意的な操作は、各国の税務当局から厳しくモニタリングされている。

外資系企業においては、たくさんの税務のプロが雇われていて、正しく節税するための戦略が練られている。しかし、税務担当者でなかったとしても、そういったことを理解していないと、知らず知らずのうちに、うかつに "arm's length" ではない価格を設定してしまい、後に税務当局との紛争の元になるかもしれない。

グループ企業間での取引や、財産の移転についての業務に関わることになった場合には、関係会社間であっても、腕一本の距離を保つべきなのだと覚えておき、必ず税務担当者に相談しよう。

ご参考になれば幸いです!

私の英語系の記事へは、以下のリンク集からどうぞ。

Kindleで出版中の私の電子書籍2冊(国際会議の英語と採用面接の英語についてのノウハウ本)も、よろしければ是非ご覧になってください。Kindle Unlimited対象です。

この記事が参加している募集

英語がすき

サポートをいただきましたら、他のnoterさんへのサポートの原資にしたいと思います。